2024年6月末までの四半期において、中国から違法に流出した資金は2540億ドルに達する可能性があると、ウォール・ストリート・ジャーナルが最近報じました。中国の現在の経済状況はさまざまな変化を生み出しています。国内では貧富の差が拡大し、中間所得層の苦境が社会に不確実性をもたらしているようです。一方、国際的には資本の流出や富裕層の海外移住が見られ、中国の富裕層が国内の経済や政治の見通しに対して不安を抱いていることを示しています。

資本の流出と中国経済の苦境

 中国の不動産市場の崩壊と経済の先行き不透明さが、大量の資金の流出を促進しています。中国当局は個人の外貨購入の上限を年間5万米ドルとする厳格な外国為替管理を行っているにもかかわらず、一部の富裕層はさまざまな手段を使って資金を海外に移転しています。データによると、2024年6月末までの四半期において、違法に流出した資金は2540億ドルに達する可能性があるとされています。

 資本規制を回避するため、中国の富裕層は輸入商品の価格を過大評価したり、暗号通貨取引を利用したり、アート作品を購入するなどして資金を不法に国外へ移転しています。これらの手段はリスクが高く違法であるにもかかわらず、依然として一部の人々はリスクを冒してでも資金移転を行っています。中国当局は近年、取り締まりを強化し、暗号通貨や違法な手段を利用して資金を移転した者の何人かを逮捕し、刑罰によってこの現象を抑制しようとしています。

 一部の企業も合法的または違法な手段を通じて資産を海外に移転しており、特にオフショア企業やアート作品のオークションを利用し、香港のような資本規制のない地域に資金を預け、その後、他の国に送金するなどして資産を海外に移転しているとされています。また、暗号通貨取引は中国では禁止されていますが、依然として富裕層が資産を移転する手段の一つとなっているようです。

 大規模な資本流出は、中国経済に対する影響を無視できません。これは、人民元の元安の圧力を一層強めるだけでなく、国内の経済や政策に対する投資家の信頼の欠如を示すものでもあります。中国当局は一部の景気刺激策を打ち出し、短期的には経済を活性化する可能性がありますが、資本流出の傾向は依然として減少する兆しを見せていません。

安全な避難所を求めて日本に移住する中国人富裕層

 日本は中国の富裕層にとって人気の移住先の一つであり、ますます多くの中国富裕層にとっての第一選択肢となっています。東京や北海道などの地域では、中国の富裕層の影響により不動産価格が大幅に上昇し、日本の不動産市場全体の活況をもたらしています。

 この移住の波は、東京などの都市の不動産価格の上昇を促進しているだけでなく、社会的でも注目を集めています。東京の一部の高級マンションでは、所有者の3分の1が中国人の名前となっており、特定の地域では中国人居住者が建物全体の居住者の4分の1以上を占めています。この現象は、不動産市場が中国の富裕層の購買力に依存しつつあることを示しています。

 中国からの距離が近く、不動産価格が相対的に安いという利点に加え、安定した社会環境や高い生活品質も中国人富裕層が移住を選ぶ重要な理由となっています。Henley & Partners(ヘンリー・アンド・パートナーズ)の報告によると、2022年には中国人富裕層の移住者数が13500人に達し、中国は世界で最も富裕層の人口減少が深刻な国の1つになるといいます。

 また、日本のビザ政策も比較的緩和されており、特に企業経営・管理ビザや高度専門職ビザは、中国の富裕層に合法的な長期居住の道を提供しています。多くの富裕層は日本に定住した後、社会に適応するために名前を変更することも選んでいます。

貧富の差が拡大、中間層が貧困に戻る恐れ

 一方で、中国の経済的苦境はさらに深刻な社会問題、つまり貧富の差の大きさを際立たせています。中国社会保障学会(CAOSS)の分析によると、2023年には中国で月収が3500元(約7.5万円)に満たない人が6億人を超えています。このデータは、中国社会の貧富の差の大きさを示し、特に低所得層の生活困難を浮き彫りにしています。7.2億人の就業人口のうち、月収が5000元から1万元(約11万〜21万円)の中間所得層はわずか1.1億人しかおらず、年収が100万元(約210万円)を超える高所得層は約70万人にとどまっています。

 中国の所得構造は典型的なピラミッド型を呈し、ごく少数の人々が大部分の富を占有する一方で、広範な低所得層が経済の下押しの中でより貧しくなっています。中国の経済学者、賀江兵(がえへい)氏は、このような所得格差が中国社会に大きな不安定性をもたらしていると指摘しています。中間所得層は中国経済の発展の中核を担っている存在であり、景気後退により集団的に「貧困に逆戻り」する恐れがあります。

 景気後退に直面した中間層は、最も大きな影響を受けています。多くの人々はこの経済危機の中でそれまで蓄えてきた富を失い、経済的なプレッシャーが不安や焦燥感を強めているようです。

 このような全社会的規模での巨大な貧富の差は社会の安定を損ない、中国の将来に対する不確実性をさらに深めています。

関係者が明かす内幕

 在米の元中国人記者の趙蘭健(ちょうらんけん)氏は、『看中国』とのインタビューで、彼の知る限り、早くも15年前、すなわち2010年頃から大規模な中国の汚職資金の流出があったと語っています。

 「中国には非常に厳格な外貨管理があり、大量の資金を海外に送金するには、中国政府の関連部門の協力が必要だ。これには商務部や国家外貨管理局が含まれる。私が当時知っていたある若者は、大企業が大量の資金を合法または違法に海外に送金する手助けを主な仕事としていた。これらの企業や個人が海外に投資するには、商務部の承認が必要だった」と彼は振り返ります。

 趙氏は、こうした巨額の資金移転が中国の各省・市でほぼ至る所で行われていると指摘しています。「合法的な収入や違法な収入が世界中の国々に流出する過程で、これらの違法犯罪者は中国各級政府の承認を得なければ、その資金は国外に出ることができない」と述べています。

 彼は、「いわゆる中国の改革開放の成果とは、中国国民の血と汗を搾取した成果にほかならない。中国国民が安価な労働で生み出した莫大な社会的富は、中国全土から世界中へと、中国各地の汚職者たちによって略奪されてしまった。このような強奪と搾取は、いかなる対中侵略戦争がもたらした傷をも上回る深刻なものである」と考えています。

(翻訳・藍彧)