中国広東省東莞市厚街鎮(ホウジエ・チン)では、シェア自転車が川に投げ込まれる問題が深刻化しており、月に数百台もの自転車が川から回収されています。このニュースは2023年12月3日に百度(バイドゥ)の検索ランキングに上がり、ネット上で話題となっています。

シェア自転車の放置

 現場では清掃作業員によると、厚街鎮には22本の川があり、厚街鎮全体では毎日10台以上、月間で300~400台ものシェア自転車が河川やその周辺から回収されています。回収作業には6人がかりで行われ、時間と労力を大幅に費やしているのが現状です。

 こうした状況は厚街鎮だけではなく、中国各地で見られる現象です。シェア自転車の破棄や不適切な利用は、環境汚染や公共空間の占有といった深刻な影響を及ぼしています。

 弁護士によると、シェア自転車を故意に破壊したり投げ捨てたりする行為は、刑事犯罪に該当する可能性があり、厳しく取り締まる必要があるとされています。

 ネット上では、共有自転車が便利であるとする一方で、使用後に適切な場所に返却せず、住宅地や公共エリアに放置することで道路が塞がれたり、緊急通路が占拠されたりする問題も指摘されています。

 また、「シェア自転車の管理に存在する問題を露呈しており、過剰な台数の投入や無秩序な駐輪が一因である」との意見も見られます。

30万トンの金属廃棄物、空母5隻分に相当

 中国では、シェア自転車がピークを迎えた2017~2018年頃、多数の企業が市場に参入し、過剰供給が発生しました。2017年には約2000万台のシェア自転車が投入され、その結果、使われなくなった自転車が「自転車の墓場」と呼ばれる巨大な廃棄場に山積みされる問題が発生しました。廃棄されると約30万トンの金属廃棄物が発生するとされ、この量は航空母艦5隻分の構造鋼材に相当します。

 シェア自転車は主に大量投入に依存しています。市場では毎月数百万台もの新車が投入されており、この状況が続けば、新車の設置場所が不足するだけでなく、世代交代した古い自転車の処分場所も確保できなくなるでしょう。

 自転車の回収における課題は、廃鉄の価格が安く、回収量も少ないことが問題です。複数の回収業者によると、自転車1台の回収価格はわずか十数元(数百円)、多くても4~5元(約80円~100円)程度にとどまっています。

「シェア自転車の墓場」誰が責任を負担するのか?

 かつて広く愛用されていたシェア自転車が多くの人々に見捨てられる中、街中や地下鉄駅周辺で見かけた無数の自転車が撤去され、最終的には郊外のさまざまな空き地やゴミ捨て場に放置され、いわゆる「自転車墓場」という現象が起きています。
2018年初頭、深セン市の写真愛好家である呉国勇さんは、杭州市の自転車墓場の写真をネットで見て撮影を思い立ったのです。その後、彼は中国20以上の省を訪れ、45カ所のシェア自転車墓場を記録しました。1万枚以上の写真を撮影し、それがネット上で大きな注目を集めました。彼はこれらの作品(写真)を「無処安放(置き場所のないもの)」と名付けました。彼は、「置き場所のないのはシェア自転車だけではなく、現代社会の焦燥の縮図でもある」と嘆いています。

共有経済の理念に反する現実

 北京工業大学都市交通学院の陳艶艶副院長は、「北京青年報」の取材に対し、2015年以降、短期間で市場を占有することを目指したシェア自転車企業が次々と参入したが、その本質はサービス志向ではなく資本主導だったと語っています。急速な市場拡大の後、運営やメンテナンスが不十分な状態が続いた結果、利用者が減少し、資金が回収できずに大量の壊れた自転車や自転車墓場が生まれるのは、当然なことでしょう。

 陳氏は、共有経済(シェアリングエコノミー)の本来の姿について「個人が所有するものを集約して共用し、回転率を高めること」と説明しました。しかし、現在のシェア自転車は企業がすべて自前で購入しているため、利用効率が保証されないばかりか、膨大な廃棄物を生み出しています。「これは実際のところ、共有経済の理念とは相反するものだ」と陳さんが述べました。

シェア自転車特許経営の競売とその影響

 2022年5月、285回に及ぶ激しい競争入札の末、5社が合計1.89億元(約40億円)という高額で石家荘市のシェア自転車3年間の特許経営権を獲得しました。落札した企業が運営する自転車は、管理基準の違いから他地域での使用が難しく、結局、車両留置場に放置される結果となり、いわゆる「自転車墓場」として膨大な資源浪費を引き起こしました。

 2021年の中国シェア自転車市場の規模は320億元(約6700億円)に達し、2020年比で73億元(約1500億円)増加、前年比29.55%増となりました。この巨大な市場は、多くの地方政府にとって新たな財源と見なされ、公開競売や入札、排他契約の締結を通じて市場競争を制限する動きが広がっていました。

 まず、各地でシェア自転車のハードウェア基準が異なるため、ある地域で使用されている自転車を他地域で再利用することが難しいのです。このため、企業は浪費を避けるために競売価格を引き上げて特許経営権を取得する必要があります。さもなければ、膨大な数の自転車が廃棄物として残ることになります。

 次に、高額の特許経営権を取得した企業は、そのコストを早期に回収するために過剰な自転車を投入します。短期間で大量の自転車がすでに混雑している都市道路に投入されることで、新たな交通渋滞の原因となり、市民の移動に深刻な影響を与えています。

 さらに、多くの都市では早期の収益化を目指し、シェア自転車の料金を密かに引き上げています。たとえ競売時に料金引き上げを禁止する取り決めがあったとしても、企業は利用時間の短縮など別の方法で規制を回避できます。

 特許経営権を取得した企業は、市場競争のメカニズムから大きく外れることになります。巨額の経営権を取得した企業に対して、地元政府は一定の責任を負う形となり、管理面で企業の料金引き上げやその他の問題に対して目をつむる傾向が強まっています。そのため、「厳しい参入基準」が「緩い管理」に変わり、最終的には消費者がその負担を負うことになります。

 シェア自転車はこれまで市民の移動を便利にし、都市交通の課題解決に寄与してきました。しかし、一部の地方政府が厳しい参入規制や高額入札による特許経営方式を採用し、「高値で落札した者が得る」仕組みを導入することで市場メカニズムが機能不全に陥っています。

 特定のシェア自転車企業がある都市で「独占」状態になると、市民の選択肢が制限されるだけでなく、市場競争や消費者の正当な権利が損なわれます。また、適切な制約が欠ける状況下では、シェア自転車企業が「野放し状態」で成長し、保証金の不透明な扱いや情報セキュリティの欠如、公的資源の損失といった社会的課題を引き起こす可能性があります。

(翻訳・藍彧)