今年6月から、河南省鄭州市の大学生たちが、夜間にシェアサイクルを利用して、開封市へ向かう活動が、次々と見られるようになりました。当初は参加者が4人に過ぎませんでしたが、次第に数千人に増え、11月8日夜には20万人以上に達し、数十キロにわたる行列が形成されました。この規模は当局の予想を大幅に超えており、中国当局は8日夜、夜間サイクリングの全面禁止を緊急に指示しました。河南省内の大学だけでなく、他の省の大学も封鎖されました。
もともと観光促進と見なされていた、大学生の夜間サイクリング活動は、急速に拡大して当局の神経を刺激し、「政治運動」として即座に定義され、緊急に中止されました。一部の分析家は、この夜間サイクリングは自発的な活動であり、これが群衆の集まりを恐れる当局の敏感な神経に触れたと考えています。
この状況について、カナダ在住の時事評論家・公子沈氏は、鄭州の夜間サイクリングが、このような大規模な活動に発展したことに、非常に驚いたと述べています。「共産党にとって、最も恐れるのはあらゆる自発的な運動です。香港の反送中運動と同様に、何百万人もの人々が、組織に属さない自発的な行動で街頭に出ました」と述べています。
米国在住の時事評論家・唐靖遠氏は、この運動が表面的には大学生による自発的な観光ブームに過ぎない一方、共産党当局が大いに恐れ、迅速に封殺した根本的な理由は、大規模な人々の集会という最も敏感な神経に触れたためであると指摘しています。かつて、法輪功の学習者たちが集団で活動を行う際にも、当局による厳しい弾圧が行われましたが、その理由も同じだと述べています。
唐靖遠氏はさらに、「この事件の背景には、人々が厳格な管理下に置かれ、何事も敏感とされて、封殺される社会的な空気への不満が映し出されています。ただ、この不満が観光という形で若者たちに投影されているため、夜間サイクリング隊の中で、『自由』の旗が掲げられる理由となっています。夜間サイクリング自体が、統制の枠を超える巨大な象徴となり、参加者間での暗黙の了解を形成しているのです」と語っています。
公子沈氏は、夜間サイクリングが数万人規模に達してから、初めて当局が阻止に動いたことについて、当局の統制力が低下していることを示していると考えています。
「中国の大学生の生活は中学生のように、クラス担任やカウンセラー、寮の管理者に管理されており、軍隊ではないにしても少なくとも大人として扱われていません。さらに、中国本土では激しい内部競争が進み、失業率が高いため、大学生たちは将来に希望を見出せず、単純に発散の方法を必要としているに過ぎません。必ずしも政治的な訴求があるわけではないのです」と述べています。
元弁護士で、民阵カナダ主席の頼建平氏は、この出来事は一部の人のごく普通の日常行動がきっかけとなり、それを学生たちが模倣したことで、意図せず大きな結果を生んだと指摘しています。
彼はこう述べています。「学生たちは普段から抑圧された環境にあり、時には将来に対する迷いも抱えています。そんな中、このサイクリング活動を通じて、溜まったエネルギーを発散できると感じた人が現れ、それに続くことで一体感や解放感を得られると感じたのでしょう。青春特有の衝動もあり、この活動は次第に人を引きつける模倣行動として広がっていきました。大半の学生は純粋に参加しています。そのため、様々なスローガンや標語が掲げられていますが、政治的なものや抗議・デモではありません。ただ、一部の人は何らかの感情を表現しています。こうした動きを、中国政府は非常に恐れています。なぜなら、この活動が反政府デモに発展する可能性を警戒しているからです。」
中華経済研究院の、大陸経済研究所の助理研究員・王国臣氏は、中国当局が宣伝している「民族主義」は両刃の剣であり、民族主義を通じて愛国心を鼓舞したいと考えている一方、民族主義が高まりすぎると、北京当局にとって不安の種となると指摘しています。この現象は、国内の失業率の高さが「学歴は役に立たない」という風潮を助長し、大学生たちが、節約のための旅行や集団での旅行を、選択せざるを得ない状況を反映しているとしています。
台湾の大学院生で「中国の軍事基地および施設」のインタラクティブマップの創設者である温約瑟氏は、北京政府が事件の対処において、十分な知恵を欠いていると述べています。実際には、若者たちの希望に沿って、マラソン大会などのイベントを開催し、市委書記が開幕ランナーとして、参加することで観光を促進し、若者たちのストレスのはけ口を提供しつつ、政治事件に発展するのを防ぐことができたでしょう。
11月9日には、鄭州と開封が同時に自転車通行禁止を発表しました。学校側も「政府庁がすでに電話をかけてきた。この事件はすでに政治運動に発展しており、参加した者の一生は終わりだ」と学生に警告しました。
公子沈氏は、中国での自転車利用が犯罪となるわけではないため、このような禁止令が学生の行動を完全に阻止することは難しいだろうと述べています。今後もサイクリングを続ける者はいるかもしれませんが、このような大規模な夜間サイクリングの盛況は見られなくなる可能性が高いと考えています。彼は、学校が学生に「参加すれば一生が終わる」と警告したことについて、これは中国政府による脅しの手段であり、実際に行動に移すかどうかは不明としていますが、将来の就職活動や身分証明書、パスポートの申請に困難や影響が生じる可能性もあるとしています。
ネット上で「鄭州夜間サイクリング」と「白紙運動」を比較する声に対し、温約瑟氏は「白紙運動」は政治的な訴求を伴っていたが、「鄭州夜間サイクリング」はネットの模倣から形成された流行に過ぎず、社会運動とは言い難いと述べています。夜間サイクリングが制限されたとしても、学生たちは別の形式や集団活動を通じて、発散の手段を模索するでしょう。このため、この事件が今後も発酵する可能性があり、注視する価値があるとしています。
(翻訳・吉原木子)