近年、中国では出生率の低下が続いており、人口減少問題が社会的な関心を広く集めています。最近、ある出生率をめぐる対話が世論の注目を集め、大きな議論を引き起こしました。あるイベントで、中国人民大学の学者である王憲挙氏とカザフスタンのエルラン・カリン国務顧問の間で行われた質疑応答が、中国の低出生率の現状とカザフスタンの出生政策を鮮やかに対比させ、深刻な社会的課題を浮き彫りにしました。

 2023年11月22日、カリン氏は中国人民大学で「カザフスタンの改革と中カザフスタン永続的全面戦略パートナーシップ」というテーマで講演を行いました。講演後の交流セッションで、中国人民大学の学者である王憲挙氏は、カザフスタンの出生率の高さと中国の出生率の低さについて言及しました。そして、「現在の中国本土では、若い女性たちが結婚を望まず、子どもを持ちたがらない」と述べた後、次のような発言をしました。

 「カザフスタンでは子どもがとても多いですが、なぜ女子大学生たちは政府の言うことを信じて、素直に従い、早くからたくさんの子どもを産むのでしょうか?」

 この発言により、会場の雰囲気は一瞬で気まずいものになりました。これに対し、カリン氏は次のように回答しました。

 「カザフスタン政府は女性に出産を強制することも、彼女たちの選択を制限することも一切ありません。むしろ、女性の権利を尊重し、社会福祉を充実させることで出産を後押ししています。」

 さらにカリン氏は、カザフスタンでは石油や天然ガスの収益を国家基金に組み込み、その基金から新生児に分配金が支給される仕組みについて説明しました。この分配金は、住宅や教育の問題を解決するために活用されています。また、2022年には子どもの安全や女性の権利を保護するための法律が次々と制定され、これが新しい社会的価値観の形成につながっていると述べました。この回答は一部の学者から高い評価を受けましたが、一方で王氏の発言がさらに際立つ結果となりました。

 その後、このやりとりは中国人民大学重陽金融研究院の公式WeChatアカウントで紹介されましたが、ネット上では激しい議論を引き起こしました。多くのネットユーザーは、王氏の質問について「女性を物のように扱っているだけでなく、社会現状に対する無知や偏見が明らかになった」と批判しました。また、「高い住宅価格や就職のプレッシャー、育児コストの高さが、若者が結婚や出産を避ける主な原因だ」という意見が多く寄せられ、さらには「女大学生は出産機械ではない。なぜ従順である必要があるのか?」といった声も見られました。

 一方で、カリン氏の回答はネットユーザーから一貫して高い評価を得ました。彼が述べた「社会保障を充実させ、女性の権利を尊重することで出生率を向上させる」という方法は、中国が学ぶべき成功事例として多くの人々に受け入れられました。このやりとりを受け、中国人民大学重陽金融研究院は関連する投稿を静かに削除しましたが、この対応はかえって公衆の不満を煽り、中国の出生政策に対するさらなる反省を引き起こす結果となりました。
多くの人々が指摘するように、現在の低出生率は長年にわたる人口政策の失敗に起因しています。1979年に始まった一人っ子政策から、近年の「三人っ子政策」へと政策は緩和されてきましたが、根深い社会問題は依然として解決されていません。

 公式データによると、2023年の中国の出生人口は902万人である一方、死亡人口は1110万人に達し、人口は208万人減少しました。これは2年連続での人口減少となります。国連の報告によれば、中国の人口は21世紀末までに7億6700万人に減少し、世界人口に占める割合が現在の17%から6.1%に低下すると予測されています。この傾向が経済や社会に及ぼす影響は無視できないものです。

 中国政府は近年、出生率低下を食い止めるためにさまざまな政策を打ち出しています。出生補助金の提供や出生の重要性に関する宣伝活動などがあります。しかし、その効果は限定的です。たとえば、湖南省長沙市では子どもを1人産むごとに1万元(約20万円)の補助金を支給する政策が導入されましたが、こうした短期的な経済的インセンティブでは若者の出生意欲を大きく変えることはできませんでした。経済的な負担、育児コストの高さ、保育施設の不足といった現実的な問題が依然として大きな障壁となっています。

 また、若い世代は個人の自由や生活の質を重視する傾向が強く、結婚や出産に対する考え方も合理的です。あるネットユーザーは次のように指摘しました。「環境に適していないとき、生物が繁殖を諦めるのは本能だ。」

 このように、低出生率は単なる経済的問題ではなく、社会的価値観の変化とも深く関係しています。

 中国政府は最近、一部の地方で「極端」とも言える対策を講じています。住民に妊娠計画や月経の状況を問い合わせたり、妊婦に葉酸を無料配布して流産を防ぐよう促したりする取り組みがその例です。しかし、こうした対応は問題解決にはつながらず、むしろさらなる不満を引き起こしています。また、政府の宣伝機関が「子どもを産まないのは後悔につながる」「妊娠すると女性は賢くなる」などのメッセージを発信していることが、さらに反感を買っています。

 一方、カザフスタンの事例はより現実的かつ効果的な方法を示しています。社会保障の充実、家庭の負担軽減、女性の権利尊重といった施策を通じて、カザフスタンは出生率を向上させるだけでなく、より平等で持続可能な社会環境を構築しています。カリン氏の言葉にあるように、政府の役割は人々に強制することではなく、安心して子どもを産み育てられる環境を提供することです。

 この出来事は、中国の出生問題が単なる政策変更や経済的インセンティブだけでは解決できないことを浮き彫りにしました。住宅、教育、医療といった基盤的な課題を解決し、社会環境を根本的に改善することで、初めて人々が出産を前向きに考えるようになるでしょう。そうでなければ、どれだけインセンティブを提供しても、出生率低下の傾向を止めることは難しいでしょう。

(翻訳・吉原木子)