中国のネット検索トレンドにおいて、「全国でインフルエンザウイルス陽性率が急上昇」「インフルエンザで三甲病院(さんこうびょういん・中国の最高等級病院)が満杯」という話題が注目を集めました。現在、インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスなど複数の病原体が同時に流行しており、中国各地の三甲病院が満員状態となり、外来診療や救急診療の患者数が急増しています。その結果、医療資源が極度に逼迫しています。
中国疾病予防管理センターの最新データによると、全国的に急性呼吸器感染症の感染率が上昇を続けており、とりわけインフルエンザウイルスの陽性率が急速に増加しています。病院での検査結果では、外来や救急診療で検出される主な陽性病原体はインフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスであり、入院患者のうち重症急性呼吸器感染症の場合では、インフルエンザウイルス、肺炎マイコプラズマ、ヒトメタニューモウイルスが主な原因となっています。
北京市の衛生健康委員会が開催した感染症予防対策会議では、現在、呼吸器感染症の感染率が増加傾向にあり、インフルエンザウイルスは変異性が強く、拡散速度も速い特徴があると指摘されました。このため、発熱、咳、筋肉痛、倦怠感などの症状を訴える患者が急増しているほか、ヒトメタニューモウイルスや肺炎マイコプラズマによる感染例も目立っています。
最近では、北京、上海、天津、武漢、西安などの三甲病院でインフルエンザの流行により、小児科や発熱外来の患者数が急増しました。北京の首都児童医療研究所附属病院では、救急診療科や発熱外来は患者であふれ、満席の状態が続いています。中国中部のある三甲病院の感染症科の主任である章燁(しょう・よう)氏は、外来患者数が短期間で急増し、12月初旬の診療数と比べて5倍に増加したと述べています。また、四川省人民医院の小児科副主任医師である葉国静(は・こくせい)氏によると、最近ではライノウイルスに感染した子どもの数が目に見えて増加しており、全体の外来患者数が著しく増加しているとのことです。このほか、一部の地域の小児病院では、1日の救急外来患者数が1万人を超える状況となっており、医療資源が逼迫しています。こうした状況に対し、多くのネットユーザーが医療機関の感染対策を強化し、患者の安全な診療環境を確保すべきだとの意見を表明しています。
現在流行しているインフルエンザウイルスの大半はA型H1N1型(通称「A型インフルエンザ」)であるとされています。中国疾病予防管理センターが発表した2024年第52週(2024年12月23日~12月29日)のインフルエンザ監視レポートによれば、南北地域で検出されたインフルエンザ陽性標本のうち、A型H1N1型が99.6%を占めています。この型のインフルエンザは感染力が非常に強く、飛沫感染を介して急速に広がる特徴があります。特に人口密度の高い場所では、感染が一気に拡大する可能性があります。
上海市肺科病院の呼吸器科主任医師である胡洋(こ・よう)氏によると、今年はインフルエンザによる重症肺炎の割合が例年よりもやや高くなっています。普通の風邪に比べ、A型インフルエンザは全身症状がより顕著に現れ、筋肉痛や高熱、倦怠感、頭痛、食欲不振などの症状が目立つと指摘されています。専門家は、外出時のマスク着用や頻繁な手洗いを推奨しており、人混みを避けることが重要だとしています。また、高熱が下がらず呼吸困難が見られる場合は、速やかに医療機関を受診するよう呼びかけています。
インフルエンザの流行に伴い、薬品の供給不足も深刻化しています。中国の報道によれば、「インフルエンザ特効薬」とされるマバロキサビルの価格が急騰し、薬局によっては300元(約6000円)/2錠という価格にまで上昇しています。これは医療保険支払価格の222.36元(約4500円)を大幅に上回っています。一部のオンライン販売サイトでは398元(約8000円)を超える価格で販売されており、品薄状態が続いています。
また、インフルエンザウイルスだけでなく、ヒトメタニューモウイルスの高い感染率も注目されています。北京市疾病予防管理センターのデータでは、2024年12月30日までに検出された病原体のうち、ヒトメタニューモウイルスは感染率で第2位を占めており、1位のインフルエンザウイルスに次いでいます。専門家は、このウイルスがしばしばインフルエンザやライノウイルスと同時に感染し、患者の症状を複雑化させる可能性があると指摘しています。特に中国北部地域では、新型コロナウイルスに類似した症状を示すヒトメタニューモウイルスの感染例が多数報告されており、不安を煽る要因となっています。
2024年11月末以降、中国全土で呼吸器感染症の感染者数が増加を続け、多くの地域の医療システムが大きな負担を抱えています。こうした状況の中で、感染症に対する予防意識が徐々に高まっていますが、インフルエンザをはじめとする複数の病原体が同時に流行している現状では、予防対策の強化が依然として必要とされています。専門家たちは、公衆衛生監視の強化や医療資源の最適化、そして国民の健康安全の確保が重要だと強調しています。
(翻訳・吉原木子)