飲食業や小売業で倒産が相次ぐ中、中国の医療業界でも破産の波が押し寄せており、多くの病院が財政難に陥っています。この影響で医療従事者が集団的に賃金を求める抗議を行う事態が続発しており、一般市民はますます重い医療費の負担を強いられる可能性があります。

 中国メディア『三聯生活週刊』の記事によると、全国企業破産情報ネットで「病院」というキーワードを検索した結果、2024年には病院の破産に関連する記録が1200件以上あり、2023年と2022年にはそれぞれ800件と500件だったことが分かりました。記事では、「過去数年と比較して、病院の破産件数が急増している」と指摘しています。この傾向はここ数年に始まったものではありません。2020年の新型コロナウイルス感染拡大時には、すでに中国病院協会民間病院管理分会の副会長・余小宝(よしょうほう)氏が「2000以上の民間病院が財政的困難により倒産した」と述べています。

 2024年、中国各地で病院破産のニュースが相次ぎました。特に中小規模の民間病院が中心ですが、大型病院の破産も注目を集めました。同年11月24日、宿遷市(しゅくせんし)の宿遷児童病院(しゅくせんじどうびょういん)が清算組公告を発表し、債務問題の解決を目的として市政府や病院長、法律チームによって清算手続きが開始されました。この病院はかつて江蘇省北部の非営利の二級児童専門病院として知られていましたが、オークションでは初回の開始価格4億8千万元から三度流札し、最終的には3億6千5百万元で地元の国有企業に売却されました。この価格は初回の開始価格よりも1億1千5百万元も低いものでした。

 宿遷市では、この病院以外にも破産する病院が相次ぎました。2023年には宿遷佳宝児童病院(しゅくせんかほうじどうびょういん)が1億6千7百万元の開始価格でオークションにかけられましたが、五回のオークションでも買い手がつかず、最終的に835万8千元で売却されました。これは初回開始価格のわずか5%に過ぎません。また、2022年には宿遷市婦産病院(しゅくせんしふさんびょういん)や工人病院(こうじんびょういん)も破産清算され、それぞれ資産の大部分が大幅に値引きされた価格で売却されました。

 近年、公立病院も財政難に直面しています。2021年には公立二級病院の楽山市(がくさんし)第四人民病院が閉鎖され、2023年には浙江省(せっこうしょう)長興第二病院が破産を申請しました。2024年には安徽省(あんきしょう)懐遠県(かいえんけん)の荊涂病院(けいとびょういん)も破産手続きを開始しました。同年、広東省(かんとうしょう)の梅州市(ばいしゅうし)嘉応学院附属病院(かおうがくいんふぞくびょういん)は10カ月にわたる賃金未払いを経て最終的に破産・診療停止に追い込まれました。この病院は広州市健康呼吸研究所(こうしゅうしけんこうこきゅうけんきゅうしょ)の技術協力病院として知られており、かつては地域の中核病院の一つでしたが、ついに閉鎖に至りました。

 病院の財政問題は破産だけでなく、大規模な賃金未払い問題を引き起こしています。中国国家衛生健康委員会のデータによれば、二級公立病院の7.51%が資産負債率100%を超え、約半数の病院で負債率が50%以上に達しています。このような状況は、医療従事者の賃金削減や支払い遅延を引き起こし、抗議行動の頻発につながっています。2024年10月だけでも、広東省汕尾市人民病院や河南省新郷市第四人民病院を含む複数の医療機関で賃金未払いに対する集団抗議が行われました。一部の三甲病院では、基本給のみの支給にとどまるケースも報告されています。ある病院の財務部門は、12月15日に「資金不足のため、基本給のみを先行支給し、業績給は後日支給する」と通知しました。

 深圳(しんせん)のある医師はSNSで、「現在全国の多くの病院で賃金削減が行われており、一部の病院では給与すら支払われない状況だ」と述べました。この発言はネットユーザーの間で議論を呼び、「医師が患者の診療だけでなく、病院の収益確保を考えなければならないのは問題だ」という意見や、「公立病院の公益性が名ばかりになっている」といった批判が相次ぎました。

 中国国家衛生健康委員会のデータによると、2022年には全国公立医療機関の43.5%が赤字で、総損失額は1兆元を超えました。この状況は政府からの投入不足と運営システムに起因していると専門家は分析しています。公立病院は公益二類事業単位として、政府からの助成金に依存しながらも市場化された運営で収益を上げる必要があります。しかし、発展途上国の医療制度と比較して、中国の個人負担割合は依然として高く、政府支出の割合はわずか26.7%にとどまっています。

 さらに、中国の人口減少が進む中、医療保険基金の収入源も縮小する見込みです。この基金は公立病院にとって重要な収入源であるため、収益減少のプレッシャーは最終的に患者に転嫁される可能性があります。結果として、患者にとっての医療費負担がますます重くなることが懸念されています。

 こうした問題は、中国の医療制度が「名目上の公益性」と「現実の収益性」の狭間で揺れていることを浮き彫りにしています。政府の投入が不十分であるため、公立病院は診療費の値上げや支出の削減で生き残りを図らざるを得ず、その負担は最終的に患者に転嫁されています。このような傾向が続く中、一般市民にとって「医療費が高い」という問題はさらに深刻化する可能性があります。

 飲食業や小売業から医療業界に至るまで、中国経済のシステム全体が圧力を受けており、民生分野への影響も拡大しています。病院破産の波は医療制度の構造的問題を浮き彫りにすると同時に、社会の安定に警鐘を鳴らしています。この深刻な現実に直面し、いかに医療資源を公平に配分し、政府の医療投入を増やすかが、今後の重要課題となるでしょう。

(翻訳・吉原木子)