トランプ氏が間もなくアメリカ大統領に就任する中、米中貿易関係は新たな緊張局面を迎えています。同時に、中国経済はデフレと内需不足という悪循環に陥っています。物価が下落し続ける中、多くの企業が在庫を処分するために値下げ販売を余儀なくされ、それが収益性を低下させ、損失の拡大を招いています。この結果、企業は投資を縮小し、人員削減に踏み切らざるを得なくなり、社会全体の消費力はさらに抑え込まれています。消費者は将来の経済見通しに不安を感じ、消費意欲が低下し、市場需要がますます縮小するという悪循環が形成されています。このような状況下で、中国政府は有効な対策を打ち出せず、新たな貿易戦争が中国経済にさらなる打撃を与えるとの見方が広がっています。

 中国のデフレ問題は特に深刻です。工場出荷価格は前年比で26か月連続で下落しており、11月には2.5%の下落を記録しました。また、物価水準をより包括的に反映する国内総生産(GDP)デフレーターも6四半期連続でマイナスとなっており、これは1990年代後半以来最長の期間です。例えば、中国最大の製紙企業の一つである山東晨鳴紙業は、過剰生産能力に対応するため値下げ販売を行いましたが、これが奏功するどころか、逆に損失をさらに拡大させました。同社は先月、約2.5億ドルの延滞債務を抱えていると発表し、一部の銀行口座が凍結される事態に陥りました。このような晨鳴紙業の苦境は、中国におけるデフレ危機の典型例と言えます。価格の下落と需要の低迷という二重の圧力に直面し、多くの企業が同様の問題に苦しんでいます。

 価格の下落は消費者の行動にも影響を及ぼしています。多くの消費者は物価がさらに下がると予想して購入を先送りにしており、こうした負の期待が市場の信頼をさらに弱めています。一方で、企業の収益性が低下し、投資活動が減少、人員削減が進むことで、社会全体の消費力が直接的に打撃を受けています。このため、内需不足の問題は一段と深刻化しています。経済学者たちは、このデフレの悪循環が根深いものであり、短期間で解消するのは困難だと指摘しています。

 トランプ氏の貿易政策は、中国経済の困難をさらに深刻化させる可能性があります。輸出は中国経済にとって重要な成長源でしたが、米中貿易の緊張関係はこの成長の柱を徐々に弱めるかもしれません。一部の企業は関税が発動される前に急いでアメリカ向けの輸出を増やしましたが、11月の対米輸出の伸びは予想を下回りました。経済学者たちは、来年には中国の対米輸出が完全に停滞する可能性があると警告しています。輸出の停滞と内需の低迷が重なり、中国経済は二重の圧力にさらされています。

 このような状況下で、中国政府は人民元を切り下げることで関税の影響を軽減しようとする可能性があります。しかし、この措置はさらなる負の結果をもたらす可能性があります。人民元の切り下げは短期的には輸出を促進するかもしれませんが、国内の消費者心理を悪化させ、人々は貯蓄を増やし消費を減らす傾向を強めるでしょう。さらに、資本流出が加速し、不動産市場や株式市場に悪影響を及ぼす可能性があります。中国中央経済工作会議の議事録が発表された際、中国株式市場はすでに弱含みの兆候を見せており、主要株価指数はその日約1%下落しました。

 中国経済における内需不足の問題はすでに慢性化しており、その根本原因は中国共産党体制による経済資源の高度な掌握にあります。長期にわたり、中国政府はさまざまな手段を用いて民間経済の活力を奪い、国有経済を政権維持の基盤としてきました。民間経済が比較的繁栄していた時期でさえ、中国政府は税制や政策を通じて経済利益の大部分を吸い上げ、民間部門の収益性を著しく制限していました。スタンフォード大学中国経済・制度研究センターのシニアフェローである許成鋼氏は、内需不足はすべての共産主義的強権国家に共通する問題だと指摘しています。資源が過度に集中することで市場の活力が抑制され、消費者も企業も信頼を失い、持続可能な経済成長を実現することが困難になっています。

 WTO加盟とグローバルサプライチェーンへの統合は、一時的に中国経済の成長を助けましたが、中国政府はグローバル化がもたらす西側の価値観や市民社会意識に対して警戒を強めています。近年、中国政府は「国進民退」の政策を推進し、国有経済への支援を強化する一方で民間経済を抑制しています。この政策は短期的には政府の経済統制力を強化しましたが、長期的には市場活力を著しく制限し、地方債務問題を悪化させました。地方政府による大規模な借入を通じたGDP成長の推進は限界に達しており、地方財政は破綻の危機に直面しています。その結果、経済成長は停滞しています。

 ギャラップの調査によれば、中国経済は2018年にはすでに停滞しており、その年の実質GDP成長率はゼロに近いか、あるいはマイナスだった可能性があります。現在、経済縮小の傾向はますます顕著になっています。地方債務の膨張、消費需要の低迷、輸出の停滞が重なり、中国経済は構造的な困難に直面しています。中国政府は利下げや政府借入の増加といった政策で経済を刺激しようとしていますが、これらの政策の効果は限定的で、市場は中国政府がデフレ問題を解決できるのか疑念を抱いています。

 中国共産党体制の特性上、経済への全面的な統制を放棄するのは難しいと言えます。許成鋼氏は、中国政府が国有経済を政権維持の基盤とみなし、民間経済が成長して強権体制を脅かす可能性がある場合には必ず抑制すると述べています。このため、中国政府の政策は主に強権体制の維持に焦点を当てており、経済発展そのものが目的となっているわけではありません。中国政府が深い構造改革を行い、市場活力を解放しない限り、中国経済が現在の困難から抜け出すのは難しいでしょう。

 中国経済が直面しているデフレ、内需不足、過剰生産能力の問題は、表面的には市場需給の不均衡によるものですが、その深層には中国共産党体制による資源の過度な集中と民間経済の抑制が潜んでいます。「国進民退」の政策や国際貿易圧力への対応策は、いずれもこの困難を根本的に解決するには至っていません。内需の低迷、輸出の停滞、地方債務の膨張が続く中で、中国経済の前途はますます暗いものとなりつつあります。構造的な改革が行われない限り、この状況は悪化の一途をたどるでしょう。

(翻訳・吉原木子)