中国では電気自動車の小米(シャオミ)SU7の「自動駐車機能」が14日正午ごろから15日未明にかけて故障し、車両が暴走して駐車場の柱などに衝突する事故が、少なくとも70件発生しました。小米社は「システムの不具合が原因」と説明しています。貴州日報系のネットメディアである天眼新聞が伝えました。

 また、ネットユーザーによりますと、同じ日に発生したこれらの事故で、すでに200名以上の車の所有者がさまざまな程度で衝突や擦り傷を負ったと報告しました。

 自動駐車機能とは、自動バレーパーキングシステムとも呼ばれ、運転者が駐車スぺースの近くまで車を運転すると、自動駐車機能をオンにするだけで、車が目標の駐車スペースを認識し、自動的に駐車できる仕組みです。

孫さんのケース

 北京市内に住む孫鹏(スンポン、男性)さんはいつものように車で家に帰り、11月14日午後6時過ぎに建物の地下車庫に入り、自動駐車機能のスイッチを入れました。最初は順調に移動していましたが、駐車位置に移動してから、車の後部が突然駐車位置の隣にある柱に衝突しました。

 孫さんによりますと、衝突前に車の後方センサーは障害物を認識せず、衝突防止の警報音も鳴らなかったそうです。柱に衝突した後も自動駐車機能が作動し続け、車両は加速を続けたため、車の損傷がさらにひどくなりました。結局、修理代は1万2000元(約25万円)もかかりました。

 孫さんが小米SU7を購入したのは今年の4月で、帰宅の際にはいつも自動駐車機能を使っていたため、これまで同じ場所で自動駐車機能を100回ほど使っていましたが、不具合が生じたことはなかったそうです。

卓さんのケース

 四川省成都市に住む卓卓(ズゥズゥ、女性)さんは11月14日、小米SU7を引き取って4日目で、まだシステムをアップグレードする時間がなく、車はまだ古いバージョンの状態でした。同日の午後3時ごろ、やはり自動駐車機能を使いました。車両後方を表示するモニターを見ていたところ、駐車場の柱が見えましたが、そのまま衝突したとのことです。卓さんは、「衝突防止の警報音も鳴っておらず、とっさにブレーキを踏む判断ができなかった」と語りました。卓さんが乗っていた小米SU7は、車両最後部に目立つ傷ができ、テールランプが粉砕されました。

小米側の対応、車主の不満を解消できず

 孫さんが11月15日の午前、車をディーラーに持ち込み、データ検査と分析を依頼しました。その日のうちに小米のカスタマーサービスから孫さんに連絡があり、担当者は「システムのバグ(多くはソフトウエア関係の不具合を指す)により、自動駐車機能に異常が発生した」と認め、小米車側がすべての修理費用を負担し、修理期間中は同社の「小米ポイント」を1日当たり1500ポイント贈呈すると提案しました。現金150元(約3200円)に相当するポイントです。

 孫さんはこの提案に納得していません。大きな理由は、衝突の損傷が深刻だったうえ、小米SU7は一体化構造の車体を採用しているため、一部の部品は修理ができても交換できず、中古車市場に売り出した場合には、事故車の引き取り価格は明らかに低くなってしまうからです。

 孫さんがSNSを利用して、同様の事故に遭遇した人に対する補償提案を調べたところ、他の人が受けた補償提案も同じでしたが、少数ながら他の車を傷つけた場合には補償提案の水準が高く、1万ポイントを受け取った人もいたそうです。

 一部の車の所有者は小米側に8000元(約17万円)相当のポイント補償を求め、車両の価値下落を埋め合わせるよう提案しました。

 しかし、11月19日に小米が提示した最終的な対応策は車の所有者たちの期待には応えられませんでした。小米側は修理費用の全額負担と移動補助の提供以外には、車両損害に対する追加補償を行わない方針を示しました。
車の所有者たちは、「小米の対応が十分とは言えない」と述べ、ブランドへの信頼を回復するためにはさらなる対応が求められる状況です。

 一部の車の所有者はインタビューで率直に次のように語っています。「私はこれまで小米のブランドと技術を信頼してきたからこそ、小米SU7を購入した。しかし、今回の事故を通じて、小米の製品品質管理や技術の安定性に疑問を抱かざるを得なくなった」

 その後、SNSでは「小米SU7事故車の所有者グループ」が出現しました。北京市内で事故に遭遇した孫さんも、このグループに加わりました。このグループに加わった人からの事故の説明を総合すると、14日正午から11月15日未明にかけて70人以上が同様の事故に遭遇し、自動駐車機能の異常が原因で衝突や擦り傷の被害を受けたと報告しています。

同日に数百件の小米SU7自動駐車事故が発生

 あるネットユーザーが明らかにしたところによると、同じ日に全国で数百件の小米SU7自動駐車事故が発生し、インスタントメッセンジャー(IM)ソフトQQの被害者グループには200人以上が参加しており、さらに微信(WeChat)の被害者グループも存在しています。

 中国最大のQ&Aサイト「知乎(ズーフー)」のユーザー「現実理想主義者」は投稿で、11月14日に小米SU7が自動駐車に関するOTAアップデートを一斉に配信した可能性があり、そのアップデート後に多くの車の所有者が自動駐車システムの初歩的な不具合を報告し始めたと推測しています。

 OTAは、無線通信を経由してデータを送受信することを指し、ソフトウェアの更新などを行う際にこのOTA技術が広く利用されています。スマートフォンのOSやアプリの更新をイメージするとわかりやすいでしょう。

小米SU7事故報告が続出、緊急OTA更新で対応も疑問の声

 微博(ウェイボー)、抖音(ティックトック)、小紅書(シャオホンシュー)など各種SNSでは、小米SU7の車の所有者が自動駐車機能の故障について相次いで投稿し、それは11月15日未明まで続きました。類似の事故が増える中で、車の所有者たちは被害者グループを作り、データを集め始めました。その後、小米はSU7向けにOTAを緊急更新し、自動駐車機能の不具合を修正しました。

 あるネットユーザーは、「小米の自動運転および駐車アルゴリズムが十分なテストを行わずにOTAで展開されたのは、小米の研究開発やテストプロセスに深刻な欠陥があることを露呈している」と指摘し、「小米SU7のこれまでの納車台数や保有台数がまだそれほど多くはなく、多くの所有者が駐車機能を日常的に使用しているわけではない。それでも半日のうちに数百人の所有者が不具合を報告したことは非常に深刻な問題である」と述べました。

 一部のネットユーザーからは次のような皮肉交じりのコメントも寄せられています。
「今回は自動駐車のシステムエラーで済んだけど、もし自動運転システムだったら大惨事だ」
「これほど広範囲の故障は、自動車業界の百年の歴史の中でも記録的かもしれない」
「小米のスマホでもエラーが多いのに、以前から車を作ると言っていた時、友達と一緒に『そのうち車のシステムにもたくさんのエラーが出て、事故でも起こさないか心配だ』と話していた。そして、その心配が現実になってしまった」

 多くのネットユーザーの小米の製品開発や安全性への不信感が拡大しているようです。

(翻訳・藍彧)