最近、中国では無差別殺傷事件が頻発し、同様に民衆による抗議活動も急激に増加しています。最新のデータによると、今年第3四半期の抗議活動件数は、前年同期比で27%増加しました。中でも特に目立つのは経済関連の抗議活動です。一部の抗議活動には富裕層も参加しており、中国社会の不安定さを一段と際立たせています。
抗議活動急増の要因
アメリカの人権団体「フリーダム・ハウス(Freedom House)」は11月21日、中国の抗議活動を追跡する「異言網」のデータを引用し、今年第3四半期に記録された抗議件数は937件で、前年同期比27%の増加であると発表しました。
なお、第2四半期には805件の抗議活動が記録され、前年同期比で18%の増加となりました。抗議活動の大半は労働者の抗議(44%)と住宅所有者の抗議(21%)です。
第3四半期のデータでは、抗議参加者の41%が労働者で、次いで住宅所有者が28%を占めています。その他は農村部の住民や学生、生徒の保護者、消費者などです。地域別に見ると、最も抗議件数が多いのが広東省で、次いで山東省と四川省となっています。
報告書はまた、抗議活動の3分の1が当局の監視や逮捕、暴力的な弾圧に直面したと指摘しています。
「フリーダム・ハウス」台北事務所の責任者ケビン・スレイテン(Kevin Slaten)氏は米政府系メディア「ラジオフリーアジア」の取材に対し、「収集されたデータから見ると、最近の中国の抗議活動は主に経済問題が原因で、4分の3が賃金未払いや不動産の建設中断、土地収用に関連している」と述べています。
米国在住の人権弁護士・呉紹平(ご・しょうへい)氏は、海外メディア「大紀元」の取材に対し「中国で抗議活動が急増している原因は3つあるが、最も直接的な要因は経済問題だ。そして、司法の不備や中国共産党の統治の失敗も大きな要因となっている」と分析しています。
深刻化する経済問題
呉紹平氏によると、抗議活動の急増は中国共産党の経済政策の失敗と密接に関連していることがデータから読み取れるといいます。すなわち、経済状況の悪化が抗議の増加を引き起こしているのです。
米国の経済学者である黄大衛氏は大紀元の取材で、現在の抗議活動は経済の深刻な構造的問題を反映していると述べました。具体的には、高い失業率、賃金未払い、工場の操業停止、建設中の不動産の放置、三角債務など、問題は山積しています。
では、広東省で抗議活動が多発する背景にはどのような要因があるのでしょうか。黄大衛氏は、広東省は中国経済の中心地であり、製造業と外需への依存度が非常に高いため、経済不況の影響を直接受けると説明しました。そして、すでに多くの民間企業が倒産に追い込まれていると述べました。
「広東省には外資企業が多く、注文の減少や撤退が相次ぐなか、大量の労働者が失業し、これまでの高所得層も収入が急激に減少している」と黄氏は指摘しました。
さらに、上海では高級住宅地に住む人々の抗議活動も発生しています。11月18日、静安区にあるマンション「蘇河湾一号」を購入した100人以上の住民が、住宅が建設途中で放置されていることに抗議し、抗議活動を行いましたが、警察の暴力的な鎮圧を受けました。
黄大衛氏は、このような高級住宅街の住民による抗議は象徴的な出来事であり、抗議参加者の社会階層が拡大していることを示していると指摘しました。経済後退の影響が中高所得層にまで及んでおり、中国の経済問題が社会の底辺層だけではなく、幅広い層に影響を与えていることを意味していると語りました。
法の支配と社会保障の欠如
抗議活動が急増するなか、なぜ中国当局は労働者の失業や賃金未払い問題を解決しないのでしょうか。人権派弁護士の呉紹平氏は、「中国には法の支配が欠如しているためだ」と指摘します。
11月7日、陝西省漢中市で鋼鉄メーカー「漢鋼集団」の工場労働者が政府官庁の前で賃金未払いの解消を求める活動を行いました。同社は労働者への賃金や社会保険料など、約5億元(約105億円)を滞納しているとされています。抗議に参加した人々は「法律によって保障されている正当な権利を守りたい。生活がかかっている」と訴えました。
呉氏は、「労働者がこのような状況に直面すると、法的手段で自分の権利を守るのは非常に困難だ。そのため、やむを得ず街頭で抗議している」と説明しました。
さらに呉氏は、「工場の労働者は中国社会の中で弱い立場に置かれており、司法プロセスを選んでも不利な結果に直面することが多い」と述べ、中国の非合理的な司法制度が労働者を街頭抗議に追いやっていると指摘しました。
呉氏は、「そもそも中国共産党は暴力的な手段で権力を奪った政権であり、暴力を否定しない体質がある。彼らは社会制度に問題があるとは認めず、司法を操り、矛先を国民に向けている」と批判しました。そのため、「民衆が街頭で抗議するのは理解できるし、むしろ自然な現象だ」と述べました。
中国共産党の統治の失敗
最近、中国では凶悪犯罪が相次いでいます。11月16日、無錫市の大学で刃物による加害事件が発生し、さらにその前には珠海のスポーツセンターで車両の暴走事件が起きました。これらの悲惨な事件は国内外に大きな衝撃を与えました。
11月22日には、3件の車両暴走事件が発生しました。広東省仏山市では車両が意図的に歩行者や車両に突っ込み、同じ日に遼寧省遼陽市と江蘇省揚州市でも車両による暴走事件が起きました。詳細は公表されず、当局は沈黙したままです。
中国共産党は政権の維持に心血を注ぐ傍ら、社会の統治には無関心です。その結果、深刻な犯罪が次々と発生し、多くの市民が犠牲となっています。
黄大衛氏は、「政府は腐敗しているため、これらの凶悪犯罪者を然るべき刑罰に処しない可能性もある。このような状況では、国民が自らの権利を守ろうとしても困難で、結果として街頭で抗議するしかない」と述べました。
呉紹平氏は、「抗議活動がさらに広がれば、それは中国共産党政権が崩壊しつつある証拠だ」と指摘しました。そして、「抗議が小規模から大規模へと発展し、全国規模の抗議へと繋がるのは時間の問題だ」との見解を示しました。
また、「民衆が目覚め、問題の根源が中国共産党にあると理解し始めれば、共産党政権の崩壊は遠くないだろう」と語りました。
黄大衛氏も「巣が崩れれば卵も無事ではない」という諺を引用し、「中国全体が不安定な時代に突入しつつある」との展望を示しました。
(翻訳・唐木 衛)