最近、河南省鄭州市で行われた若者たちの夜間サイクリング活動が大きな注目を集めました。数万人の大学生が鄭州から出発し、シェアサイクルで約50キロ離れた開封に向かいました。真夜中には自転車の列が数十キロにも及び、この大規模なイベントは全国各地の大学生や他のグループにも波及し、模倣する動きが広がりました。その影響力の大きさから、中国当局も注目し、類似の活動を禁止する緊急命令を発表しました。
「夜間サイクリングで開封に行く」というムーブメントは、今年6月に鄭州市の4人の女子大学生が開封の灌湯包(ガンタンパオ)を食べるために、鄭州市から5時間かけて50キロ以上離れた開封市まで自転車で旅をしたことに端を発します。彼女たちはその体験をSNSで共有し、多くの関心を呼び、模倣者が増えました。参加者は次第に増加し、規模も拡大しました。これを受けて、開封市は一部の観光地を夜間に大学生に無料開放することを決定し、さらに参加者のために休憩用のベッド、無料の食事、観光地までのバスを提供しました。また、体調を崩した学生には無料で鍼灸や理療を施すサービスも行われました。
この活動がSNSで大きな注目を集める中、北京や西安など各地の大学生が鄭州に飛んで参加し、退役軍人も活動に加わるようになりました。ネット上で拡散されているある動画には、数名の若者たちが自転車に乗りながら、「河南で8年間武装警察をやっていた、夜間サイクリングで開封へ!」と叫ぶ男性や、「空軍で8年、夜間サイクリングで開封、退役軍人はいつまでも誇りを持っている!」と言う男性、また「退役軍人として、怪我をしても仲間から離れない、夜間サイクリングで開封に行こう!」と語る女性の姿が映し出されています。他にも陸軍やロケット軍の退役軍人が参加していました。
この活動は河南省にとどまらず、他地域でも大学生が自分の故郷でサイクリングイベントを企画するようになりました。例えば、江蘇省南京市では数万人の大学生が安徽省巣湖までサイクリング(約160キロメートル)を計画し、四川省成都市の大学生は夜間に都江堰までのサイクリング(約59キロメートル)を計画、湖北省武漢市の大学生は東湖凌波門へのサイクリング(約56キロメートル)を行いました。以前には、陝西省西安市の大学生も咸陽へのサイクリング計画を発表していました。さらに、天津市宝坻区から109キロ離れた北京の天安門広場までのサイクリングを試みる大学生たちの動画もあります。
しかし、中国当局はこの活動が制御不能になる可能性を感じたのか、公式の報道が一夜にして大きく変わり、「交通混乱を招く」として活動の中止を求めました。11月9日には鄭州と開封の両都市の交通警察が相次いで交通規制を発表しました。河南省内の多くの大学が学生に対して期限内に帰校するよう通知し、キャンパスの閉鎖措置を進めています。ある大学では、河南省教育庁と学校側が夜間サイクリングに関する緊急会議を開いたとし、「開封に向かう学生数はすでに20万人を超え、一般の参加者も多く、さらには海外の敵対勢力が加わっている可能性もある」と指摘しました。また、学校のグループチャットでは「この事件が政治運動に発展しているため、参加すると将来に影響が出る」と学生に警告するメッセージが流されました。別の動画には、鄭州市の主要交差点で警察が配置され、多くの警察が人垣を作ってサイクリング参加者を排除する様子が映し出されています。
興味深いことに、この夜間サイクリング活動の参加者は政治的な主張を一切しておらず、共産党に対する抗議行動も見られませんでした。多くの学生は国旗を手に持ち、国歌を歌う姿が見られましたが、それでも当局による緊急規制の対象となりました。
著名な時事評論家の蔡慎坤氏はXで「共産党は若者が自発的に組織化することを最も恐れている。これはかつての白紙運動に似ている。若者たちは存在を示す独自の方法を見出しているが、彼らは一体何を伝えたいのだろうか?それは“卒業即失業”という現実への無言の抗議なのか、それともこの貧乏旅行を通じて共産党が彼らの厳しい状況にもっと関心を持つことを望んでいるのか?」とコメントしています。
また、一部のネットユーザーは、このような大規模な学生集団行動が、1989年の天安門事件を連想させると指摘しています。夜間サイクリングに参加した大学生の中には、「自由を求める」というスローガンを掲げる学生も出現しています。現在の中国経済は低迷しており、若年層の人口比率も減少しています。将来に希望を見出せない若者たちの間で失望が積み重なっており、当局は若者たちの自発的な集団活動に対して極度の警戒を示しています。彼らが政治的な要求を持っているかどうか、あるいはその動機がどれほど些細であろうと、若者たちが集まって何か一つのことを行うだけで、共産党当局は大きな不安を感じるのです。
(翻訳・吉原木子)