ノキアが中国で2000人のリストラ

 フィンランドの通信機器メーカー、ノキアは中国で2000人の従業員を削減し、同社の中国従業員の約5分の1に相当すると、ブルームバーグが10月18日に報じました。これは、ノキアが2023年に発表した14000人の人員削減計画の一環です。同社の2023年の報告によると、ノキアは中国で約10400人の従業員を抱えています。

 ノキアのこの人員削減は、同社が中国事業を急速に縮小していることを示していると一部のアナリストが見ています。この動きは、中国当局が内需拡大を刺激する政策を推進している時期に行われており、外資系企業の撤退が進むことは、中国の経済モデルが内向きのサイクルに向かって加速していることを示唆しています。

 ノキアのこの人員削減は、特にテクノロジーや通信分野における中国の投資環境の変化も反映しています。米中間の貿易戦争や技術競争の激化に伴い、ますます多くの西側企業は中国市場での障壁に直面しており、政策の不透明さや中国国内での競争激化が、外資系企業により大きなリスクを晒さしています。ノキアの今回の調整は、今後さらに多くの外資系企業が中国での事業戦略を再評価する可能性があることを示唆しています。

 ノキアにおける中国での競争力低下の主な原因は技術的な問題ではなく、中国当局が実施した一連の国家安全保障政策による影響です。また、中国と西側諸国との関係が緊張する中で、ノキアを含む多くの多国籍企業がグローバル事業の再編を進めています。

米国コンサルティング会社マッキンゼー、中国で数百人を解雇

 10月17日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、米国のコンサルティング会社マッキンゼーは、中国での事業を大規模に再編しており、約500人の職を削減しています。これは、中国における従業員の約3分の1に相当し、同社が中国政府を背景とするクライアントの数を減らした後のことです。

 マッキンゼーをはじめ、中国で長年にわたって事業を展開してきた欧米企業は、地政学的な緊張と経済の減速がもたらす課題に直面しています。一方で、マッキンゼーは中国政府に関連した業務で、米国内では監視が強化されています。また、中国の一部のクライアントの中には、価格面での優位性を求めて中国国内の競合他社に切り替え始めています。

 これらの課題に対処するため、マッキンゼーは中国の地方政府との取引・協力を停止し、国有企業とのプロジェクトも縮小しています。これらのプロジェクトは同社のビジネスの重要な部分を占めていました。

 マッキンゼーは1993年に中国に進出して以来、中国建設銀行や中国電信などの国有企業や多国籍企業にサービスを提供してきました。しかし、米中両政府に同時にコンサルティングサービスを提供しているため、米国の議員から批判を受けてきました。特に、米国の国防関連プロジェクトに関して批判が強まってきました。このため、マッキンゼーは利益相反の見直しを行い、顧客リストを調整し、一部の中国プロジェクトを縮小しました。

 また、マッキンゼーは中国経済の低迷と中国当局による外資系コンサルティング会社に対する規制強化という二重の圧力も受けています。その一方で、中国企業が中国企業の提供するコンサルティングサービスを選択するケースも増えています。

 これらの複雑な状況に対処するため、マッキンゼーは中国事業をグローバル事業から切り離す措置を講じました。情報筋によると、同社のグローバル・コンピューターシステムは調整中であり、中国人従業員が一部の内部データベースやファイルにアクセスすることが制限されているか、または遮断されようとしています。

国際的サプライチェーンの再編と「脱中国化」

 これらの多国籍企業による事業の再編は、特に技術や通信分野における中国の投資環境の変化も反映しています。中国当局の政策の不透明さが増すにつれ、外資系企業は中国市場でますます困難に直面しています。
また、中国最大級の貿易商談会「中国輸出入商品交易会(広州交易会)」も、中国経済の変化を観察するためのもう一つの視点を提供しています。

 第136回広州交易会は2024年10月15日に開幕し、203カ国から過去最高の25万人の海外バイヤーが参加し、歴史的な記録を打ち立てました。

 広州交易会の賑わいにもかかわらず、専門家は、このような展示会だけでは中国の製造業の輸出受注の減少や輸出の減速傾向を逆転させることは難しいと見ています。

 中国の公式データによると、今回の広州交易会のバイヤーのうち、「一帯一路」経済圏構想沿いの国々からの参加者は75.7%を占めており、欧米諸国からのバイヤーはわずか12.5%にとどまりました。2023年の広州交易会でも欧米のバイヤーの割合は大幅に減少しており、この傾向は今年の広州交易会でさらに顕著になりました。一部の出展者は、先進国からのバイヤーが大幅に減少し、ロシアやインド、中東諸国からのバイヤーが増えたため、ハイエンド製品を扱う出展者は、より大きな価格競争のプレッシャーに直面することになったと述べました。

 専門家の分析によると、欧米のサプライチェーンの再編と「脱中国化」傾向の加速に伴い、ますます多くの欧米企業やバイヤーが徐々に東南アジアなどの他の地域へと移行していると言います。

 台湾の致理科技大学(ちりかぎだいがく)の張弘遠准教授は、先進国の注文が減少し、中国の輸出はますますシルクロード経済圏沿いの低価格市場に向かうようになっていると指摘します。しかし、これらの市場は購買力が限られており、一部の国は自国の産業への影響を恐れ、低価格の中国製品のダンピングに慎重な姿勢を取っています。

 また、国際的なサプライチェーンの「短縮化」の傾向も、中国の製造業に打撃を与えています。欧米諸国が徐々に生産チェーンを自国や近隣諸国に移転しているため、中国の製造業は新たな課題に直面しています。

 例えば、中国の電気自動車産業はかつて輸出の目玉でしたが、欧州連合は自国の電気自動車産業を保護するために、最近、中国の電気自動車に対して35%の関税を課す計画を発表し、この産業の輸出空間を圧迫しています。一方、一部の中国企業は、欧米の高関税を避けるために生産ラインをベトナムなどの国々に移しています。

 米国のエコノミストである李恒青(り・こうせい)氏は、米国市場の小売業界でも中国の対外貿易の変化が反映されていると指摘しています。より多くの商品が「メイド・イン・チャイナ」と表示されなくなり、ベトナムやインドネシア製として販売されるようになっています。これは、グローバル・サプライチェーンの再編がすでに進行中であり、短期間での逆転は難しいことを示しています。

(翻訳・藍彧)