近年、中国の不動産市場では大幅な調整が見られ、「土地返還現象」とも呼ばれる状況が全国各地で広がっています。多くの不動産企業が、過去に高値で取得したものの未開発の土地を地方政府に返還する選択をしています。この現象は、地方政府の財政収入に新たな圧力をもたらすだけでなく、不動産業界の発展が大きく変化していることを浮き彫りにしています。

 中国不動産報が1月8日に報じたところによると、この土地返還現象は広州、北京、深セン、成都、寧波(ねいは)などの主要都市を含む複数の一線、二線、三線都市に及んでいます。この波の中で、万科(ワンコー)、越秀(ユエシュウ)、華潤(ファルン)などの大手不動産企業が、過去に取得した未開発の土地の一部を返還しています。この状況に対処するため、各地方政府はさまざまな対策を講じています。一つは、土地用途を変更したり、開発要件を緩和したりすることで不動産企業の負担を軽減することです。もう一つは、土地を再度市場に出すことで、新たな開発者を引き込むことです。さらに、一部の地方政府は、「地券補償政策」と呼ばれる試験的な取り組みを開始し、土地返還による財政損失を補うことを目指しています。

 例えば、2024年8月末、越秀地産(ユエシュウチサン)はわずか4日間で4区画の土地を返還しました。その総額は120億元を超えます。これらの土地は3年前に取得されたもので、開発が進んでいませんでした。これに対し、広州市政府は等価の地券で補償し、越秀地産がこれらの地券を使って広州内の土地を再購入できるようにしました。同じ年の12月、万科は28.8億元の底値で広州番禺南駅(こうしゅうばんぐうなんえき)ビジネス地区の3区画の住宅用地を取得しました。これらの土地は以前から万科が保有していましたが、軌道交通建設の影響で開発が進まない状況にありました。政府がこれを収用し、再度計画を見直した後、市場に再投入され、最終的に万科が再取得する形となりました。同様に、保利発展(ほりはってん)は2024年の大晦日に70.22億元の底値で広州天河区(こうしゅうてんがく)2区画を取得しました。その床面積単価は1平方メートルあたり5.1万元に相当します。

 この現象について、業界関係者は市場環境や政策の変化が主な要因だと考えています。中国国家発展改革委員会の国土開発・地域経済研究所の主任である黄征学(こう・せいがく)氏は、土地返還は土地開発の性質が市場の需要に合わなくなったことを反映していると指摘しています。一方で地方政府は遊休土地の活用を目指し、政策を調整していますが、他方では企業が市場環境の変化に直面し、大きな資金プレッシャーを抱えています。

 土地返還は一部の債務不履行に陥った不動産企業だけでなく、中央企業や国有企業、地方国有資本にも広がっています。北京では、万科が8年前に取得した区画を返還し、政府が土地売却条件を変更しました。例えば、企業が一定部分の土地を保有する必要がなくなり、売却価格も引き上げられました。この土地は再び市場に出され、保利建工(ほりけんこう)が89億元で落札しました。武漢では、華僑城(かきょうじょう)が楊春湖高鉄ビジネス地区(ようしゅんこ・こうてつビジネスちく)に位置する105ムー(約7ヘクタール)の土地を返還しました。南京では、返還された区画が数か月後に容積率や建物高さの調整を経て低密度住宅地に変わり、新たな開発者を引き寄せました。西安(せいあん)や長沙(ちょうさ)などでも同様の現象が見られ、土地返還が全国的な傾向であることが浮き彫りになっています。

 この土地返還現象を引き起こした要因としては、大きく3つが挙げられます。第一に、高値で取得した土地が市場の変化によって開発リスクが高まった点です。第二に、厳しい開発要件が付帯している土地があり、市場環境の変化で当初の計画が実現困難になったことです。第三に、不動産企業の資金プレッシャーが挙げられます。キャッシュフローの逼迫や資金調達の制約が、開発計画の進行を妨げています。

 不動産企業にとって、土地返還は損失を抑えるための戦略です。一方で、地方政府にとっては土地財政収入への大きな圧力となっています。中国国家統計局によれば、2024年1月から11月の全国不動産開発投資額は前年同期比で10.4%減少し、減少幅は10月までの水準からさらに0.1ポイント拡大しました。この指標は7か月連続で二桁減少の水準を維持しており、今後も縮小傾向が続くとみられています。他の重要指標も市場の低迷を裏付けています。例えば、同期間の全国新規着工面積は前年同期比で23%減少し、減少幅は前月より0.4ポイント拡大しました。施工面積も12.7%減少し、同様に縮小幅が拡大しています。

 克而瑞(かくじんずい)による調査では、2023年から2024年上半期にかけて、23の主要都市における住宅用地の全体着工率は46%にとどまりました。一線都市の着工率が84.6%に達する一方で、二線都市では36.9%に大きく下落しています。特に、非市場化された土地が多い二線都市では、土地が長期間着工されないことが常態化しており、供給が「無効化」する現象が顕著です。

 土地返還の現象は、不動産市場の調整による結果であると同時に、地方政府に土地政策の見直しを迫るものでもあります。市場環境が変化し続ける中、土地財政と市場需要のバランスをどのように保つかが地方政府にとって大きな課題となっています。

(翻訳・吉原木子)