2025年1月7日にラスベガスで開催される予定の「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」への中国の出展者が、大規模にビザ発給を拒否されました。
また、中国当局は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」への参加を4年連続で拒否されています。
この2つの出来事は、米中貿易戦争の「2.0版」に直面する中、中国共産党(以下、中共)体制があらゆる面で挑戦を受けていることを示しています。
CESへの出席を巡り、中国企業が大規模なビザ拒否に直面
世界最大の技術見本市「CES」が2025年1月7日~10日(現地時間)に米国ネバダ州ラスベガスで開催される予定であり、開幕まで1カ月を切りました。しかし、出展招待状を持つ多くの中国企業の従業員が、米国のビザを取得できず、前例のない規模で発給を拒否されています。
CESとは1967年に初めて開催され、毎年1月上旬にラスベガスで開催される世界最大かつ最も影響力のある大規模な展示会で、もともとは家電をメインに紹介するイベントでした。しかし最近は家電に限らず、世界中のテクノロジーが出展する祭典のようになっています。
香港メディア「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が11月30日に報じたところによると、これまで4000社以上の企業が出展登録を済ませており、そのうち3割以上が中国企業です。
ビザの発給を拒否された北京在住のあるマーケティング担当者(女性)は同紙に対し、次のように述べました。「米国大使館でのビザ面接時に、面接官に『クライアント訪問とCESに参加するために渡米する』と伝えた。CESに参加することが明記された招待状も面接官に見せた」
また、業界内の同僚に話を聞くと、多くのハイテク企業も同様の問題に直面していることを知ったと彼女が述べています。「彼ら(同僚)は私に、『CESに参加すると言えば、90%の確率でビザが拒否される』と言った」
米中関係が緊張している中、米大統領に当選したトランプ氏は、中国からの全輸入品に10%の追加関税を課すと宣言し、米国製造業の保護を目的に中国企業の米国市場参入を制限すると約束しました。
トランプ氏は11月30日、中国を中核メンバーとする「BRICS(ブリックス)」諸国に対し、もし「脱ドル化」を進めるならば100%の関税を課すと警告しました。
ニューヨークを拠点とするビジネスコンサルティンググループ会社アイエムパクト(iMpact)の創設者であるクリス・ペレイラ氏は、CESのビザ拒否は航空便、貿易、政府間の対話など、米中間の交流が減少している傾向を反映していると述べました。
トランプ氏が指名した次期通商代表であるジェイミソン・グリア氏は、米中の戦略的デカップリングを主張し、「中国との戦略的デカップリングは短期的な痛みをもたらすかもしれない。しかし、何もしないことや、中国(中共)がもたらす脅威を過小評価することによる代償は、はるかに大きなものとなるだろう」と述べました。
CPTPPへの申請、4年連続の失敗
CPTPPは、モノの関税だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、金融サービス、電子商取引、国有企業の規律など、幅広い分野で21世紀型のルールを構築する経済連携協定です。
CPTPPの年次総会が11月28日にカナダのバンクーバーで閉幕し、中国の申請は承認されませんでした。中国の加盟申請が却下されたのは、2021年以来4年目となります。
WTO(世界貿易機関)のコミットメントとは異なり、CPTPPは加盟するためには下記9つの条件をすべて満たす必要があります。
労働組合が独立し、政府から切り離されていること。
国有企業への補助金や税制優遇措置を行わず、国有企業と民間企業の公平な競争環境を確保すること。
外資系企業のサーバーが国内に残ることを許可すること。
公務員の財産が国民に公開されること。
安定した透明性のある政治体制を有すること。
開放的かつ自由な経済環境を整えること。
長期的な市場の潜在価値を備えていること。
労働者の生活や労働条件が良好であること。
他の加盟国全体の同意を得ること。
一部の評論家は、これらの条項が中共体制を対象とした「特別設計の排除規定」であると指摘しています。
CPTPPに加盟する利点は明らかです。しかし、加盟には9つの基準に加えて、情報とデータの自由な流通、すなわちインターネットの開放も求められます。これが中共体制にとっては全方位的な挑戦となります。インターネットの開放は、言わば中共が政治改革を進めることを意味するからです。
CPTPPには十数カ国が加盟していますが、同じ社会主義陣営に属するベトナムは2018年にいち早く加盟しました。ベトナムは加盟にあたり、一連の法律を改正・新設し、CPTPPの要求を満たす努力を行いました。その結果、ベトナム経済はこの数年間で顕著に成長しています。
市場経済地位、中国が直面する西側の壁
中国当局がCPTPPへの加盟を急ぐ理由は、WTOが機能しなくなったためです。CPTPPに加盟できなければ、中国は国際貿易システムから完全に排除されてしまいます。米国は中国の最恵国待遇(MFN)を廃止する法案を立法中であり、ほとんどの西側諸国はすでに中国の市場経済地位を認めなくなっています。貿易戦争2.0が迫る中、中国の対外貿易は1978年の水準に逆戻りする可能性もあります。
日本への接近:移民政策の変更や貿易政策の修正
中共当局は最近、日本に対して友好的な姿勢を示しています。具体的には、日本人に対する一方的なビザ免除措置を講じたり、尖閣諸島付近の情報収集ブイを撤去したり、また福島原発処理水問題に関連する海産物の輸入停止も近いうちに解除される見込みです。
中共当局は貿易政策の見直しも進めています。2024年11月15日には、石油精製品、太陽光発電設備、電池、一部の非金属鉱物製品に対する輸出還付率が13%から9%に引き下げられました。他の規制分野も徐々に開放されています。例えば、今年初めには、外国資本が銀行や保険機関の株式を100%保有し、完全な支配権を持つことが許可されました。もちろん、これらの措置は本来2016年以前に実施されるべきものであり、中国がWTOに加盟した際にすでに約束していた内容です。
CPTPPの誕生と中共のWTO義務未履行
CPTPPが設立された背景には、中共がWTOでの約束を履行しなかったためであり、関係国が新たな枠組みを作らざるを得なかったからです。そのため、CPTPPは約束制ではなく基準達成制を採用しており、これは中共当局が約束を守らないことを防ぐ目的があります。
あるネットユーザーは、「現在、中共当局が宣伝している『米国による中国への経済封鎖、技術封鎖』というものは存在しない」と投稿しました。中共がWTOに加入した当初、各国に対等な市場の相互開放を約束し、自らを発展途上国と位置付け、バッファ期間を求めました。米国はその要求を認め、5年間のバッファ期間を与えました。しかし、その後4つの5年、つまり20年が経過しても、中共当局は約束を果たさずにきました。これにより、欧米諸国は、中共当局が初めから約束を守る意思がなかったのだと次第に理解するようになりました。欧米諸国の理屈は単純です。市場を開放し、約束を果たすなら、公平に競争しましょう。開放しないのなら、あなた(中共)はあなたのやり方で、私(欧米)は私のやり方で進めるというものです。
(翻訳・藍彧)