中国政府の公式データによると、昨年、中国の貿易黒字は7,000億ドル近くに達し、中国経済における唯一最後の「明るい点」となりました。しかし、この成果は輸出への依存度がますます高まっていることを示しており、国際的な経済環境が複雑化する中で、この構造的な問題が中国経済の課題として浮き彫りになっています。
中国税関が1月13日に発表したデータによると、2024年の中国の輸出は前年比5.9%増加し、総額は3.6兆ドルに達しました。特に2024年12月には輸出が10.7%増加し、貿易黒字は3,360億ドルの史上最高額を記録しました。ウォール・ストリート・ジャーナルの分析によれば、これらの成果は、中国経済がこれまで以上に輸出に依存していることを示しています。輸出は今年の経済成長目標に占める割合が約5分の1に達すると予測されており、海外需要が中国経済の重要な支えとなっていることが分かります。しかし、この成果の裏側には、国内経済の停滞や不均衡が隠れています。不動産危機の長期化や消費市場の低迷が続く中、中国の海外からの商品やサービスに対する需要が大幅に減少しているのです。このような不均衡は、中国経済が依然として外部市場への依存から脱却できていないことを示しています。
国内経済の圧力を緩和し、中国をテクノロジー大国へと転換する長期目標を達成するため、中国政府は製造業への大規模な資金投入を進めています。この政策の直接的な結果として、産業能力の過剰拡張が発生しています。鉄鋼や化学製品、自動車、機械など、さまざまな分野で価格が下落し、製品輸出が急増しました。しかし、このような産業能力に依存した輸出成長モデルは持続可能性に欠けています。特に国際的な経済保護主義が台頭する中で、中国の輸出は新たな課題に直面しています。
同時に、輸出の増加は米中貿易摩擦の影響を受けています。トランプ次期米大統領は、中国製品に対してより高い関税を課すと公約しており、中国企業にとってさらなる圧力となっています。5年前に米中貿易戦争が始まったときから、中国企業は国内市場の低迷により利益率が圧迫され、多くの企業が赤字に陥っています。経済学者たちは、アメリカが中国製品に全面的な関税を課す場合、中国の国内総生産(GDP)が0.5%から2.5%減少すると予測しています。この影響の程度は、中国政府の具体的な対策に依存します。中国政府は人民元の切り下げや第三国を経由した貿易を通じて関税の影響を緩和しようとしていますが、米中貿易摩擦の激化は中国と他国との貿易関係にも影響を及ぼす可能性があります。製造業の能力拡大に伴い、欧州連合(EU)、ブラジル、インドなどの国々は中国の輸出攻勢に対する不満を募らせています。もし中国が対米輸出を他国に転換すれば、これらの国々はより強硬な反発措置を取る可能性があります。
ムーディーズ・アナリティクスの上級エコノミストであるステファン・アングリック氏は、世界の他国は中国の過剰な生産能力を完全に吸収することはできないと警告しています。この現状は、中国の輸出依存型経済成長モデルが直面する課題の深刻さを浮き彫りにしています。
輸出依存の問題だけでなく、高齢化も中国経済の長期的な課題となっています。『ニューズウィーク』によれば、中国では65歳以上の人口が総人口の14%を占めており、今後数年で日本や韓国と同様に「超高齢化社会」へと突入すると予測されています。一人っ子政策の遺産がこの問題を一層深刻化させています。2016年以降、政府は二人目、三人目の出産を許可しましたが、この政策転換にもかかわらず、出生率の低下は止まりませんでした。2023年には中国の出生率が女性1人当たり1.0人にまで落ち込み、人口を維持するために必要な2.1人を大きく下回っています。この数字は、中国の若年労働力が年々減少し、高齢者の扶養負担が増大することを意味します。
人口高齢化の影響を軽減するため、中国政府は定年延長政策を推進しています。これは1950年代に法定退職年齢が設定されて以来、初の大規模な改革です。しかし、この政策の実施には多くの国民からの反発もあり、その効果はまだ不透明です。また、高齢化がもたらす直接的な影響として、イノベーション推進力の低下や生産性向上速度の鈍化が挙げられます。オーストラリアのメルボルン大学政策研究センターの研究員であるポン・シウジェン氏は、若年人口の急激な減少が国内市場を縮小させ、中国の経済成長の内生的な原動力を低下させていると指摘しています。
さらに、不動産市場の危機が中国経済に深刻な影響を与えています。不動産バブルの崩壊により、多くのデベロッパーが資金不足に陥り、未完成の住宅を負債の返済手段として提供する事例が増えています。新疆東方環宇燃気股份有限公司は、昌吉市政府から未完成の住宅を受け取り、未払いのガス料金を回収する方法を取っています。これらの事例は地方政府の財政圧力の深刻さを物語っています。
また、不動産市場の停滞は空き家の大量発生を引き起こしています。『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、中国には現在9,000万戸もの空き家があり、これはブラジルの全人口を収容できる規模です。主要都市の住宅価格が17カ月連続で下落していることから、これらの空き家の価値も下落し続け、不動産危機がさらに深刻化しています。
このように、中国経済は貿易黒字や輸出成長という表面的な明るい部分の裏で、深刻な構造的問題に直面しています。輸出依存、高齢化、不動産市場の低迷が絡み合い、中国経済の持続可能性に影を落としています。短期的には貿易黒字が経済を支えていますが、長期的には構造改革と内需拡大を通じた経済モデルの転換が求められています。
(翻訳・吉原木子)