アメリカ次期大統領であるドナルド・トランプ氏は、14日に自身のSNSプラットフォーム「Truth Social」で、任期開始時における重要な政策方針の一環として、「対外税務局(External Revenue Service)」の設立計画を発表しました。この新しい機関は、関税や税金、外国からの収益の徴収を専門とする組織として機能する予定です。トランプ氏がこのような発表を行った背景には、選挙期間中に掲げた関税政策を実行する意向があり、これが新たな米中貿易戦争を引き起こす可能性が高いと見られています。この政策が実施されれば、世界の貿易秩序、とりわけ中国経済に深刻な影響を与えることが予想されます。
トランプ氏は声明の中で、アメリカは過去数十年にわたり、弱腰な貿易政策のために、他国の経済成長に貢献してきた一方で、自国は貿易赤字や経済構造上の問題に苦しんできたと指摘しました。彼は、「アメリカ経済が他国の繁栄の基盤として利用されている状況はもう終わりにしなければならない」と強調し、対外税務局の設立を通じて、海外からの収益をより多く確保し、公平な貿易を実現する計画を示しました。具体的には、トランプ氏は次のように述べています。「我々は対外税務局を設立し、アメリカから利益を得ている国々に対して正当な負担を求める。これにより、貿易で利益を享受する者たちは相応の代価を支払う義務を負うことになるだろう。」
しかし、この提案にはいまだに多くの不明点が残されています。トランプ氏は対外税務局の組織構造や具体的な運営方法については明らかにせず、単にアメリカの既存の国税庁(Internal Revenue Service)との比較に言及するにとどまりました。国税庁は、主に国内の収益に対する課税を担当しており、現在、関税の徴収業務は税関・国境警備局(Customs and Border Protection)が担っています。アメリカの財務データによると、関税収入は連邦政府全体の歳入のわずか2%未満を占めています。このため、トランプ氏が掲げるような関税による収益の大幅な増加を達成するためには、現在の貿易システムに大規模な改革を加える必要があると考えられます。
専門家の分析によれば、対外税務局を設立するには議会の承認が不可欠であるほか、現行の関税徴収システムを全面的に見直し、再設計する必要があります。現時点では、関税収入は税関・国境警備局によって審査・徴収され、最終的に財務省の一般基金に収められています。このプロセスを新しい機関に移行することは、既存の運営モデルに大きな変更をもたらす可能性があります。しかし、共和党が現在、議会の上下両院で多数派を占めていることを考慮すると、トランプ氏の提案が議会を通過する可能性は十分にあると見られています。
この新政策は国内外でさまざまな反響を呼んでいます。ブルームバーグは、トランプ氏が大統領に復帰した後、選挙中に約束した関税政策を迅速に実行する姿勢を示していると報じています。トランプ氏は過去にもすべての輸入品に対して関税を課すことが経済政策の中核であると繰り返し主張してきました。中国製品に対して最大60%の関税を課す計画を掲げたほか、カナダやメキシコからの輸入品にも高率の関税を課すと警告しています。このような広範な関税政策は、アメリカの貿易赤字を削減し、製造業の国内回帰を促進し、さらには政府の財政基盤を強化するための重要な手段とされています。
一方で、この政策の実施が中国経済に与える潜在的な影響は非常に大きいとされています。中国の輸出産業は現在、経済成長を支える唯一の柱とされています。中国税関が公表した2024年のデータによると、輸出総額は前年比5.9%増の3.6兆ドルに達し、過去最高を記録しました。しかし、専門家は、この成長が中国経済の輸出依存度の高さを反映していると指摘しています。もし米中貿易戦争が再燃すれば、中国の輸出産業が最初に被害を受ける可能性が高いとされています。
ロイターの調査によると、アメリカが中国製品に追加関税を課した場合、中国の経済成長率は2025年に4.5%まで低下し、2026年にはさらに4.2%に落ち込む可能性があります。また、関税政策が1年間続けば、中国の国内総生産(GDP)は0.5%から2.5%減少する可能性があると分析されています。この影響は、中国政府の対応次第で大きく変わるとされていますが、選択肢は限られています。
過去の事例と比較しても、今回のトランプ氏の政策に対する中国政府の対応策は制約を受ける可能性があります。2018年から始まった最初の米中貿易戦争では、中国政府は人民元の為替レートを大幅に引き下げることで、関税の影響を部分的に相殺しました。しかし現在、人民元の為替レートはすでに過去最低水準に近く、さらなる切り下げの余地は非常に限られています。また、中国製品を第三国経由でアメリカに輸出する戦略も、トランプ氏がその第三国製品にも関税を課す方針を示しているため、効果が限定的になると見られています。
こうした背景を受け、中国政府はアメリカの主要同盟国を取り込むことで、トランプ氏の政策に対抗しようとしています。中国公式メディアによると、習近平国家主席は最近、欧州理事会議長と電話会談を行い、中欧関係の強化を呼び掛けました。また、中国外相の王毅氏も日本の政界関係者と会談し、隣国との外交関係を強化する動きを見せています。しかし、専門家は中国が経済や外交面では一定の成果を上げられる可能性がある一方で、安全保障や戦略面ではアメリカの同盟国を完全に取り込むことは難しいと分析しています。
トランプ氏の「対外税務局」構想は、単なる国内政策の枠を超え、グローバルな貿易構造を再編する可能性を秘めています。この計画が実現すれば、米中間の貿易摩擦が激化するだけでなく、世界経済全体にも波及する影響が避けられないでしょう。一方、中国がこの新たな挑戦にどう対応するか、そしてアメリカと中国の対立がどのような形で展開していくのかは、今後数年の国際情勢に大きな影響を与えることになるでしょう。
(翻訳・吉原木子)