中国の電気自動車メーカー「極越(ジーユエ)」が、全国の従業員に突然解散を通告したことをきっかけに、従業員がCEOを取り囲み、給与や社会保険の支払いを求める事態が発生しました。この事件は瞬く間に世間の注目を集めています。
多くの人にとって、極越汽車の「崩壊」は全く予兆がなかったように映りました。11月30日、同社のCEOである夏一平(シャー・イーピン)氏は、SNSで「納車作業が忙しく、活気に満ちている」と投稿しました。また、12月9日には自身の微博(ウェイボー)アカウントで、極越汽車の革新的なデザインを強調するインタビュー動画を公開していました。しかし、そのわずか2日後、全社員向けのビデオ会議で夏氏が「会社は現在困難に直面しており、直ちに調整して『起業2.0フェーズ』に移行する必要がある」と内部文書を発表したという情報が広まりました。
具体的にリストラについての言及はありませんでしたが、複数の従業員がSNSで解雇されたことを明かしています。また、会社から提示された2つの選択肢についても明らかになりました。一つ目は、12月16日までに自主退職すれば「N+1」の補償を受け取れるものの、補償金の支払い時期については確定していないこと。二つ目は、停職扱いとなり、給与や社会保険、住宅積立金の支払いが停止されるという内容です。この知らせを受け、「極越汽車は倒産間近だ」という噂が急速に広がりました。
12月12日の午前中、100人以上の従業員が極越汽車の本社に集まり、CEOの夏一平氏との直接の対話を求めました。怒りに満ちた従業員たちは、夏氏に具体的な解決策を示すよう強く求め、一部の従業員は彼が資金を持ち逃げするのではないかと懸念し、「あなたの預金を出して社会保険を払ってくれ」と声を荒げました。
これに対し、夏氏は「問題解決のため最善を尽くしており、最後の瞬間まで諦めるつもりはない」と説明しましたが、従業員たちはその言葉を信用せず、国外逃亡を防ぐためにパスポートの提出を求めました。
会議室の背景には「中国のスマートカー史上、すべての極越の従業員の名前が刻まれる」と書かれたスローガンが掲げられていましたが、現在の状況では皮肉にしか見えません。
一部の従業員は、解雇の知らせがあまりにも突然だったと訴えています。陝西省で働く入社してわずか半月の従業員は取材に対し、「会社の解散に驚きと怒りを感じている。事前に何の兆候もなかった」と述べました。彼は、提示された補償案がネットで噂されている内容とほぼ一致していると認めつつ、「N+1」を選ぶつもりだが、正式な契約がまだ結ばれておらず、具体的な補償金額も不明だと語りました。
同様の状況は成都でも起きています。ある販売員は「解雇通知が突然やってきた」と述べ、「前日は普通に仕事をしていたのに、翌日午後になって突然『もう来なくていい』と言われた。説明は一切なく、ただ『給料が払えない』と言われただけだ」と語りました。この販売員は補償案にも期待しておらず、新しい仕事を探し始めたと言います。
報道によれば、極越汽車の苦境は販売台数の低迷、継続的な赤字、そして出資者による資金援助の停止が原因とされています。12月10日午後には、出資者が今後の投資を停止し、極越汽車は今週中に車両製造事業を終了するとの情報が社内で広まりました。SNS上では、女性ライブ配信者が配信中に会社の解散を知らされ、その場で号泣する動画が拡散されました。
会社の解散発表後、一部の従業員は店舗の備品を「補償」として持ち帰り始めました。成都のある店舗スタッフは「みんな持ち帰れるものを探している。小物やアロマ、トイレットペーパーまで持ち去られた。昨夜、試乗車まで誰かに持ち出された」と証言しています。
12月12日昼、極越汽車の従業員AさんはSNSに「入社3カ月で解散になった」と投稿しました。彼女は、10月から医療保険が未払いで、11月には社会保険と住宅積立金も未納、12月の給料も支払われず、「N+1」補償も期待できないと述べました。
Aさんのように、失業や社会保険の未納、さらに年末という就職が難しい時期に追い込まれる従業員は少なくありません。彼らは「本当に辛い年末だ」と肩を落としています。
特に痛ましい例として、ある販売員は入社後すぐに会社の車をローンで購入しましたが、数カ月後に会社が突然倒産。収入源を失っただけでなく、多額の借金を背負うことになり、生活に重い負担がのしかかっています。
公開情報によれば、極越汽車は2021年1月に百度と吉利が共同で設立した集度汽車が前身です。2023年10月、極越初の純電SUV「極越01」が発売され、価格は24.99万元から33.99万元でした。2024年9月には2台目の純電セダン「極越07」が発売され、期間限定で19.99万元から28.99万元で販売されました。公開データによれば、極越汽車は今年1月から11月までに約1.4万台を販売し、月平均販売台数は1300台程度でした。
中国の電気自動車市場はますます熾烈な競争状態にあります。11月25日、蔚来(NIO)の創業者でCEOの李斌(リ・ビン)氏は10周年記念文書で「スマート電動車業界は、最も激しく残酷な競争段階に突入した。生き残れるのはごくわずかな優れた企業だけだ」と述べました。極越汽車の現状は、まさにこの言葉を裏付けているかのようです。
(翻訳・吉原木子)