中国経済は持続的な低迷が続いており、中国政府が打ち出した、多くの刺激政策も効果を上げられず、多くの国民が将来への信頼を失いつつあります。中国の旧正月が近づく中、多くのネットユーザーが市場の低迷や、商売の厳しさを記録した動画を共有し、「今年はこれまでで、最も静かな旧正月になるのではないか」と嘆いています。

 上海在住の呉さんは取材に対し、経済の悪化が日常生活に直接的な影響を与え、「年末年始らしさ」を感じられなくなったと述べました。数日前に買い物に行った際、多くのスーパーが閉店していたことに気づいたと言います。営業を続けているスーパーも客足が少なく、以前と比べて活気がなくなっていました。呉さんは「以前、この時期にスーパーで買い物をすると、レジに30分以上並ぶことが当たり前でした。しかし、今は商品を手に取って、そのままレジに行けるほど空いています。これだけ景気が悪化しているのです」と語りました。

 都市部だけでなく、農村部でも同様に冷え込んだ状況が広がっています。あるネットユーザーは、「以前、広東省の農村では、旧暦12月になると、爆竹の音があちこちで聞こえ、それが旧正月が近いことを感じさせてくれました。しかし、今では街中に人影はほとんどなく、かつての旧正月の雰囲気は、消え失せてしまいました」と述べました。

 ネット上に投稿された多くの動画では、旧正月が迫る中でも、市場が冷え込んでいる様子が記録されています。例えば、広州の万達商業圏では、多くの店舗が「テナント募集」や、「賃貸物件」の貼り紙を出しており、かつて人々で賑わっていたエリアが閑散としています。一部の店舗オーナーによると、以前は月額13,000〜14,000元の賃料で、貸し出されていた店舗が、現在では4,000元にまで下げても、借り手が見つからないそうです。瀋陽の五愛小商品城の2階もほぼ無人で、散歩できる程度だと言います。また、広東省恵州の東錦市場では、ほとんどの店舗が閉店しており、活気に満ちていた市場は、今やまるで廃墟のようになっています。吉林市では、かつて誇っていた商業施設の3階以上が完全に閉鎖され、残されたテナントもごくわずかで、国際的なブランドもほとんど撤退してしまいました。

 あるネットユーザーは「あと十数日で旧正月ですが、市場はどこもかつてないほど、静まり返っています。売上は数十元しかなく、店舗の基本的な運営費さえ賄えません。これは単なる消費の縮小ではなく、完全に消費がない状態です」と述べました。また、別のオーナーは「今年の商売はまるで全国的に、統一されたかのように冷え込んでいます。街にはほとんど人がいないどころか、店主の数が客よりも多い状況です。まるで街中で針が落ちる音さえ聞こえそうです」と語り、深刻な状況を訴えました。このような低迷は小売業だけでなく、飲食業やアパレル業界など広範な分野に波及し、経済の停滞を反映しています。

 高額商品が売れない状況も顕著で、果物や高級酒などの商品の価格は、大幅に下落しています。例えば、さくらんぼの価格は、5kgあたり1,200〜1,500元から、220〜230元まで下がり、80%以上の値下げが行われています。武漢の年末セール会場では、多くの商人が2日間の営業後に、出展を取りやめる事態も発生しました。原因は販売不振です。江蘇省のあるネット販売業者は、今年の白酒の売上が、昨年比で50%以上減少したと述べています。「白酒は本来、年末年始に欠かせない商品ですが、それさえも売れなくなったということは、実体経済がすでに崩壊している証拠です」と語りました。さらに、貴州茅台が発売した「蛇茅」と呼ばれる新製品も、発売当初4,000元で、取引されていたものが、2,700元にまで下落しています。専門家によると、かつて高級酒宴で中心的な役割を果たしていた、茅台酒の需要が減少し、代わりにコストパフォーマンスの良い製品への需要が、増えているとのことです。

 旧正月は本来、家族が集まり感謝を分かち合う特別な時間ですが、経済の低迷や社会的なプレッシャーにより、その喜びが薄れてしまいました。2025年の中国は、経済的な課題に加え、3年間のパンデミックがもたらした影響、内需の停滞、不動産市場の危機、そして国際貿易摩擦のリスクといった、複数の問題に直面しています。ある若者は「旧正月が経済の回復につながるきっかけになればいいのですが、現実的には大きな期待はしていません」と語りました。

 一方、交通費の高さも多くの人が、帰省を断念する要因になっています。山東省滕州市の住民である郭さんは、「普通列車の便数が、大幅に削減され、代わりに高鉄の列車が増えましたが、高鉄のチケットは、普通列車の3倍以上の価格です」と述べました。例えば、北京から滕州までの高鉄の切符は905元、一方、普通列車の普通席は86元です。このように、高鉄は便利な交通手段であるものの、高額な料金が多くの低所得層の利用を妨げています。結果的に、高鉄の座席は空席が多い一方、普通列車のチケットは「入手困難」な状況が続いています。

 中国政府の公式予測によると、2025年の春運(旧正月連休の前後に生じる大規模な帰省ラッシュ)期間中の出行回数は90億回に達し、過去最高を更新するとされています。しかし、この数値の急増は主に統計方式の変更によるもので、経済の実際の回復を反映しているわけではありません。2023年以降、中国の交通運輸部は、高速道路での自家用車による移動を統計に含め始め、さらに2024年には集計範囲を拡大しました。これにより、データ上では増加しているように見えるものの、実際の経済状況は依然として厳しいままです。

 2025年の旧正月は、これまでのどの年とも異なるものになるでしょう。市場の低迷、商品の売れ残り、高騰する交通費、失業率の高さ――これらの問題が中国社会の厳しい現実を浮き彫りにしています。それでも、旧正月は人々が困難の中で、希望を見出す大切な時期です。しかし、経済的な困難の中で、再び希望を取り戻す方法は、未解決のままです。

(翻訳・吉原木子)