中国経済の低迷が続く中、中国当局は経済に関する否定的な発言を一層制限し、特にエコノミストの言論の自由を厳しく規制しています。
中国メディア『財聯社』の報道によると、中国証券業協会(SAC)は最近、業界内に通知を発出し、管理責任、採用規定、対外的な発言の事前審査、風評リスク管理など6つの面から、各証券会社のチーフエコノミストに対する管理を強化するよう求めました。証券会社は、チーフエコノミストが業界および個人の評判を大切にするよう促すべきであり、一定期間内に「不適切な言動」による風評リスクが繰り返し発生した場合や、重大な悪影響を及ぼした場合には、企業は厳しい処分や解雇を行う必要があるとしています。
当該通知では、チーフエコノミストは独立性、客観性、公正性、慎重性、専門性、誠実性といった職業倫理を守り、「(中国共産)党と国家の大政方針を正しく理解」し、責任を持って発言すべきであり、党と国家の路線・政策を的確に解釈し、市場の予測を適切に誘導することで、投資家の信頼感を高める役割を果たすべきだと書かれています。
規制強化を求める今回の通知は、中国の著名なエコノミストである高善文(こうぜんぶん)氏と傅鵬(フーポン)氏を思い出させます。最近、2人は中国経済の現状について自身の見解を述べた後、彼らのWeChatやショート動画プラットフォームなどのソーシャルメディアアカウントが中国当局によってブロックされました。
安信証券のチーフエコノミストであり、中国太平洋保険グループの独立取締役も務める高善文氏は、12月3日に行われた来年の投資戦略に関するイベントで講演を行いました。彼は次のように発言しました。「コロナ禍以降、中国社会では、生き生きと活発な高齢者、活気を失った若者、そして希望を見出せない中年層が至る所で見られるようになった」。中国のGDPは年平均で約3ポイント過大評価されている可能性があり、過去数年間の累積された経済規模も約10ポイント高く見積もられていると考えています。
一方、東北証券研究所のチーフエコノミストである傅鵬氏は、11月24日の社内イベントの講演で、「現在の中国は有効需要の不足と中産階級の崩壊に直面しており、中国当局の経済対策は2008年のように効果を発揮しない」と述べました。
中国政法大学の国際法修士号を持ち、カナダ民陣(民間人権陣線)の主席を務める頼建平(らい・けんぺい)氏は、「エコノミストが中国経済を称賛する発言をすることを求められており、中国経済を批判することや真実を語ることは許されない」と指摘しています。「これは市民の基本的な言論の自由を制限するものであり、従わない場合は、所属する企業からの処分や減給、さらには解雇を受ける可能性がある。さらに、当局から刑罰を科されるリスクもある。このような規制は、社会の報道の自由や情報の自由を奪うものであり、エコノミスト、証券会社や投資銀行に対してうそをつくよう強要し、国民や社会全体を欺くことだ。これは非常に悪いことである」
ある証券会社の研究所は社内通達を出し、アナリストに対して自身の言動を全面的に規制し、職業倫理を厳守するよう要求しています。その中で、「調査報告は唯一の見解基準であり、目を引くために過激な発言をしてはならないこと、顧客を引きつけるためや話題に迎合(げいごう)するために基準を緩めてはならないこと、規制のレッドラインを試すようなことをしてはならないこと」を強調しました。別の証券会社の中には、従業員が上場企業に関する調査研究メモを顧客に提供することを禁止し、これらのメモは内部に保管されるか、研究報告書の作成にのみ使用されるべきであると明確に規定するところもあります。
財経評論家の古春秋(こしゅんしゅう)氏は次のように述べています。「中国共産党(以下、中共)は現在、経済危機が救いようのない状況にまで陥っている。彼らは真実の言葉を非常に恐れているのだ。なぜなら、現在の経済危機は中共政権の不安定化を引き起こしているからだ。現在、中国国民は中国経済の『冬』が到来したと感じている。各地での減給や解雇、未払い給与、抗議行動が増加しており、国民の不満は非常に高まっている。このような状況で、高善文氏や傅鵬氏のように中国経済の現実を少しでも語る人がいると、多くの共感を呼ぶのだ。それが、中共が社会の統制を失う結果につながるため、それを非常に恐れているのだ。中共はこれらのエコノミストに対し、真実を語らないよう警告し、嘘を語るよう強制している。これは一種の暴力的な社会安定維持手段と言えるだろう。中共は経済の巨大な危機を覆い隠すため、これらの証券会社のチーフアナリストやエコノミストに圧力をかけ、もし当局の指示に従わない場合、暴力的な弾圧を受けることになると伝えている」
古春秋氏はさらに指摘します。現在、中共は経済を立て直し、活性化させるために市場を刺激する必要があり、その中でも株式市場が重点とされています。現在、経済学者や証券取引業者が実情を明らかにすると、中共は特に恐怖を感じています。証券取引業者とは株式市場や債務市場で直接取引を行う人々であり、市場と直接関わるため、中国経済がどれほど悪化しているかを知っています。彼らの発言は投資家や国民全体に非常に大きな影響を与えるのです。
一方、中共は国民を欺き続け、彼らの資金を株式市場に投入させ、利益を上げられない国有企業や銀行を支えようとしています。しかし、銀行も現在、巨額の債務を抱え、すでに利益を生み出すことができない状態に陥っています。不動産業界が崩壊しているため、全ての銀行が赤字を抱えているのです。中国の銀行はまるで中共政権の「金庫」と化しており、現在、中国の銀行資金はほとんど中共によって使い尽くされています。
中共はさらに、国民の資金を株式市場に投入させることで、国民の財産を吸い尽くそうとしています。そのため、経済学者が中国経済の実情を語ることを許さないのです。
頼建平氏は次のように指摘しています。「経済学はあらゆるデータや資料といった客観的な事実を基盤としなければならない。統計、分析、予測のいずれも、客観的な事実に基づく必要がある。しかし、中国の経済学者は客観的な研究を行うことを許されておらず、政治的な発言を求められている。政治を語るとは、事実を無視し、中共の指示に従って虚偽や空虚な言葉、型どおりの表現を用いて、中共の虚偽の宣伝を行い、国民や世論を欺くことを意味する」
彼はさらに例えを挙げて説明します。「たとえば、車が崖に転落しようとしているのを目撃しても、それを警告することはできない。むしろ、『この車は非常に順調に進んでおり、明るい未来へと向かっている』と言うしかないのだ。このような発言は、中共が国民を愚弄(ぐろう)し続け、中共政権の安全と安定を維持するために役立つからだ。しかし、実際には中共は自ら墓穴を掘っているのだ」
(翻訳・藍彧)