山東省済南市平陰県がこのほど、9.24億元で低空経済に関する30年間の特許経営権を売却しました。この「土地を売る」から「空を売る」への転換は、中国地方政府の収入増加策として大きな議論を呼んでいます。一方で、航空物流業界では将来的に新たな「通行料」が課される可能性への懸念も広がっています。さらに、評論家の間では「当局が本来彼らに属さない空を売っている」という批判も出ています。

 山東省済南市公共資源取引センターの公式サイトは26日、平陰県が低空経済の30年分の特許経営権を初めて公開売却したことを発表しました。最終的に、この経営権は新設の国有独資会社が9.24億元で落札し、中国初の「空を売る」取引が正式に成立しました。

 第一財経によると、近年中国は低空経済の発展に注力しています。低空経済とは、高度1000メートル以下(必要に応じて3000メートルまで)の低高度空域を活用し、民間の有人航空機や無人機を輸送手段として、人や物の輸送やさまざまな作業を行うことで、関連分野の統合的な発展を促進する経済形態を指します。

 しかし、これまでは主に大都市や航空産業が発達した地域で展開されており、県レベルでの取り組みはほとんど見られませんでした。今回の平陰県による特許経営権の売却はその第一歩となりますが、具体的なプロジェクト内容について地方政府は明確な説明をしていません。

 今回落札したのは、11月5日に設立されたばかりの山東金宇通用航空有限公司です。同社の登録資本金は2億元で、平陰県財政局が全額出資しています。事業範囲は、通用航空サービス、飛行訓練、民間航空機操縦士の養成、都市配送など多岐にわたります。

 現在、平陰県には2つの空港があり、済南低空産業モデル基地および済南低空物流運営モデルセンターなどの低空産業関連施設が存在します。同県はまた約5平方キロの無人機物流試験区域を設定し、3つの物流離着陸拠点と7つの航路を初期的に整備しました。

 ある大手物流企業の関係者は、現時点では低空経済における空域利用に関する明確な規定がなく、企業は政府の許可を受けるだけで追加の空域使用料を支払う必要はないと述べています。しかし、今回の特許経営権売却により、将来的に新たな料金が課される可能性が懸念されています。専門家の間では、特許経営権が市場独占や価格の不透明化などの問題を引き起こす可能性に警鐘が鳴らされています。さらに、一部の企業は、この地域で無人機配送を行う際に料金を請求されることを恐れています。現在、浙江省など他の地域では、同様の配送活動において空域使用料は徴収されていません。

 中国新聞の報道によると、中国低空経済連盟の執行理事長である羅軍氏は、中国の低空経済はまだ2~3年のインフラ整備期間が必要であり、その後ようやく発展段階に入ると指摘しています。同氏は、中国の低空経済が2030年までに3兆元を突破し、その中でも無人機産業が最初に1兆元を超えると予測しています。

 低空経済連盟は、初の世界低空経済フォーラム年次会議で発表した「低空経済発展トレンドレポート」の中で、今後無人機が物流配送、農林業、災害救助、都市管理など幅広い分野で広く利用されると述べています。また、人工知能やクラウドネットワーク技術の進化に伴い、自動運転技術が普及し、空中交通ネットワークや電動垂直離着陸機(eVTOL)の商業化が進むと予測しています。

 ネット上で出回っているある記事には、「土地財政、水資源財政、山岳財政、そして今や『空の財政』へと至った。当局は人民に属するべき資源を次々と売却している。これらの収益は一部の地域の発展には役立つかもしれないが、住民の生活に大きな変化をもたらすわけではない」と鋭く批判しています。さらに、土地や湖、空といった資源は、その土地に住む人々に属するべきものであり、権力機関の「金儲けの道具」ではないとも強調しています。

 記事はまた、山東省南部に住む魚商人の体験を紹介しています。彼は、かつて家族が村の背後にある大きな貯水池で漁をして生計を立てていたと語ります。しかし、その貯水池は後に「コネ」を持つ個人企業に委託され、村民は生計を失いました。彼らは当初抵抗を試みましたが、企業側が雇った暴力的な用心棒によって抑え込まれました。村民たちは暴力を恐れ、闘争を諦めざるを得なくなり、最終的に故郷を離れることを余儀なくされました。

 この魚商人の体験は、多くの庶民が直面している生計の困難を浮き彫りにしています。同時に、当局が人民の資源を奪い、さらに彼らの生存権さえも剥奪しているという現実を物語っています。

(翻訳・吉原木子)