中国チベット自治区シガツェ市定日県(ていにちけん)で1月7日午前9時5分、マグニチュード6.8の地震が発生しました。この突然の災害により、少なくとも126人が死亡し、188人が負傷したと報告されています。震央は定日県内で、ネパール国境に近い場所に位置し、震源の深さはわずか10キロメートルでした。地震発生時、この地域はまだ夜明けを迎えておらず、多くの人々が眠りの中で強い揺れに襲われ、シガツェ市全域が瞬時に恐怖に包まれました。

 アメリカ地質調査所(USGS)のデータによれば、今回の地震は近年この地域で発生した地震の中でも最も深刻なものでした。震央周辺5キロメートル圏内の平均標高は4259メートルで、震央は定日県中心部から36キロメートル、シガツェ市区から164キロメートル、ラサ市から379キロメートル離れています。定日県の人口は約6万人で、人口密度が低い一方、建物は2~3階建ての低層住宅が多く、耐震性能が十分ではありませんでした。震災後、数千戸の住宅が被害を受け、一部は完全に倒壊しました。ネット上に出回った映像では、多くの村が瓦礫の山と化している様子が確認されています。地震後も余震が頻発しており、当日正午までに49回の余震が記録され、そのうち16回はマグニチュード3.0以上で、最大余震はマグニチュード4.4でした。

 震央付近にあるヒマラヤ地震帯は地震活動が非常に活発で、この地域では過去100年間にマグニチュード6以上の地震が10回発生しています。2015年のネパール大地震(マグニチュード7.8)もこの地帯で発生し、約9,000人の命が奪われ、シガツェ市管轄の複数の県が被害を受けました。当時と同様に、今回の地震でも建物の耐震性の問題が改めて浮き彫りになっています。

 地震を体験した住民たちは、その恐怖の瞬間を語っています。巴松村(ばしょうそん)の「珠峰牛頭賓館」(じゅほうぎゅうとうひんかん)のオーナーである次仁格旦(じにん・かくたん)さんは、地震発生時の状況を振り返り、「宿全体が激しく揺れ、飲み物の棚が倒れてしまいました。村民たちとともに急いで屋外へ避難しましたが、直後に停電が発生し、午前9時50分まで電気が復旧しませんでした」と語りました。また、「2015年のネパール地震以来、最も強い揺れでした」と述べています。

 定日県の中心部にある商店のいくつかも大きな被害を受けました。ある商店主は、「地震が起きた瞬間、みんな通りに逃げました。壁に亀裂が入り、タイルが剥がれ落ち、棚の中のものもすべて床に散らばりました」と話しました。住民たちは余震を恐れ、家に戻ることができず、寒さに耐えながら屋外で避難生活を余儀なくされています。

 震央に近いエリアには、世界一の高峰であるエベレスト(ちょもらんま)のベースキャンプがあります。地震発生当時、キャンプには数人の観光客が滞在していました。観光客とキャンプの職員は、地面が激しく揺れる中、緊急避難車両に身を隠しました。ベースキャンプの多くの建物には亀裂が入り、その後閉鎖が発表され、観光客は安全な場所に移動しました。

 エベレストベースキャンプ入口付近にあるホテルのオーナーである張超凡(ちょう・ちょうはん)さんは、「地震発生時、多くの宿泊客はまだ寝ているか、朝食をとっていました。揺れが始まった瞬間、全員が一斉に外へ飛び出しました。建物には複数の亀裂が入り、宿泊客の多くが早めに退去しました」と述べました。一部の観光客はラサ市への帰還を試みましたが、地震による道路封鎖や余震の影響で身動きが取れない状況が続いています。
中国科学院エベレスト総合観測研究所の観測責任者、席振華(せき・しんか)さんも、地震時の状況について言及しました。「建物が激しく揺れ、我々は厚手の衣類を着る間もなく、毛布を体に巻いて外へ避難しました」と述べています。避難した住民たちは、氷点下20度を超える極寒の中での避難生活を強いられています。

 地震後、中国政府は迅速に重大自然災害二級緊急対応を発動しました。緊急管理部は国家地震三級緊急対応を発動し、救助チームや物資を被災地に派遣しています。しかし、厳しい寒さが救助活動と被災者の安置を困難にしています。中国気象局の予測によると、定日県の夜間気温はマイナス18度に達し、避難者の防寒対策が急務となっています。臨時の避難所が設置されたものの、物資や暖房設備が不足しているため、多くの被災者は依然として過酷な状況に置かれています。

 今回の地震はまた、建物の耐震性能に関する議論を巻き起こしました。ネットユーザーの中には「西藏では地震が頻発しているのに、なぜ建物がこれほど脆弱なのか」といった声が上がっています。また、昨年台湾で発生したマグニチュード7.4の地震では死亡者が10人にとどまったことと比較し、西藏の死傷者数が多いことを問題視する意見もあります。

 専門家は、今回の地震はヒマラヤ構造帯で発生したものであり、今後も「体感できる余震」が続く可能性があると指摘しています。地震直前の午前8時11分にも、震源地近くでマグニチュード3.0の地震が発生しており、地域の地質活動が活発であることが確認されています。この災害は再び、地震多発地域における防災・減災対策の脆弱性を浮き彫りにしました。

(翻訳・吉原木子)