2025年に入り、中国経済が直面する4つの主要なリスクは、依然として深刻であり、さらに悪化する可能性があります。2024年、中国の経済成長に関する主要な指標は、ほとんど期待値に達せず、国民の将来への信頼感は、引き続き低下しています。これは経済的な停滞が顕在化し、一般市民の生活に、直接的な影響を及ぼしていることを意味しています。
最近、「マーケットウォッチ」は、中国の労働者、学生、退職者を含む、十数名を対象にインタビューを行いました。これらの一般市民は、2024年を振り返りながら、無力感と困惑を口にしています。パンデミック後の経済的苦境が、いまだに解消されておらず、賃金の停滞、高い失業率、住宅価格の下落、そして必需品以外の消費の縮小が、日常生活の一部となっています。とりわけ、非必需品の消費が減少したことは、中国国内市場の低迷を示しており、消費者心理の冷え込みが深刻であることを物語っています。2024年が過ぎ去ったにもかかわらず、多くの人々は2025年に対しても、依然として不安を抱いています。それは、経済の改善に対する希望が見えないからです。
政府が発表した失業率は、5%未満には達していませんが、特に注目すべきは、16歳から24歳の若者の約5人に1人が、依然として仕事を見つけられないという現状です。このデータは、社会全体で雇用圧力が増大していることを明確に示しています。四川省成都出身の42歳の許雷雨(音訳、シュウ・レイユー)さんは、2か月前に携帯電話ショップの仕事を失いました。彼女は「マーケットウォッチ」のインタビューで、「政府は困難な状況にある私たちを助けると言ってきました。この約束は1年以上続いていますが、実際の支援は何も見られません」と語っています。このような市民の声は、政府の支援政策が多くの場合で、実質的な成果を上げていないことを反映しています。
一方、中国の指導者である習近平氏は近年、党のイデオロギーが、経済的実用主義よりも優先されるべきだと強調してきました。しかし、経済状況の悪化を前にして、習近平氏自身も、中国経済の不調を認めざるを得なくなっています。これにより、党の経済政策に対する国民の不信感が、さらに高まる可能性があります。
また、トランプ次期米大統領は、5,000億ドルを超える中国製品に対して、新たな高関税を課す計画を発表しました。この政策が中国経済に与える影響は、関税の実施時期と範囲に、大きく左右されると考えられます。日本経済研究センターの予測によれば、米国が中国製品に60%の追加関税を課し、中国が報復措置を取らなかった場合、2025年の中国のGDP成長率は、2024年の4.7%から3.4%に、さらに2035年には1.8%まで低下する可能性があります。このような成長率の低下は、製造業や輸出産業に、直接的な打撃を与えることが予想されます。
関税率が60%に達した場合、中国の輸出は約14%減少する可能性があります。特に衣類、靴、玩具など、米国の輸入において、割合の高い商品が大きな打撃を受けると予想されています。
一方で、生産能力の過剰問題が、2024年には効果的に抑制されることはなく、この問題は2025年にさらに深刻化する可能性があります。その一因として、中国政府が不動産投資の不足を補うために、工業投資を増加させようとしたことが挙げられます。2024年9月時点で、銀行から工業部門への貸付は、前年比86%増加し、24兆人民元に達しました。一方、不動産業界の未償還貸付残高は、53兆人民元で、3年前と比較して、わずか3%の増加にとどまっています。このような不均衡な投資モデルは、生産能力の過剰を引き起こし、製造業者の利益を圧迫するとともに、さらなる失業を招く可能性があります。
データによると、いわゆる「ゾンビ企業」の割合は、2023年の8%から、2024年上半期には14%に増加しました。「ゾンビ企業」とは、2年以上にわたり収益で、利息を支払うことができない企業を指します。このような企業の増加は、金融機関のリスクを高めるだけでなく、資源の効率的な配分を妨げる要因ともなっています。
中国のGDPデフレーター指数は、6四半期連続でマイナスを記録しており、これは1990年代後半以来最も長い期間となっています。デフレーション現象が経済に与える影響は、次第に顕在化してきています。例えば、2024年12月には、中国の10年物国債の利回りが2%を下回り、20年以上ぶりの低水準となりました。この指標は、市場の経済に対する信頼感の低下を示すだけでなく、中国が長期的な経済停滞に陥る可能性への懸念を一層深める結果となりました。
家庭の資産価値の減少は、中国経済におけるもう一つの大きな懸念となっています。コンサルティング会社「Gavekal Dragonomics」のデータによると、2018年から2021年にかけて、中国の家庭資産総額は、年間平均で約10%増加していましたが、2022年および2023年には、その増加率が年間1%にまで鈍化しました。特に、不動産市場の継続的な低迷が家庭の資産に与える影響は甚大であり、多くの家庭が財産の大幅な減少に直面しています。一部の分析家は、不動産価格が2025年末までに、さらに20%から25%下落する可能性があると予測しています。
中国の若者たちは将来に希望を見出せず、努力することを拒む傾向が広がりつつあります。一方で、資産を持つ人々は海外への移住や資産移転を加速させています。2025年、中国経済はさらなる挑戦を迎える可能性があります。
(翻訳・吉原木子)