現在の中国の就職市場では、一線都市に住む求職者であっても、理想的な仕事を見つけるのが困難な状況です。その結果、新卒者の多くが二線都市に目を向ける傾向が強まっています。

就職市場への大きなプレッシャー

 高学歴人材の増加により、就職市場の「激しい競争」現象が一層深刻化しています。2024年の大卒者数は1179万人に達し、これまでにないほどの就職難となっています。

 ある統計データによると、約14%の大学生が大学3年生、あるいはそれ以前から就職活動を始めており、早期の準備や経験の蓄積が常態化しています。ある大卒者が、ネット上で自身の就職活動の経験を次のように語っています。

 「正直、焦りを煽るつもりはないが、本当に焦っている。大学入学当初から、大学院や公務員試験を受けずに、仕事を探すことを決めていた。そのため、大学1年生から授業以外の時間はほとんど働いていた。ニューメディアの運営や、バラエティ番組のディレクター、ネットイースやクラウドミュージックでインターンをして、ビジネスにも携わった。こうして経験も人脈も豊富だと思っていた。これだけの努力をしていれば、卒業後に特別良い仕事とはいかなくても、少なくとも満足できる仕事が見つかると思っていたのだ。しかし、大学4年間でこれほど努力を重ねた結果、卒業後の月給はやはり3000元(約6.5万円)で、大学時代にアルバイトをしていたときと何ら変わらない給料しかもらえなかった」

生きることが最優先

 最近、「女子大学生が卒業後、清掃員として働くことを選んだ」という話題がネット上で大きな注目を集めました。

 今年6月、青島市の大学を卒業した24歳の長花(ちょうか)さんは四川省の山奥の村の出身で、閉鎖的な地域から抜け出したい一心で中学生の頃から絵画を学び始め、美術大学の試験に合格して美大生になり、芸術の道に進みました。そのため、彼女の両親は大学費用を賄うために親戚や友人などからお金を借りざるを得なかったのです。2020年、彼女は願い通りに大学に合格し、環境デザイン専攻を選び、卒業後の就職が有利であると考えていましたが、卒業時には業界全体が冷え込んでしまいました。昨年、四川師範大学の大学院入試にも挑戦しましたが、不合格という結果に打ちひしがれてしまいました。

 家で休んでいたとき、偶然にあるブロガーの動画が彼女の目に留まりました。その動画では、女子大生が仕事を見つけられず、清掃員として働く選択をしていると紹介されていました。彼女は当初驚きましたが、調べていくうちに、清掃員として働く大学卒業生が増えていることが分かりました。

 大学の卒業式の後、彼女は荷物を持って杭州市に向かい、数日後に清掃員としての仕事を見つけました。この仕事は大変ですが、家賃や生活費を賄うには十分で、大学院受験の失敗による不眠やストレスも和らいだといいます。また、仕事の合間に自分の時間も確保できます。

 ネット上では「45歳以上の女性の仕事を奪っている」と彼女を非難する声もありましたが、彼女を応援する声も多く、「自分の労働で生きることは恥ずかしいことではない」との意見がありました。「現在の就職難では、多くの大学生や大学院生が家事代行や警備員、デリバリー配達員といったシンプルな労働に就いている」と指摘する声もあります。

 多くのネットユーザーが現在の就職状況に対する不安を表明し、次のようなコメントを寄せました。「環境デザイン学科を卒業した人は本当に就職が難しすぎる」「今は、家で親の脛をかじるより、なんでもいいから、とりあえず仕事を見つけることが大事だよ」。彼女(長花さん)は自立できる。尊敬に値する」

 厳しい就職環境の中では、生き延びることが最も重要であると多くの人が認識しています。

採用の落とし穴

 大学卒業生が就職活動を行う過程で、いくつもの面接場所を回り、何時間もかけて移動しても、面接がわずか十数分で終わるというケースが多いです。こうした状況では、求職者は時間とエネルギーを無駄にするだけでなく、真の面接機会を得るのが難しいため、落胆しています。

 また、採用企業が職務内容を実際と異なる形で説明するケースも後を絶ちません。さらに不満を募らせるのは、給与の減額が採用過程で頻繁に見られることです。多くの企業が面接前には魅力的な給与を提示しますが、実際の面談時には大幅に減額され、求職者は困惑と失望を味わいます。

 ある女性がネット上で、自身の就職経験を次のように明かしました。
 「現在、その会社を辞めてから1か月以上たっているが、いまだに給与が支払われていない。この会社は基本給1万元(約20万円)を採用条件として掲げていたが、実際に入社すると、試用期間中は2割減の8000元(約16万円)しか支給されなかった。さらに、同社は試用期間に不合理な条件を課しているだけでなく、次のような契約規定もあった。従業員が業績基準を達成できなかった場合、最低賃金基準で給与が支払われ、その最低賃金は2650元(約5.5万円)である」

「スロー就職族」

 進学、就職、起業、フリーランスなど、今では大学生が卒業してキャンパスを出た後には、より多くの選択肢が出てきました。

 理想の仕事が見つからないプレッシャーに直面した多くの大学卒業生は、フリーランスや「スロー就職」を選ばざるを得なくなっています。「スロー就職」とは、雇用市場に参入していない大学卒業生のことを指します。つまり、大学生が卒業後にすぐには就職せず、進学もせずに、旅行や教育支援ボランティア、家族との時間を過ごしたり、起業を検討したりするなどして、人生の道筋を慎重に考えるという現象です。

 中国では「90後(1990年代生まれ)」の若者が伝統的な「卒業後すぐに就職する」という考え方を捨て、「スロー就職族」になる人が増えています。国家統計局上海調査総隊が2023年4月中旬に大学卒業生4000人余りを対象に行った調査研究の結果を見ると、回答者の38.0%が「スロー就職」を選ぶと答え、そのうち32.0%は「進学」を理由に挙げ、6.0%は「就職を一時的に見合わせる」が理由だとしました。

 また、セルフメディアの発展により、多くの若者、特に新卒者にとってはこの分野への期待が高まっています。しかし、「参入にハードルがなく、上限もない」と言われるこの業界の裏には、多くの誤解やリスクが潜んでいます。

 ある評論では、「セルフメディアはやってもよいが、専業にするべきではない!特に、安定した収入源がない場合や、卒業したばかりでまだ仕事が見つかっていない場合には、セルフメディアで生計を立てることは期待しないほうがよいし、それで成功を収めることを夢見るべきではない」と指摘されています。

 セルフメディアで一躍(いちやく)有名になる事例は、宝くじで大当たりするようなもので、非常に稀です。大多数の人々は、膨大な時間と労力を費やしてもほとんど報われず、「セルフメディア難民」に過ぎないのです。

(翻訳・藍彧)