中国政府は経済刺激策を打ち出し、経済低迷を打開しようとしていますが、中国経済は依然として回復の兆しが見えず、外部からはその回復が望めないという懸念が広がっています。これに伴い、世界の主要企業は中国市場でのビジネス戦略を見直しています。
ロイター通信が10月28日に報じたところによると、エルメス、ロレアル、コカ・コーラ、ユナイテッド航空などの大手企業は、中国の不動産危機や若年層の高い失業率の影響により、中国の消費者が支出を控えていると指摘しています。北京は9月末に経済を支えるための刺激策を発表しましたが、多くの政策はまだ具体的な内容が明らかにされておらず、消費者の信頼を大きく高めるには至っていません。
外資系企業の中国戦略の見直し
中国での経営環境が厳しくなる中、一部の外資系企業はすでに戦略の見直しを開始しています。フランスのカーボングラファイトメーカーであるメルセンは先週、地元企業との競争が難しいため、中国で電力伝送製品を製造している工場を閉鎖すると発表しました。
一方で、ダノンやネスレなどの食品企業は、値下げやオンライン販売の拡大を通じて、中国市場でのシェア維持を図っています。
コカ・コーラの最高経営責任者であるジェームズ・クインシー氏は、10月23日の決算電話会議で、中国でのビジネス環境が依然として厳しいと述べ、「経済には回復の兆しが見られない」と投資家に対して報告しました。
中国政府はさらなる刺激策を打ち出すことを約束しているものの、追加の刺激策の範囲や時期はまだ不明であり、投資家たちはその効果に懐疑的です。
ユナイテッド航空のCEO、スコット・カービー氏はロイター通信に対し、「かつては毎日約10便が中国に飛んでいましたが、あの時代はもう戻ってこないだろう」と述べています。現在、ユナイテッド航空はロサンゼルスから上海への便を1日3便に減らしており、この状況がすぐに変わることはないだろうと予想しています。
第3四半期決算が示す中国経済の低迷
現在は第3四半期の決算期ですが、多くの外資系企業の業績は、中国市場がかつてほどの成長を支える原動力ではなくなったことを反映しています。多くの企業幹部は、中国でのビジネス環境が依然として厳しいと述べています。
特にラグジュアリーブランドは、中国経済の低迷によって大きな影響を受けています。経済の不確実性が中国の中産階級の購買意欲に影響を与え、富裕層でさえも消費を控える傾向にあります。
ラグジュアリーブランド大手のLVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)は先週、業績が予想を下回ったことを発表しました。同社は、中国の消費者信頼感がパンデミック以来最低水準にまで低下しており、ファッション商品の需要が今四半期に悪化したと指摘しています。
ケリンググループも先週、中国の需要の弱さが同社の主要ブランドであるグッチの回復を妨げており、年間利益が2016年以来最低の水準に落ち込む可能性があると警告しました。
高級バッグの製造で知られるエルメスは、他の競合企業ほど中国経済の低迷の影響を受けていませんが、中国での来店客数の減少を補うため、販売額の増加を図っています。特にジュエリーや皮革製品、メンズ・レディースウェアの売上を伸ばしている状況です。
イタリアのラグジュアリーブランドであるゼニア(Zegna)の会長兼CEOであるエルメネジルド・ゼニア氏は、中国経済の「困難な時期」が少なくとも2025年初頭まで続くと予想しています。
消費者信頼の低下が続く
「ダブルイレブン(双十一)」ショッピングイベントが近づく中、多くの地元供給業者は売上の成長が横ばいか、わずかな成長にとどまると予測しています。彼らは、消費者が依然として中国経済の困難に対して不安を抱いていると報告しています。46歳の鄭麗さん(仮名)はロイターに対し、以前は「ダブルイレブン」を楽しみにして洋服や日用品を購入していたが、今年は購買意欲を掻き立てる商品が見つからないと話しています。「もしかしたら息子にダウンジャケットを買うくらいでしょうか」と付け加えました。
重工業と中国政府の刺激策の限界
重工業も厳しい状況にあり、これが続く見込みです。スイスのエレベーターとエスカレーターの製造企業であるシンドラーのCEO、シルヴィオ・ナポリ氏は10月17日の決算会議で「今のところ経済の回復の兆しは全く見られません」と述べています。
ナポリ氏は今月初めに中国を訪問しましたが、市場が底を打つ兆候は見られなかったとしています。昨年、中国はシンドラーの収益の15%を占めていました。
彼は、中国政府の刺激策が経済に必要な「爆発的な推進力」となるとは思わないと述べ、来年2月に年間業績を発表する際には、状況がより明らかになるかもしれないと指摘しています。
今後、さらなる企業からの悲観的な見解が発表される可能性があります。現在、欧州のSTOXX 600指数や米国のS&P 500指数に含まれる多くの企業はまだ業績を発表していません。
さらに、多国籍企業は本国市場での競争にも直面しています。特に、ヨーロッパの自動車メーカーやエレクトロラックスなどの家電メーカーは、中国製の安価な製品との競争に苦しんでいます。
アメリカ大統領選挙が近づく中、誰が当選しても米中貿易摩擦は続く見込みです。前大統領のトランプ氏は、再選された場合、中国製品に60%の関税を課すと公言しており、これにより中国産業は大きな圧力を受けることになるでしょう。
(翻訳・吉原木子)