中国広東省広州市増城区新塘鎮大敦村で12月1日夜、大規模な抗議活動が発生しました。その原因は、地元政府が村の周囲に料金所を設置し、賃貸住宅に住む村民から駐車料金を徴収したことが住民の不満を引き起こしたことにあります。怒りを爆発させた村民たちは料金所を破壊し、最終的に当局は料金徴収の中止を発表しました。
中国の元ベテラン記者である趙蘭鍵氏によると、12月1日午後11時から翌2日午前0時30分にかけて、新塘鎮で料金徴収をめぐる抗議が激化し、緊迫した事態が発生しました。新塘村では収入を増やすため、村の周囲の道路を封鎖し、料金所を設けて外部から来た賃貸住民に強制的に料金を課していました。この行為に対し、村民たちは激しい反対運動を展開し、囲いを取り壊し、料金所を破壊することで、地元政府の料金徴収を阻止しようとしました。現場では住民たちが自ら手で囲いを外したり、柱を蹴り倒したり、工具を使って障害物を破壊したりする姿が見られました。群衆の怒りは高まり、現場は混乱の極みに達しました。当局は最終的に大量の武装警察を派遣し、インターネットを遮断する措置を講じ、事件発生地域を外部から隔離しました。現在のところ、それ以降の情報は伝えられていません。
趙蘭鍵氏は、新塘鎮党委員会や大敦村の村支書(村の共産党支部書記)を含む地元の権力者たちが、「囲い込み料金徴収」を通じて独立王国を築こうとしていると指摘しました。彼らは、パンデミック中に蓄積された強制管理の経験を活用し、さらに多くの利益を搾取しようとしているとしています。この行為は、パンデミック封鎖の「成功モデル」を参考にしたものであり、囲い込み料金徴収を地方財政収入の重要な柱にしようとする試みです。このような手法は、習近平政権下で地方政府が強制的な手段を用いて社会的利益を得ることに慣れつつある傾向を反映していると述べました。
ネット上で出回っている動画には、夜の闇の中、大勢の村民が料金所付近に集まり、囲いが次々と取り外される様子が映っています。手で外す者、柱を蹴る者、工具を使って障害物を破壊する者などが見られ、現場からは歓声や野次が飛び交い、村民たちの地方政府の料金政策に対する強烈な抗議が伝わってきます。
情報筋によると、大敦村はデニム製品で知られる村で、ほとんどの村民が「盧」という姓を持ち、小規模な縫製工場で働いています。また、同村には外来人口が多く、特に四川省出身の住民が多いとのことです。この村での大規模な抗議は今回が初めてではなく、約10年前にも同様の事件が発生していたとのことです。
しかし、中国の主流メディアはこの件を報道しておらず、微博などのSNSでも関連情報は見られませんでした。海外に拡散された関連動画はネットユーザーの間で広く議論を呼びました。「ここ数年、ほぼすべての城中村(じょうちゅうそん、注1)で料金システムが設置され、村を出入りするたびに料金を払わされるようになった」という声や、「権利は自分たちで正々堂々と争い取るしかない。下手に乞うても得られない」といったコメントが寄せられました。
3年間にわたるパンデミックの「ゼロ・コロナ」政策は、地方経済にさらなる打撃を与えるとともに、地方政府に「囲い込み管理」の味を覚えさせました。土地財政収入の激減と地方債務の危機が進む中、各地で乱立する料金徴収や罰金が財政補填の手段として用いられるようになりました。統計によれば、2022年には全国の罰金収入が4283億元に達し、過去10年間で最高額を記録しました。今年10月には学者の劉成良氏が、この数字は地方政府が経済の下押し圧力に直面する中での「自助行為」を反映していると指摘しました。
公式データによると、現在、地方政府の非税収入には行政事業性料金、政府基金収入、罰金収入、国有資源の有償使用料などが含まれています。華裔経済学者の李恒青氏は、中国中央が非税収入の管理権限を段階的に地方に移譲しているのは、地方政府が自己救済を迫られているからだと述べています。中央財政からの支援が不足している状況下で、地方政府は市民から料金を徴収し、罰金を科すことで財政赤字を補填するしかありません。「こうした状況では、権力も反抗する力も持たない一般市民が最も簡単に搾取される対象となる」と彼は指摘しています。
今回の大敦村での抗議活動は、地方財政の困難と社会矛盾の深刻化を浮き彫りにしています。地方政府が料金徴収によって市民を圧迫する中で、市民の自発的な反抗が唯一の解決策となっています。しかし、ネット遮断や強制的な治安維持という当局の対応は、現在の統治モデルの深刻な問題を明らかにしています。この囲い込み料金徴収が引き起こした抗争は、地方統治の根本的な問題を示すとともに、市民の権利と政府の統治手法を再考するきっかけとなるでしょう。
注1:農村村落の都市化の過程で、耕地の全部または大部分が収用されたことにより、農民が住民になった後も元の村落に住み続け、形成されたコミュニティーのことです。
(翻訳・吉原木子)