中国のメディアとSNSはアメリカ大統領選挙の状況に高い関心を寄せています。この話題はすでに150億回以上の閲覧数と389万件のコメント数を記録しています。同時に、中国の公式メディアはアメリカ大統領選挙に対する否定的な情報を集中的に報道し、アメリカの民主制度を攻撃するよう世論を誘導しようとしています。しかし、多くの中国のネットユーザーは「いつになったら中国人も自分の投票権を持てるのだろう?」や「将来は自分たちの国家指導者を一人一票で選べるようになりたい」と嘆いています。
最近、中国の公式メディアはアメリカ大統領選挙の「混乱」を多角的に報道し、「政治的分裂」、「暴力を伴う民主選挙」、「人種対立」、「アメリカ型民主主義の失敗」といった印象を植え付けようとしています。たとえば、《環球時報》や中央テレビ(CCTV)は「フェンスを設置し、窓を封鎖、狙撃手が待機、アメリカ大統領選挙は緊張の雰囲気」、「商店が木板で窓を封じ選挙暴動に備える」、「アメリカの首都は全市戒厳態勢」などといった誇張されたタイトルで緊張感を煽っています。
「恐怖の雰囲気」を煽った後、《環球時報》は報道をさらに民間の「混乱」に広げ、フィラデルフィアのパン屋が選挙の予測として「政治クッキー」を作り、大儲けしていると伝えました。また、中央テレビの「アメリカ大統領選5代の大乱闘」という記事も微博(ウェイボー)で大きな議論を呼び、一部のネットユーザーは「アメリカ大統領選挙の混乱ぶりは目を見張るばかりだ。陰謀や謀略、インチキや不正操作、さらには対立候補を物理的に排除しようとする手段まで登場するとは驚きだ」とコメントを寄せました。
一部のネットユーザーは中国公式メディアの論調に同調し、微博で「これがアメリカの特色だ」と嘲笑しています。しかし、より多くの冷静な中国のネットユーザーは「このようなことは中国では決して起こりえない。なぜなら中国は民主国家ではないからだ」と反論しました。また、「いつになったら中国人も自分の投票権を持てるのだろう?」や「自由民主は中国では遠い存在だ」と嘆く声も見られます。
アメリカ駐中国大使館の公式微博アカウントは「選票の力」と題する記事で、11月5日にはアメリカ国民が大統領、副大統領、国会議員、州政府の役員、市長、地方税務官など各級の役員を選ぶために投票することを指摘しました。この記事は、自由で公正な選挙が民主制度の基盤であり、アメリカはすべての国の国民が自らの声を発し、民主主義と自国民の繁栄を推進することを奨励すると強調しています。これは間違いなく、中国公式メディアのアメリカ大統領選挙への批判的な言説に対する有力な反撃です。
ラジオ・フリー・アジアは、ウイグル系のアメリカ人であるスティーブン(Steven)氏の発言を報じました。彼にとって今回のアメリカ大統領選挙への投票は市民権を取得後初めての経験です。スティーブン氏は、中国共産党(以下、中共)はアメリカ大統領選挙の進展や結果に大きな関心を寄せていると指摘し、その理由としてアメリカの大統領選挙が中国の経済や政治に深い影響を与えるためだと述べました。中共は、アメリカの大統領選挙を否定的に報道することで、中国本土の市民が民主主義の理念に触れるのを防ごうとしていると彼は分析しています。
スティーブン氏はさらに、「この選挙は中国に非常に大きな影響を与えるため、中共は年々アメリカの民主主義を批判し続けている。中共はアメリカの選挙を醜く描写しているが、選挙票の内容を中国人には一切示さない。選挙票に何が記されているのか、大統領はどのように選ばれるのか、上院と下院の関係、そしてなぜ選挙人票で大統領が決まるのかといった点を中国人には知らせないのだ」と説明しました。彼は、アメリカの選挙における対立は民主制度においてごく自然なものであるが、中共はこれを攻撃の材料としていると指摘しました。また、一部のSNS上のインフルエンサーが「アメリカの民主主義の衰退」や「アメリカ大統領選挙の混乱」といった印象を故意に広めており、これも中共の「プロパガンダ」の一環であると述べています。
しかし、中共による世論操作が時に「逆説的な啓発効果」をもたらすこともあります。絶えず報道される「アメリカ大統領選挙の混乱」を目の当たりにし、比較的オープンな情報環境にいる一部の中国人は、むしろ民主制度における自由の重要性を一層理解するようになっています。
中国の企業家である孫氏は、大陸のメディアで報道されるアメリカ大統領選挙に対する否定的な内容を見て悲しみを感じたと述べました。「投票権を持たない大陸のネットユーザーがアメリカの大統領選挙を批判するのは皮肉です。奴隷には選票を持つ喜びが理解できないのです」と嘆きました。孫氏はさらに、「多くの中国人は現状の境遇と考え方に基づいてアメリカの大統領選挙を見ており、特に官製メディアの方向に沿ってアメリカの選挙はあまりにも混乱していると考えています。実際、中国のようにすべてを中共が掌握していれば確かに混乱はありませんが、我々に選票はあるのでしょうか?」と述べました。
(翻訳・吉原木子)