現在、中国の経済は悪化の一途をたどっています。不動産価格の大幅下落だけでなく、多くの企業が倒産し、一夜にして貧困に転落する中間層が増えています。

中産階級を追い詰める「自滅三点セット」

 これまで、中間層を揶揄する表現として「自滅三点セット」という言葉が話題になっています。それは、「住宅ローンがほぼ1000万元(約2億円)に達している」「配偶者が無職」「子どもがインターナショナルスクールに通っている」というものです。中国の中間層の約90%は小企業主や商売人であり、中国経済が徐々に低迷する中、これらの人々は次々と貧困に陥る危機に直面しています。

 北京の教育グループの元幹部が「港湾マミー」というネットアカウントで投稿し、友人のWさん(女性)の実体験をシェアしました。Wさんは彼女に泣きながら「もう耐えられない。夫が突然失業し、子どものインターナショナルスクールの学費も払えなくなった。中間層を追い詰める自滅三点セットが現実になるなんて」と語りました。

 「港湾マミー」によると、Wさんはもともと典型的な一線都市の中間層の母親で、自身は修士号を持ち、夫は金融業に従事しており、当初は二人とも収入が良く、家計も比較的余裕があり、安定していました。

 Wさん夫婦は娘を地元のインターナショナルスクールに通わせ、年間の学費は23万元(約500万円)でした。彼らは子どもがインターナショナルスクールで小学校と中学校を終え、高校2年生か3年生から海外で勉強する計画を立てており、総費用は約1000万元(約2億円)と見積もっていました。しかし、娘が小学校4年生の時に、Wさんの夫が突然失業し、家族のビジネスも低迷し始め、子どもの学費さえ払えなくなっています。

 最近、北京のあるブロガーが「40代中年が一夜にして貧困に陥る」というタイトルの投稿をしました。このブロガーは次のように嘆いています。

 「不動産や株式市場のせいで、一夜にして貧困に陥った人がどれほどいるのかわからない。しかし、もし運命にこのような試練があるとしたら、どのようにして自らを救い、損失を食い止めることができるのだろうか?」

企業倒産の連鎖 負債に苦しむ経営者たち

 中国の経済は、3年間のパンデミックによる封鎖を経て、さらに悪化しています。破産する企業が増え続け、2024年の経済状況は一段と厳しさを増しました。多くの経営者が巨額の負債を抱え、一夜にして貧困層に転落しています。

 最近、中国のSNS上で「新型貧困者」という新しい言葉が登場しました。「新型貧困者」とは、従来の貧困層とは異なり、一見すると中流階級や安定した生活を送っているように見える人々が、経済的な理由や社会的な変化によって突然貧困状態に陥る人々を指します。例えば、失業、住宅ローンの負担、教育費の増加などが要因となり、経済的に追い詰められるケースが挙げられます。この現象は、特に経済の不安定化や格差の拡大が進む現代社会で注目されています。

 河南省の女性経営者である沫沫(モーモー)さんは、企業倒産後に180万元(約3800万円)の負債を抱えています。彼女は11月8日に投稿した動画で次のように語っています。「今日、とても尊敬している兄貴分からメッセージを受けた。『これを読んでいる頃には、私はもうこの世にはいないかもしれない』と。彼はかつて飲食業をしていたが、ここ数年の経済悪化で巨額な借金を抱え、結局、この道を選んでしまった」

 「人の命は本当にとてもとても脆いものだと感じる。借金そのものは決して恐ろしいものではない。立ち直りさえすれば、必ず良くなっていくものだ。生きてさえいれば、自分を信じていれば、必ず逆転のチャンスはある」
別の女性ブロガー「香香(シャンシャン)負債前行」さんは、経営する会社が今年に破産し、自宅が抵当に取られたと明かしました。現在、彼女は370万元(約7800万円)の負債を抱えています。また、5歳の子どもを抱えながら、離婚の危機にも直面しており、毎月の家賃や養育費の支払いにも苦しんでおり、借金取りが毎日玄関先に押しかけて催促しているといいます。

 現在、倒産しているのは上記のような零細企業だけではなく、知名度の高い民間企業も含まれます。一部報道によると、中国メディアが取り上げた28の大手企業のうち、3分の1がすでに破産もしくは国有化されています。

不動産価格の崩壊 苦しむ購入者たち

 深セン不動産情報サイトの記事によると、過去20年間は中国の不動産市場の黄金時代でした。特に2015年後半から不動産価格の上昇が約6年間も続き、多くの人が一攫千金(いっかくせんきん)を目指して市場に参入しました。

 しかし、不動産価格が急騰することに伴い、中国当局は不動産市場への規制を強化し、購入制限や売却制限などの政策を次々と導入しました。その後、3年間のコロナのパンデミックや中国国内や世界の経済環境の悪化により状況が一変しました。

 近年、多くの不動産企業が経営破綻し、市場の信頼が大きく損なわれたことで、不動産価格は急落し始め、下落率は40%、50%に達しました。その結果、高値で物件を購入した多くの人々が窮地に立たされています。

 「不動産インサイダー(中国語:地産内参)」のデータによると、過去20年間で中国国内では合計2億2500万戸の住宅が販売され、そのうち1億8400万戸が2009年以降に販売されたものです。2015年から2021年にかけて、1億1700万戸の住宅が不動産価格のピーク時に販売されました。つまり、ここ数年間、住宅を購入した家庭の約半数が、高い価格、高い頭金、高い住宅ローン金利で住宅購入を選択し、巨額の住宅ローンを抱えています。

 ところが、近年では多くの住宅の価格が2016年当時の水準まで下落し、さらには2009年当時の価格に戻るケースもあり、その下落幅は予想外のもので、購入者たちは頭金だけでなく、数年間の利息も失い、大きな苦しみを味わっています。

中国当局の刺激策に民間の怒り

 中国当局は一連の消費刺激策を打ち出しましたが、その効果は芳しくなく、国民から批判を浴びています。

 最近、中国のSNSであるアニメ動画が話題になっています。その中で老人が怒りを込めてこう言う場面が描かれています。「専門家は旅行すれば消費を刺激できると言うけど、どうやって刺激するんだ?私の少ないお金じゃ、市内から郊外に行く途中で使い果たしてしまう。高速道路にさえ乗れないんだよ!」

 多くのネットユーザーが不満を漏らしています。
「お金があれば勝手に使うよ。刺激なんて必要ない」
「私は弱者だけど、愚か者じゃない。お金を使う方法はたくさん知っているが、稼ぐ方法はほとんどないんだ。毎日消費を刺激しろだの何だのと言うけど、どうして収入を刺激しようとしないんだ?私に足りないのは『刺激』じゃなくて『お金』だよ!」

 台湾の政府系シンクタンク「国防安全研究院」の沈明室・国家安全研究所長は、「中国当局は経済を救うための手段が尽きており、不動産問題を解決することも、地方政府の財政を改善することもできない。株式市場を刺激する措置は、むしろ多くの人々を困難な状況に追い込んでいる」と指摘しました。彼は「今回の救済措置は一瞬の花火のようなもので、見た目は華やかだが、すぐに暗闇に堕ちてしまう。国内外の評価も芳しくない」と述べました。

 経済評論家の王赫(おうかく)氏は、オピニオン記事の中で、中国の消費が振るわない三つの理由を指摘しました。それは、中国国民の可処分所得がGDPに占める割合が低いこと、国民の負債率が急増していること(負債が多すぎる)、そして中国の貧富の差が大きすぎて多くの人が貧困層に属していることです。

(翻訳・藍彧)