2024年1月2日未明、陝西省渭南市蒲城(せんせいしょういなんしほじょう)職業教育センターの3年生である党昶鑫(とう・ちょうきん)さんが寮のバルコニーから転落し、亡くなりました。公式発表では、これは不慮の転落事故であり、刑事事件ではないとされています。しかし、遺族や市民の間では、この結論に対する疑念が広がり、事件の背後に公開されていない真実がある可能性が指摘されています。この事件は世論の注目を集め、抗議活動が急速に拡大し、社会的な関心を引き起こしました。

 学校と警察の報告によると、1月1日午後10時頃、党昶鑫さんは寮内での友人の会話がうるさいと感じ、同室の学生と口論になったとのことです。一時は教師の仲裁によって落ち着き、部屋に戻って休んだとされています。しかし、翌日の未明3時頃、党昶鑫さんが寮のバルコニーから地上に転落しているのが発見されました。学校側は、事件当時に寮の監視カメラが故障しており、映像を確認できなかったと説明しました。

 しかし、遺族はこの説明に納得せず、事件処理における数々の不合理点を指摘しました。党昶鑫さんの母親は、学校側が遺族による現場確認を拒否し、写真撮影を禁止し、遺体の詳細な検査も許可しなかったと述べています。また、彼女によると、息子の衣服は整っていましたが、首から下には複数のあざがあり、頭部や顔には目立った外傷が見られなかったため、単なる転落事故とは考えにくいとしています。

 事件後、一部の学生やインターネット上の投稿者は、党昶鑫さんが長期間にわたっていじめを受けていた可能性を示唆し、事件当夜に暴行を受けた末に突き落とされたのではないかとの見解を示しました。さらに、事件当夜には寮内の電気が突然切られ、学生の携帯電話が没収されていたとの情報もあります。これらの状況は、事件の真相に対する市民の疑念を一層深めました。ある匿名の学生は、党昶鑫さんが1年生の郭姓の学生と口論になり、その後郭姓学生が仲間を集めて報復に及んだと話しています。これらの主張は公式には確認されていませんが、いじめに関する噂は社会全体に強い反響を与えました。

 1月4日から、党昶鑫さんの遺族や市民は学校の正門前に集まり、真相の公表を求めました。時間の経過とともに、抗議に参加する市民の数は増え続け、規模が急速に拡大しました。1月5日夜には、集まった人数が1万人を超え、市民の感情は高まり、警察との対峙が始まりました。目撃者によると、警察が党昶鑫さんの叔父を連行し暴行した際、抗議活動は急速に激化し、市民が学校に侵入して食堂や事務設備を破壊し、拘束された人物の解放を求めました。警察はさらに増員して事態の収拾を試みましたが、市民の数が圧倒的に多く、衝突は激化し、複数の負傷者が出ました。

 1月6日未明、怒りに満ちた抗議者たちは学校の壁を壊し、警察の封鎖線を突破して再び学校に侵入しました。校長と副校長は市民の怒りの矛先となり、副校長は負傷して入院、校長も混乱の中で負傷して救急車に避難しましたが、抗議者たちは救急車の移動を阻止しようとしました。また、一部の学生が監視室に侵入し、監視カメラが正常に作動していることを発見しました。これは学校側の「監視カメラが故障していた」という主張と矛盾していました。一部の抗議者は校内で花を供え、党昶鑫さんを追悼するとともに怒りを表明しました。

 この事件の継続的なエスカレーションは、社会各界に強い反応を引き起こしました。一部の卒業生は、この学校内で長年いじめが存在していたと指摘しています。かつてこの学校に通っていた李梅さん(仮名)は、在学中に同級生から嫌がらせを受けた経験があると述べました。ネット上では、多くの人々が学校管理の問題や未成年者保護の不十分さを非難し、監視カメラがなぜ事件当時に「故障」していたのか、なぜ遺族が遺体を十分に確認できなかったのかについて疑問を投げかけています。また、一部の人々は公正な調査を確保するために事件の管轄を他地域に移すべきだと主張しました。

 1月5日夜、蒲城県合同調査チームは、党昶鑫さんが自殺であると結論付ける通告を発表しましたが、この結論は市民の疑念を解消するには至りませんでした。さらに、ネット上では、事件に関与したとされる郭姓学生の家族が地元の公職者であり、事件の調査と処理に影響を与えている可能性があるという情報が広がりました。

 この事件は、ネット上でも広範な関心を集めています。多くの人々が「これは近年で最大規模の学校抗議事件の一つだ」と述べ、いじめ問題と学校側の対応への不満を表明しました。「今日の被害者が他人の子どもなら、明日は自分の子どもかもしれない」という声も多く上がりました。

 1月7日現在、陝西省蒲城職業教育センター周辺には依然として警察が配置されており、抗議活動は完全には収束していません。事件の調査結果に対する注目が高まっており、市民は透明で公正な結論を期待しています。この事件を契機に、学校の安全管理と未成年者保護に対する新たな基準が確立されることを望む声が広がっています。

(翻訳・吉原木子)