中国経済が悪化する中、小規模事業者は苦境に立たされています。特に製造業の困難は深刻です。最近、浙江省嘉興市で、1カ月の間に26軒のアパレル工場の経営者が相次いで夜逃げし、従業員の給与が未払いのまま、放置されているというニュースが広まり、社会的な注目を集めました。業界関係者は、現在アパレル業界が困難を極めており、企業が将来への希望を見出せない状況にあると語っています。
12月2日、許村鎮では3日間のうちに、26軒のアパレル工場の経営者が突如失踪し、多くの従業員が給与を受け取れないという報道がありました。この現象はたちまち世論の注目を浴びました。地元住民はSNSで、アパレル工場の状況が極めて悪化しており、多くの経営者が、昨日まで工場を稼働させていたにもかかわらず、翌日には突然失踪していると明かしました。また、工場の取引先も、多くの工場が倒産し、経営者が賃金を支払えずに夜逃げし、従業員が給料を受け取れず、精神的に追い詰められるケースが、相次いでいると指摘しています。
統計データによると、2023年上半期、中国国内で倒産したブランドの中で、アパレル業界が最多で、閉店数は1,831店舗に上ります。また、同期間中にアパレル関連の企業が、累計123.3万社廃業または営業許可を取り消され、前年比で41.5%増加しました。この一連のデータは、アパレル業界が未曽有の危機に直面していることを物語っています。
かつて浙江省嘉興市で、アパレル工場を経営していた邵さんは、小規模事業の運営コストが非常に高く、利益率が低いため、工場の維持がますます困難になっていると語ります。彼によれば、製造業はもともと利益が薄い上に、夏季と冬季には政府の節電要請で、操業停止を余儀なくされ、受注があっても納品できずに、損失が拡大するといいます。また、賃金支払いの時期が来るたびに経営者は頭を抱え、営業ローンに頼るしかない状況です。しかし、工場の賃料が年々上昇する中、未来への展望はまったく見えないと嘆きます。
邵さんはまた、多くの経営者が賃金を支払う余裕がなくなり、逃亡を選ぶ一方で、精神的なプレッシャーから、うつ病を患うケースも増えていると指摘します。従業員が賃金を受け取れない場合、工場内の完成品や半完成品を持ち帰り、それを加工して、少しでもお金に換えようとすることが多いといいます。一方で、工場の生産設備は労働局に押収され、競売にかけられる場合もありますが、それでも従業員の賃金を補填するには不十分です。さらに、一部の工場は長期間休業しており、従業員が賃金を求めて訪れた際には、既に工場が空になっていることも珍しくありません。
「W11(ダブルイレブン)11月11日」は例年、販売業者にとって業績を向上させる重要な機会とされています。しかし、今年の 「W11」が終わった直後、浙江省海寧市でアパレル工場の経営者が、夜逃げしたというニュースが広まりました。関係者によると、前夜には工場の従業員が残業して、製品を仕上げていたにもかかわらず、翌日には工場が封鎖され、従業員は何も知らされていなかったといいます。
杭州で長年アパレル工場を経営していた王さんも、過去3年間のコロナ対策による封鎖が、業界に壊滅的な打撃を与えたと語ります。彼の工場も昨年倒産し、現在は4,000万元の負債を抱え、新たな事業の方向性を模索しているといいます。「伝統的な産業は深刻な問題に直面しており、転換を迫られています」と彼は話します。
河南省のアパレル工場経営者である楊さんは、20年以上にわたり工場を経営し、ピーク時には年間売上高が8,000万元に達しました。しかし、近年は顧客の未払いが相次ぎ、資金繰りが悪化。今年、ついに工場を閉鎖せざるを得なくなり、億万長者から一転して、800万元の負債を抱える身となりました。彼女は「この業界で生き抜くのは、本当に厳しい」と嘆きます。
浙江省義烏市でアパレル加工を行っていた董さんは、外資系企業の工場移転が、業界全体に深刻な影響を与えたと指摘します。「以前は外資系企業の委託加工が主で、資金回収も迅速でした。しかし、コロナ禍以降、多くの外資がベトナムやマレーシアなど、東南アジア諸国に工場を移転しました。さらに米国の関税引き上げにより、中国製品の輸出が制限され、在庫が国内市場に集中しています」と語ります。
また、彼は一般消費者の所得が減少し、支出が控えめになったことで、アパレル製品の売れ行きが鈍り、資金繰りがさらに悪化していると述べます。「企業が運営を続けるために、自己資金を投じても、取引先からの未払いで資金が回収できず、従業員への給与支払いが困難になっています。その結果、経営者が逃亡する事態が続出しているのです」と彼は指摘します。
また、最近では企業主が全財産を持ち、家族とともに海外に移住したり、絶望の末に命を絶つケースも見られるようになりました。「こうした問題は年末を控えた現在、ますます深刻化しています。中国の庶民の生活はますます苦しく、情勢は極めて厳しいです」と彼は嘆きます。
上海で20年以上アパレル販売を手掛ける洪さんは、業界全体の状況を「壊滅的」と評します。「中国国内のブランドは国際市場で、ほとんど競争力がなく、オンライン販売も下り坂です。杭州のアパレルブランドの90%は、実質的にブランドとは呼べません」と語り、来年にはさらに多くのブランドが、市場から消える可能性が高いと指摘します。
嘉興市でのアパレル工場経営者の、相次ぐ夜逃げと未払い賃金の問題について、大紀元の記者が嘉興市労働局に問い合わせたところ、担当者は「具体的な状況は公式発表をご覧ください」と回答し、詳細についての説明は避けました。この曖昧な対応により、問題解決への見通しはさらに不透明になっています。
経済環境の悪化が続く中、アパレル業界の困難は、中国の小規模事業者全体が直面する問題の縮図にすぎません。企業の倒産、資金繰りの断絶、経営者の夜逃げなどの事態が相次ぎ、従業員の権利も保障されていません。内外の厳しい環境下で、業界の将来は極めて厳しい状況にあり、一般市民の生活もますます困難を極めています。
(翻訳・吉原木子)