今年のクリスマス、中国各地では再び祝う雰囲気が広がっています。数年前の冷え込んだ様子とは対照的に、今年は盛り上がりを見せているようです。この変化について、一部の専門家は、中国共産党(以下、中共)が経済的困難に直面し、戦略を調整した結果であると指摘しています。表面的には商業活動への規制が緩和されたように見えますが、西洋文化に対する警戒心や抵抗姿勢が変わったわけではありません。

 ここ数年、クリスマスが近づくたびに、中国のネット上では「外国の祭りを拒否する」という声が溢れていました。しかし、今年はそのような現象が大幅に減少しました。広州市の呉さんによると、例年この時期には「外国の祭りを拒否する」というプロパガンダが頻繁に見られたものの、今年はネットの雰囲気が全く異なり、クリスマスに関する話題が至る所で目立つようになったとのことです。呉さんは、政府が今年はこの問題に関する明確な指示を出さなかったため、一部の「小粉紅」が話題を煽る意欲を失ったのではないかと考えています。

 では、今年の中共がクリスマスに対して、以前のような公開的な反対姿勢を見せず、「外国の祭りを祝うな」といったメッセージを控えたのはなぜでしょうか?これについて、多くの専門家は、国内の経済状況との深い関係を指摘しています。中国の反体制派である陳思明(ちん・しめい)氏は、現在の中国は失業率が高く、経済は崩壊寸前であり、経済危機が社会危機を引き起こし、さらに政治危機に転化する可能性が常にあると述べています。

 経済の低迷が続く中で、消費は依然として弱含んでいます。公式データによると、2024年11月の中国社会消費品小売総額は4.38億元で、前年同期比わずか3%の増加にとどまりました。この成長率は、10月の4.8%から37.5%も減少し、市場予測の4.6%も下回っています。さらに、北京と上海では消費水準が大幅に低下し、11月の前年比減少率はそれぞれ14.1%と13.5%に達しました。同時に、外資の流出も加速しています。11月単月だけで、海外証券投資の純流出額は457億ドルに達し、歴史的最高額を記録しました。これは、中共が「対外開放」を掲げて信頼を取り戻そうとしても、実際にはほとんど効果がないことを示しています。

 時事評論家の趙蘭健(ちょう・らんけん)氏は、現在の中国経済は全面的な崩壊状態にあると分析しています。外資の流出や内需の低迷により、経済の回復は非常に難しいと指摘しています。不動産業界や基盤インフラ建設分野はいずれも深刻な不況に陥っており、これがさらなる経済的な下落を引き起こしていると述べています。趙氏によれば、多くの国民がすでに将来への希望を失っている状況だといいます。

 経済的困難の中、中国国内での抗議活動も顕著に増加しています。海外の人権団体「フリーダムハウス」が発表した報告によると、今年第3四半期に中国で記録された抗議活動は937件に上り、前年同期比で27%増加しました。陳思明氏は、中共指導部が社会不安の拡大を非常に懸念しており、特に2022年末に発生した白紙運動(ゼロコロナ政策に対する抗議活動)と同様の事件が再び起きることを恐れていると指摘しています。このような社会運動は、中共政権のさらなる不安定化につながる可能性があると考えられています。

 一方で、クリスマスに関する公式な宣伝は控えめになっていますが、一般市民にとって祝祭ムードは依然として薄いものです。深セン市の蒋さんは、クリスマスは商業者にとって単なる販促手段にすぎず、祭りの名目で商品を多く売ることが目的だと述べています。一方、河北省燕郊市の李さんは、多くのホテルやレストランがすでに閉店し、街の雰囲気は冷え込んでおり、祭りらしさはほとんど感じられないと語っています。彼は、現在の多くの人々が生計に追われ、祭りを楽しむ余裕がないと指摘しています。

 趙蘭健氏も、中国国内の友人たちがほとんど生活苦に直面していると述べています。インターネット業界やメディア業界でも、給与水準が下降しており、多くの人が家族を支えながら生活のプレッシャーに苦しんでいます。このような状況下では、どのような祭りにも関心を持てなくなっているとのことです。クリスマスだけでなく、伝統的な中国の祭りですら祝う人は減少しています。

 中共の態度の変化について、時事評論家の邢天行(けい・てんこう)氏は、これを戦略的な調整と見ています。彼は、中共は単に外国の祭りを拒否するキャンペーンを推進していないだけであり、宗教信仰への弾圧は依然として厳しいと指摘しています。たとえば、12月19日、成都市の秋雨聖約教会(しゅううせいやくきょうかい)の肖洛彪(しょう・らくひょう)副執事が自宅で他人を招いてクリスマスを祝ったとして、警察に「違法な宗教活動」の名目で召喚されました。この事件は、中共が信仰者に対する規制を緩和していないことを物語っています。

 中共は近年、「文化的自信」を繰り返し強調し、これを理由にクリスマスなど西洋の祭りを拒否しようとしています。2018年以降、多くの地方政府や学校がクリスマスを祝うことを禁止し、家族や生徒に対して平安夜を拒否するよう求めてきました。一方、中国の閉鎖的な姿勢とは対照的に、アメリカは中国文化を受け入れる姿勢を見せています。過去数十年間、オバマ元大統領、トランプ元大統領、そして現在のバイデン大統領を含むすべての大統領が毎年旧正月の挨拶を公開し、ホワイトハウスで中国の伝統的な装飾を行い、アジア系アメリカ人と新年を祝ってきました。

 時事評論家の唐靖遠(とう・せいえん)氏は、アメリカのこの行動は真の文化的自信を反映しており、多様な文化を受け入れる姿勢の表れだと述べています。彼は、真の中国伝統文化も同様に寛容性を備えているとし、中共が主張する「文化的自信」は、実際には自由と民主主義の価値観に対する恐怖を隠蔽するためのものだと批判しています。中共が西洋文化を拒絶する本当の目的は、普遍的な価値観の広がりを阻止し、その権威主義体制を維持することにあります。

 今年のクリスマスにおける中国政府の姿勢は一見柔軟に見えますが、これは本当の開放や変化ではなく、一時的な措置にすぎないと考えられます。経済の低迷や社会不安の拡大という背景の中で、中共の戦略調整が長期的な安定を維持できるかどうかは、今後の成り行きを見守る必要があります。

(翻訳・吉原木子)