中国経済が持続的に低迷し、消費市場が冷え込む中、飲食業界では倒産の波が一層深刻化しており、中でもタピオカミルクティー店の倒産率が特に注目を集めています。公開されたデータによると、過去1年間で中国全国で約20万店のタピオカミルクティー店が閉店しており、数多くの起業家にとって悪夢となっています。
ここ数年の発展を振り返ると、新しいタイプのお茶市場はかつて絶頂期を迎えていました。2018年から、「喜茶」や「奈雪の茶」といった大手ブランドを代表とする新型茶飲料ブームが巻き起こり、見た目が美しい商品やSNS映えするパッケージ、さらには広範囲な市場ニーズによって、タピオカミルクティー市場は急速に成長しました。大量の資本が相次いで参入し、市場は非常に活気づきました。その結果、一部の食道街では10数店舗ものタピオカミルクティー店が同時に営業する光景も珍しくありませんでした。しかし、このような繁栄は長続きしませんでした。新型コロナウイルスの流行や経済の低迷、そして業界競争の激化が重なり、かつて「成長の象徴」とされた市場は、次第に「過酷な競争の舞台」へと変貌を遂げました。
「紅餐大データ」の統計によると、今年11月時点での1年間に全国で19.7万店ものタピオカミルクティー店が閉店しました。これには、かつて「1万店舗を目指す」と豪語していた大手ブランドや、多くのタピオカミルクティー業界に挑戦した一般の起業家も含まれています。その中でも、「圓真真」というネット人気のタピオカミルクティーブランドの軌跡は、業界の盛衰を象徴するものです。
2019年に設立された「圓真真」は、最盛期には300店舗を有し、年間売上が4,000万元(約8億円)にも達するなど注目を集めました。しかし、2022年上半期から大手ブランドの急速な拡張や激しい価格競争に直面し、「圓真真」の業績は急降下しました。最終的に資金繰りが行き詰まり、多数の店舗を閉店せざるを得なくなりました。そして2023年、最後の直営店が営業終了を迎えた際には、累計損失が1,000万元(約2億円)を超え、創業者の謝瑤氏は路上でタピオカミルクティーを販売するまでに追い込まれました。
謝瑤氏は自身の起業経験について、「最初の華々しい成功から、現在の困難な生活に至るまで、たった数年で全ての努力が泡のように消えてしまいました」と感慨深く語りました。彼女の動画のコメント欄には、怒りを露わにする加盟店オーナーの声も寄せられています。「あなたが1,000万元を損した一方で、私は20万元を失いました。それはあなたのブランドに加盟したからです。」
タピオカミルクティー業界の倒産の波は、独立起業家からフランチャイズ加盟者まで、すべての関係者に影響を及ぼしています。王さんは5年間の貯蓄を使い果たし、タピオカミルクティー店を開業しました。ロゴやパッケージのデザインから、原材料の調達まで、自らの手で全てをこなして1年以上経営しましたが、最終的には30万元(約600万円)の損失を出し、閉店を余儀なくされました。また、農産物業界から飲食業界に進出した李さんも、配合レシピや原材料の調達ルートを掌握すれば成功できると考えていましたが、立地選定や運営プロモーション、プラットフォームとの交渉でつまずきました。
自らブランドを立ち上げるのと比較して、一部の起業家はフランチャイズ加盟を選び、ブランドのリソースを利用してリスクを軽減しようとしました。しかし、この道もまた困難に満ちています。徐さんは地元であまり知名度のない三流タピオカミルクティーブランドに加盟し、40万元以上を投入しましたが、開業からわずか半年で夏休みの繁忙期に閉店しました。彼女はブランド本部の管理不足を非難し、「本部は最初、多くの支援を約束していましたが、実際には安売りプロモーションくらいしか行わず、ブランドプロモーションにも全く熱心ではありませんでした」と訴えています。
10年以上前に最初のタピオカミルクティー店を開業し、独自ブランドを複数立ち上げた陳さんもまた、華々しい成功から悲惨な結末を迎えた起業家の一人です。最盛期には1,000店舗以上のチェーン店を持つ業界の模範とされていましたが、コロナ禍の長期的なロックダウンにより、次々と店舗を閉鎖しました。今年初めにはついに事業を完全に終了せざるを得ませんでした。「この業界で人生初の成功を収めましたが、3年間のコロナ禍で十数年の蓄積を全て失い、1,300万元(約2億6千万円)の借金を抱えました」と彼は語ります。
一方、河南省で飲食業に従事する趙さんは、タピオカミルクティー業界の高い投資ハードルが多くの起業家にとって持続不可能な要因であると指摘しています。彼によると、地方都市の有名ブランドでは1店舗の投資額が通常65万元から80万元(約1,300万〜1,600万円)ですが、一部の大手ブランドでは150万元から200万元(約3,000万〜4,000万円)にも達するとのことです。このような高額なコストを前に、多くの一般人が数ヶ月しか持ちこたえられないのは無理もありません。
また、「クイックフランチャイズブランド」も業界のもう一つの罠となっています。低価格な加盟料で投資家を引き寄せながら、実際には支援を欠き、利益を生み出す意図がないブランドも少なくありません。北京の飲食会社経営者である張凱氏は、「これらのブランドはただ投資初心者のお金を搾り取ることだけが目的です。いわゆるサブブランドやコラボブランドへの加盟を促していますが、結果として数十万元の投資が無駄になります」と批判しています。
起業家たちの迷走や苦闘とは対照的に、中古設備の回収業者はタピオカミルクティー業界の低迷を直接的に目の当たりにしています。成都で回収業務を行う劉さんによれば、今年10月の連休後、地元ではタピオカミルクティー店の新たな倒産ラッシュが訪れ、一部のブランド加盟店が一日で集中的に閉店したとのことです。「連休中、一日で同じブランドの店舗5軒を見送ることになり、完全に衰退の象徴でした」と彼は語ります。仏山で同様の業務を行う秦さんも、多くの設備が購入から回収まで1ヶ月にも満たないことに驚いています。「ある店主は、1ヶ月前に全セットを購入したばかりでしたが、すぐに回収することになりました」と述べています。
これらの残酷な事例は、タピオカミルクティー業界がかつての「成長の象徴」から「過酷な競争の舞台」へと変わりつつあることを物語っています。業界競争が激化し、消費市場が変化する中、起業家や投資家はより慎重になる必要があります。無謀な拡張を避けるだけでなく、クイックフランチャイズブランドの罠にも警戒しなければなりません。将来、経済環境が改善されない限り、新たな突破口を見つけることが、タピオカミルクティー業界のみならず、飲食業界全体にとっての課題となるでしょう。
(翻訳・吉原木子)