中国の失業問題が深刻化し、社会からの多くの関心と議論を呼んでいます。TikTok(ティックトック)、快手(クアイショウ)、小紅書(シャオホンシュー)などのソーシャルメディア・プラットフォームでは、「失業」に関する話題が次々と登場しています。多くのユーザーがこれらのプラットフォームで自分の経験を共有しており、生活の苦しさを訴える声や職場の不公正を嘆く声、さらには無力感や怒りを表現する声も多く見受けられます。

 ラジオ・フリー・アジアの報道によると、中国経済の成長が鈍化する中、多くの若者がティックトック、WeChat(微信、ウィーチャット)、快手、小紅書といったSNSで、リストラされたことや仕事が見つからないことなどの不満を漏らしています。

 ある失業中の女性がティックトックに動画を投稿し、「失業した私はもう生きていけないかもしれない。今日、離職手続きを終えたばかりで、これが最終出勤日になった。2024年には多くの大企業でリストラが行われると言われていたが、まさか自分もその一員になるとは思わなかった。今朝も愉快な気持ちで出勤したのに、午後になって上司が緊急会議を開き、今日で仕事が終わりだと皆に告げた」と悲痛な心境を語りました。

 30代のこの女性はまた、仕事を見つけることがいかに難しいかを述べています。「同僚の女性がちょうど二人目の子どもを産んだばかりで、みんな仕事探しの大変さを語り合っている。自分の住宅ローン、水道光熱費、食費や日常生活費、分割払いのクレジットカードの支払いなど、毎月の固定費が1万元以上かかっていることを考えると、突然の失業には本当に不意を突かれる」

IT企業で3カ月ごとのリストラが常態化

 中国のトップハイテク企業であるアリババとテンセントは2024年に大規模な人員削減を行っています。アリババは第1四半期に14369人をリストラし、第2四半期にも6729人を削減し、年初からのリストラ総人数は2万人を超えました。一方、テンセントは2022年から断続的にリストラを進め、2024年までに全社員の約10%が削減され、複数の部門に影響が及んでいます。

 IT業界で働くあるネットユーザー(女性)は、コロナ禍で、再就職が困難になっていると語りました。「北京に来て5年になるが、いまだに家も車も(北京の)戸籍もない。でも、このような状況では、家も車も持っていないことがむしろ幸いである。インターネット企業で運営を担当していた。今のインターネット市場は不況で、会社はほぼ3カ月ごとに大規模なリストラを実施している。過去3年間、深夜2〜3時までの残業が常態化しており、出産の前日でさえ仕事に追われていた。在宅勤務中も、リストラについては家族に一切話していなかった」

 今年、中国の大学新卒者数は1170万人に達しました。複数の情報筋によると、今年の大卒者の実際の就職率は約5割で、昨年よりも低下しています。多くの企業がまず古い職員からリストラを始めている状況です。

 ネットユーザーの王海宏(おうかいこう、男性)さんは次のように語っています。「私は今年で50歳になる。27年前に江蘇省から上海に出稼ぎにきて、長年の努力の末にようやくマイホームと車を手に入れ、家庭も築いた。中年になれば、安定した職業人生を歩めると思っていた」

 しかし、王海宏さんのその願いは、会社の突然のリストラであっけなく崩れ、彼もまたリストラの波に飲み込まれることとなりました。「リストラが本当に自分の身に降りかかるとは思わなかった。将来への不安はまるで大きな山のようで、どう対処すべきかわからない」と彼は語っています。

 中国メディアの報道によると、多くの企業が35歳以上の人材を明確に採用拒否しており、この年齢層の求職者はジレンマに陥っています。一方では、彼らは豊富な職務経験と熟練したスキルを持っていますが、他方では年齢を理由に除外され、公平な競争の機会を得られない状況にあります。

リストラ後も働くふりをする若者たち

 WeChat動画では、失業中の多くの若者が、家族に知られないようにとスターバックスや図書館で「時間をつぶしている」と率直に話しています。

 武漢大学を卒業したある若者は、毎日他の多くの若者と同じように図書館に座り、何もせずに過ごしていると語ります。「前の仕事でリストラされてからもう4カ月以上がたつが、ずっと出勤を装っている。毎朝7時過ぎに起きて、8時には図書館に着くのだが、その時間にはすでに席を見つけるのが難しい。図書館には、私と同じように出勤を装っている人がたくさんいるとは思わないだろう。私は出勤を装うことを現実逃避だとは思っていない。むしろ、仕事に行くときと同じ生活状態に保つためである」

 ネット上では、中国の都市部で現れる「新型のホームレス」と呼ばれる現象について話題となっています。これは都市部に増えつつある、IT業界やハイテク産業で失業した人々のことで、彼らは「体面」を保つために図書館で日々を過ごし、貯蓄で現状を維持しつつ新たな仕事を見つけるまでの生活を送っていると指摘されています。

失業問題の深刻化

 ベテラン経済評論家の蔡慎坤(さいしんこん)氏は、ラジオ・フリー・アジアとのインタビューで、現在の中国の失業問題はまだ最悪の段階に達していないと指摘しています。「失業問題はますます深刻化するだろう。現在、ティックトック、快手、小紅書などのプラットフォームで多くの人が泣きながら生活の苦境を訴えている。もちろん、トラフィックを稼ぐためにやっている人もいるが、その大部分は実際の状況を反映している。これは中国の失業状況の本当の現状である」。

 失業者の多さは中国の労働市場の窮状を示しているだけでなく、社会全体の失業問題に対する懸念と憂慮を喚起していると蔡氏が考えています。また、現状で政府が資金を投入しても経済の刺激や企業救済にはつながらないとし、「企業は今、投資をしたがらず、有効な投資先もない。民間企業はどのようにして発展していくのか?」と問いかけています。

 8月、中国の若年層失業率は18.8%に達し、今年の新高を記録しました。9月25日、新華社通信の報道によると、9月25日に中国共産党中央委員会と国務院が共同で「雇用を優先し、質の高い十分な雇用を促進する戦略の実施に関する中国共産党中央委員会・国務院の意見」(以下「意見」と称する)を発表しました。

 時事評論家の鄭旭光(ていきょくこう)氏は、「意見」には「大規模な失業リスクを回避することをボトムラインとする」という比較的新しい表現があり、つまり「大規模な失業リスクがある」という意味だと指摘しました。

 11月1日付けの中国共産党中央委員会機関紙『求是』誌第21号は、党の最高指導者である習近平氏の「高品質で十分な雇用を促進する」という記事を発表しました。習近平氏は「雇用は最も基本的な民生である」と述べました。党首がわざわざ雇用問題について言及したということは、現在中国の失業者がすでにかなり多く、さらには政権の安定を脅かす可能性すらあることを示唆しています。

(翻訳・藍彧)