中国経済の低迷が続く中、飲食業界は大規模な倒産の波に直面しています。最近、中国で有名なチェーンレストランブランドである上海天泰飲食サービス有限公司(以下「天泰」)が従業員からの賃金未払いの抗議にさらされ、全店舗閉店のニュースが市場の注目を集めています。
天泰は1998年に設立され、タイ料理を主力商品として本格的な味わいで消費者から高い評価を得てきました。今年1月時点で、天泰は全国で25店舗を展開しており、そのうち上海に17店舗、南京と杭州にそれぞれ3店舗、蘇州と常州に各1店舗がありました。しかし、ここ数カ月で天泰は経営難に陥り、大規模な店舗閉鎖だけでなく、従業員の賃金未払い、社会保険料の未払い、仕入れ先への支払い遅延など、さまざまな問題が次々と報じられました。
11月20日、上海の従業員の一人がメディアに語ったところによると、同社は300人以上の従業員に3カ月分の賃金を未払いしており、上海や南京など複数の店舗が影響を受けています。この従業員によれば、9月と10月分の約1万元の給与が未だ振り込まれておらず、現在では経営者が逃亡したため、従業員は政府に支援を求めるしかない状況だといいます。
また、この従業員は、9月以降、会社が給与を正常に支給しておらず、11月には一部の店舗で料理や油などの基本的な物資が不足し、正常な営業ができなくなったことを明かしました。南京景楓センター店の従業員もこれを裏付けており、11月以降、社会保険料が支払われていないため、来年8月の退職計画に直接影響が出ると語りました。「社会保険料が未払いになると、退職金に直接影響します」と彼女は訴えています。
中国メディア「新民晩報」の報道によると、天泰は当初、ブランドの一部店舗と従業員を維持するため、買収先との協力で経営を立て直そうと試みました。しかし、多方面の影響により、同社のキャッシュフローは完全に枯渇し、最終的に計画は破綻しました。11月28日、天泰は従業員に権限を委譲し、店舗の営業を従業員自身が行い、売上を賃金未払いの補填として充てることになりました。しかし、高額な家賃、仕入れ先への債務、消費者需要の減少に直面し、従業員も最終的には経営を続けることができず、上海の全店舗が閉鎖の危機に瀕しています。
元従業員の一人は振り返り、昨年から会社が従業員の社会保険料の支払いを停止し、現在までに11カ月分の未払いが累積していると語りました。会社は当時、キャッシュフローの問題を理由に挙げ、将来的に補填すると約束しましたが、多くの長期従業員は会社を信じて困難を乗り越えられると考えていました。しかし実際には、店舗が次々と閉鎖され、賃金が未払いとなり、会社側から一方的に契約を解除される結果に失望感を隠せません。
上海以外の店舗でも状況は厳しいです。ネット上で出回っている情報によると、杭州延安路嘉里センターにある天泰の店舗「Simply Thai」は、11月18日に突然閉店し、店舗は10日以上閉鎖されたままです。以前は店舗前に配置されていたテーブルや椅子も撤去されました。また、杭州にある他の2店舗のうち、大悦城店は今年5月にすでに営業を停止し、萧山万象匯店も休業状態にあると報じられています。
データによれば、今年6月末時点で、中国国内の飲食関連企業の新規登録取り消しおよび営業停止件数は105.6万件に達し、2023年の年間閉店数135.9万件を大幅に上回る見込みです。このデータを基に推測すると、2024年末までに200万件を超える飲食企業が閉店する可能性があります。
中間価格帯のレストランは特に厳しい状況に置かれています。客足の減少により、1人当たりの平均消費額が大幅に減少し、生き残りと破産の間で苦しい戦いを強いられています。中には、かつて繁盛していたレストランでさえも、閉業を余儀なくされるケースもあります。
広州で長年飲食店を経営している羅さんはインタビューで、「これまで何年も飲食業をやってきましたが、今年の閉店数は史上最多で、波のように次々と閉店が続いています」と述べました。彼によれば、このような状況にもかかわらず、街には依然として多くの飲食店が存在しています。「この現象の根本的な原因は、多くの人が仕事を失い、大学卒業後に職を見つけられない人々や、大企業のリストラに遭った人々が、手軽に始められる飲食業に参入しているためです」と指摘します。しかし実際には、飲食業は見た目ほど簡単ではなく、ベテランである彼自身も現在は慎重に事業を維持している状態だといいます。
江蘇省で16年間飲食業を営んできた王さんも同様に、「現在の飲食業界は混乱しており、投資には向いていない」と語ります。「売上は以前の半分程度にまで落ち込みましたが、人件費は削減できません。そのため、業績を回復させるのは非常に困難です」。彼女はまた、飲食業の精神的な負担についても触れ、「家賃だけで月に十数万元、人件費や光熱費を合わせると月々の支出が数十万元にもなります。朝起きるたびに、今日お客さんが来るかどうかを心配する日々が続いています」と語りました。
中指研究院のデータによると、今年上半期以降、中国全土の商業街で賃料が軒並み上昇しており、特に一・二線都市では50%以上の大幅な値上がりが見られます。業界関係者は、消費の低迷や内需の縮小だけでなく、市場の過剰供給も飲食業界の苦境を招いている要因だと指摘しています。激しい競争の中で、中小規模の飲食企業は「値引き戦争」に巻き込まれ、多くの企業が深刻な赤字に陥っています。
現在、飲食業界のテーマはもはや「利益を出す」ことではなく、「競争の中でいかにして生き残るか」に変わりつつあります。
(翻訳・吉原木子)