中国の習近平総書記は最近、マカオを訪問し、自ら推進してきた横琴粤澳深度合作区(おうきんえつおうしんどがっさくく)を視察しました。横琴の開発は、近年、中央政府が推進する重要な地域協力プロジェクトの一つであり、公式には「重要プロジェクト」と位置付けられています。しかし、外部の観察によれば、この地域は現在、低い入居率や商業活動の停滞といった現実的な課題に直面しており、習近平政権下で進められてきた「政績プロジェクト」の実効性に疑問が投げかけられています。同時に、マカオ経済の柱であるカジノ産業も、中国政府の厳しい取り締まりの影響で低迷しており、地域経済にさらなる打撃を与えています。

 習近平は12月18日から20日までの3日間マカオに滞在し、第6期マカオ特別行政区政府の就任式に出席したほか、横琴粤澳深度合作区の視察を行いました。新華社の報道によれば、横琴の開発は「習近平が自ら計画し、指示し、推進した重大な措置」であり、このプロジェクトに対する彼の重要視がうかがえるとのことです。

 横琴粤澳深度合作区は珠海市南部に位置し、マカオと接しています。この地域はマカオと広東省が共同で管轄しており、管轄範囲は横琴島全域に及びます。総人口は約5万3,000人で、2024年3月1日からの運用が予定されています。この開発計画は2009年に遡り、当時副主席だった習近平が横琴島の開発を発表しました。その後、横琴新区は中国で3番目の国家級新区として指定され、7,260億元以上の初期投資が行われました。交通インフラや住宅建設を含むこのプロジェクトは、習近平の重要な「政績プロジェクト」の一つと見なされ、彼自身もこれまでに何度も現地を視察しています。しかし、実際の開発状況は期待通りに進んでいないとの指摘もあります。

 最近、不動産仲介業者が夜間に横琴の複数の住宅地区を訪れたところ、入居率が30~40%程度にとどまっていることが指摘されました。例えば、マカオ市民向けに建設された総合住宅プロジェクト「マカオ新街坊(しんがいぼう)」は、4,000戸以上の住宅を提供する予定でしたが、現地の観察では入居している住民の明かりがほとんど見られず、実際の入居率は10%にも満たないと推測されています。同様の状況は他の住宅プロジェクトや商業エリアでも見られます。「華融(かゆう)・琴海湾(きんかいわん)」などの高級住宅プロジェクトも依然として低い入居率にとどまっており、商業エリアも活気に欠けています。比較的新しいショッピングモール「創新方(そうしんほう)」では、半数以上の店舗が営業しておらず、レストランの利用率も10%に満たない状況です。ある訪問者は、「いくつかの店はまだ営業しているが、それ以外はまるで廃墟のようだ」と語っています。

 一方で、マカオ経済の柱であるカジノ産業も、中国政府の厳しい規制の影響を受けて低迷しています。習近平がマカオ訪問を終えて北京に戻った後、中国共産党の機関紙である『人民日報』は、マカオの返還から25年間で「住民の幸福感が最も高まった時期」であり、「国際的にも認められる大きな成功を収めた」と称賛する記事を掲載しました。しかし、現実は公式メディアの報道ほど楽観的ではありません。中国政府がクロスボーダー資金移動を国家安全保障上のリスクと見なし、海外のギャンブル活動を厳しく取り締まる中で、マカオのカジノ産業は大きな打撃を受けています。

 その代表的な例が、マカオ・サンシティ・グループの元会長である周焯華(しゅう・じゃくか)です。「新カジノ王」とも呼ばれた彼は、今年、不法なギャンブル経営やマネーロンダリングの罪で18年の懲役刑を言い渡され、さらに248億6,500万香港ドルの賠償金を支払うよう命じられました。周焯華はカジノ業界の中心的存在であり、カジノ事業以外にも金融、不動産、映画制作など幅広い分野に進出し、その事業は海外にも広がっていました。彼の失脚は、マカオのカジノ業界全体に衝撃を与え、複数のVIPルーム運営企業が業務縮小や閉鎖を余儀なくされる結果となりました。現在までに、マカオのカジノ業界で影響力を持っていた周焯華、陳栄煉(ちん・えいれん)、紀暁波(き・ぎょうは)の3人が相次いで失脚しています。

 香港のメディア『星島日報』によれば、北京政府はマカオの6つの有名なカジノを摘発し、これは習近平が6回の指示を出した結果だとされています。専門家の分析では、この措置はギャンブルによるマネーロンダリングや資金流出を防ぐだけでなく、カジノ業者にVIP顧客リストの提供を迫り、問題のある官僚を摘発する狙いも含まれているとされています。また、「共同富裕」というスローガンのもと、マカオの政治経済界における既得権益を清算することも目的とされています。さらに深い意図としては、カジノ業界の整備を通じてマカオ経済を中央の管理下に置くことが挙げられます。
これらの現象は、習近平の「政績プロジェクト」が抱える根本的な課題を浮き彫りにするとともに、政策の推進と実際の成果との間にある矛盾を明らかにしています。横琴の「空城化」やカジノ産業の低迷から見えてくるのは、政策主導型のモデルが必ずしも地域経済の課題解決につながらないという現実です。今回の習近平のマカオ訪問は、「政績プロジェクト」を象徴的に示す一方で、地方統治や経済発展における現行政策の課題をも浮き彫りにしています。

(翻訳・吉原木子)