中国の経済専門紙「経済参考報」の2名の記者が最近、大手中央企業が手掛ける高速鉄道プロジェクトを調査中に襲撃される事件が発生しました。このプロジェクトは国有企業である中国鉄路工程集団傘下の安徽合新鉄路工程公司(中鉄七局集団)が請け負ったものです。「質の悪いニセモノの材料が使用されている」と深刻な安全上の問題が指摘されています。
おから工事の実態、高速鉄道建設現場で安全問題発覚
中国国営新華社通信傘下の「経済参考報」の報道によると、最近、同紙の記者2人(王文志氏、程子龍氏)が先月12日、合新高速鉄道(合肥-新沂)の建設現場で調査を行い、複数の施工業者がコスト削減のために粗悪な材料を使用していた事実を明らかにしました。
これらの業者は、鉄道業界の標準を満たさない「再生ゴムの模造品」を正規品「EPDM(エチレンプロピレンゴム)弾性クッション層」とすり替えて違法に使用していました。これらの模造品の性能は設計基準を大きく下回っており、重大な安全上の問題があるとされています。
鉄道建設では、軌道板は路盤や橋梁の下地板に敷設されます。この際、下地板と軌道板を接続する限界溝装置が用いられますが、その重要な材料の1つが弾性クッション層であり、その強靭性によって、列車の高速走行時の衝撃を吸収し、軌道板のずれを防ぐ役割を果たします。
「経済参考報」の記者が合新高速鉄道の複数の工事現場を極秘に調査したところ、限界溝装置内に敷設された弾性クッション層に、「少し傷がついたらすぐにちぎれ」、「手で軽く引っ張るだけで破れる」という異常な現象が確認されました。
業界関係者が明らかにしたところによると、記者が発見したこうした劣化の激しい弾性クッション層の原材料は、鉄道業界標準で定められている「EPDMゴム」ではなく、「再生ゴム」で作られていることが分かりました。すり替えられたゴム弾性クッション層は深刻な規格外製品であり、列車の「高負荷・高速運行」に伴う衝撃に全く耐えられないと指摘されています。
「再生ゴム」で製造された模造品は、「EPDM弾性クッション層」と比べて価格差は非常に大きく、「再生ゴム」製の模造品の価格は、正規品のおよそ4分の1程度です。
施工(せこう)現場で使用されている弾性クッション層に「粗悪品の使用」などの問題があることについて、2名の記者が複数の施工業者を取材したが、関係者の多くは「手抜き工事や材料の流用は存在しない」と否定しています。
「経済参考報」の2名の記者、王文志氏と程子龍氏が、11月14日に安徽省合新高速鉄道の中鉄七局集団の施工現場で取材中に、複数の人物から暴行を受け、携帯電話を奪われ、王氏の右手が負傷したと、湖南省の地元紙「瀟湘晨報」や湖北省の政府系メディア・極目新聞が報じました。
事件が明るみに出た後、中鉄七局集団の安全管理通報窓口の担当者である于氏は、取材メディアへの攻撃に対し、「少しもめたかもしれない」と述べ、暴行の責任を農民工(出稼ぎ労働者)に転嫁し、「おそらく現場の農民工がやったのだろう」と主張しました。
中鉄七局集団は11月14日に声明を発表し、メディアで報じられた合新鉄道建設材料の「粗悪品使用」について、現場調査のための作業グループを派遣したと伝えました。
このニュースがメディアによって暴露された後、ネット上で話題となり、多くのネットユーザーがコメントを投稿しました。
「新華社通信の記者は、官製の者なのに、それでも殴られたのか」
「問題があればすぐに出稼ぎ労働者や警備員のせいにする!上層幹部には何の関係もない?」
「工事現場の農民工(出稼ぎ労働者)が自分たちだけで手を出すことはない。その背後には農民工のリーダーや、リーダーの背後の会社など、さらにそれらの上にバックの黙認や支持がなければ、絶対に手は出さないだろう」
「どれも国営企業だから、背景が強大で、どっちもどっちだ」
中には、一部の五毛(中国共産党配下のネット世論誘導者)が中鉄七局集団を擁護し、「高速鉄道は安全だ」「政府が徹底的に調査を行うと信じている」とコメントしています。
実際、中国の高速鉄道建設プロジェクトにおいて「手抜き工事」が問題視されるのはこれが初めてではありません。
梅大高速道路崩落事故、手抜き工事の責任は誰にあるのか?
今年5月1日の午前2時ごろ、広東省梅州市の梅大高速道路で、道路が崩落する事故が発生しました。中国当局の公式発表によると、事故により少なくとも48人が死亡し、30人以上が負傷したとのことです。
ある建設技師(建築施工管理技士)は、1キロメートルあたり1億元(約22億円)のコストがかかっているはずの高速道路で、路面の下層の砕石基盤の厚さがわずか20センチメートルしかなく、コンクリート内には鉄筋が1本も見当たらず、2本の道路が交差する中央の縦方向の継ぎ目にも、引っ張り鉄筋が1本も見当たらないことを指摘しました。
同建設技師はまた、施工がどのように行われたのか、監理部門はどのように品質を監督していたのか、また、質量監督機関は工程全体の適法性をどう確認していたのかについて疑問を呈しています。
カナダ在住の構造工学専門家、竹学葉(ちく・がくよう)氏は、事故に関連する情報を調査した結果、5月3日に海外の中国語メディアに対して「(梅州高速道路の崩落事故は)施工の品質問題だ」と述べ、「土木工事は非常に利益が大きく、高速道路の建設には莫大な投資が必要だが、その多くが地中に消えてしまう。人工の地質調査から最終的な施工監視、検収に至るまで、すべての工程が多額の費用を要し、その中には非常に大きな不正な利益が含まれている」と指摘しました。
山東省の萊栄高速鉄道で手抜き工事が報告される
経済参考報が2023年7月20日付で報じたところによりますと、問題となっているのは山東省青島市の萊西市と威海市の栄成市を結ぶ萊栄高速鉄道です。この路線は全長193キロメートル、投資総額は297億元(約6200億円)で、設計最高時速は350キロメートルとなっています。
報道によりますと、同路線の3区間を担当する下請け会社、河南省三捷実業有限公司が、元受け会社である中国建築第八工程局有限公司(中建八局)に手抜き工事があったと告発しました。三捷実業有限公司の責任者である肖衛国(シャオ・ウェイグオ)氏によりますと、一部区間の路盤工事で設計基準に満たない長さのスクリュー杭が使用された箇所が90%以上に上るとのことです。
経済参考報の記者が専門家の協力を得て、問題の路盤部分に関する地質調査図、設計図、工事確認書などの関連資料を調査したところ、肖氏の指摘内容と「基本的に一致」していたと報じられています。
肖氏によりますと、中国建築第八工程局有限公司の担当者から不正行為の指示があり、同社がこれに反発すると「できるならやれ、できないなら去れ」と言われ、結果的に施工から外されたとのことです。同路線の施工を担当した他の関係者からも、同様の問題があったという証言が出ています。
専門家の間では、この問題が大事故につながる可能性があるとして、安全性への懸念の声が上がっています。
品質の問題は相次いで指摘されているにもかかわらず、中建八局は「全国品質賞」や「全国優秀施工企業」「中国の信用経営企業」などの賞を次々と受賞しています。
(翻訳・藍彧)