最近、中国の電子商取引大手である京東グループが、スタンドアップコメディアンの楊笠を招待したことが物議を醸し、株価が大幅に下落しました。また、京東傘下の金融商品にも取り付け騒ぎが発生しました。一部のネットユーザーは、これらの一連の出来事が、中国社会における性別対立の深刻化を反映していると指摘しています。

 京東は「ダブルイレブン(11月11日)」のセールイベントに向けたプロモーションの一環として、複数のスタンドアップコメディアンを招待し、その中には議論の的となっている楊笠も含まれていました。彼女の「男はなぜ見た目は普通なのに、そんなに自信満々なのか」や「男は皆ゴミだ」といった発言が物議を醸し、性別対立を煽るものとしてたびたび注目されてきました。

 これに反発した一部の男性ユーザーは、京東プラス会員の料金の返金を求めたり、購入済み商品の領収書を再発行するよう呼びかけたりして、京東に対する不満を表明しています。中には、増値税(日本の消費税に相当)の普通領収書の税率が3%である一方、増値税専用領収書の税率が13%であることを指摘し、京東に打撃を与えようとする動きも見られます。

 また、京東金融の理財商品に関して「大口引き出しができない」とされるスクリーンショットがSNS上で広く拡散され、「京東金融取り付け騒ぎ」の噂がさらに拡大しました。この出来事はすぐに話題となり、事態がさらに悪化しています。

 公開情報によると、京東金融は京東グループ傘下の個人向け金融ブランドであり、京東金融アプリを通じて、個人理財や分割払い、保険などのサービスを提供しています。

 Tencentの報道によれば、事態が悪化した後、京東は楊笠に関する投稿を削除し、コメント欄を閉鎖しましたが、これでは世論の不満を鎮めることはできず、事件はさらに拡大しました。京東はますます厳しい状況に追い込まれています。

 また、楊笠はインテル、長城汽車、小鵬汽車、海瀾之家など多くの企業で広告塔を務めており、これらの企業も彼女の広告起用により男性ユーザーから大規模なボイコットを受け、株価が下落したことがあります。これを踏まえ、多くのネットユーザーが京東経営陣に対し、なぜこのような物議を醸す人物を重要な時期に起用したのかと批判しています。

 業界関係者によると、京東の主要ユーザーは男性が多いものの、消費価値のデータでは「少女 > 子供 > 若い主婦 > 高齢者 > 犬 > 男性」となっており、京東は楊笠を招くことでより多くの女性ユーザーを「ダブルイレブン」キャンペーンに引き込もうとした可能性があると考えられています。しかし、これが男性ユーザーの強い反発を招きました。京東はその後、楊笠との今後の協力を終了すると発表しましたが、今度は女性ユーザーからの不満を招き、京東はジレンマに陥っています。

 この一連の出来事について、あるネットユーザーは「これは、中国でますます深刻化する男女間の性別対立問題が、私たちの社会を分断している証拠だ」と指摘しています。

 この事件は、中国で性別対立がますます深刻化していることを浮き彫りにしています。性別対立の根源は、長い歴史と文化に起因しています。過去数世紀にわたり、男性は社会や政治の中心的な役割を果たし、一方で女性は周縁化されてきました。近年、フェミニズム運動によって女性の権利が向上してきましたが、中国ではこの運動が時に過激化し、性別に関する話題がインターネット上でしばしば論争の的となっています。

 中国のネットでは、注目を集める話題が出ると、性別に絡む議論がほぼ必ず展開され、しばしば罵り合いに発展します。多くのネットユーザーはその結果、性別に基づく憎悪感情に陥り、男性が女性を、女性が男性を憎むという悪循環に陥っています。互いに侮辱的な呼び名で呼び合い、対立する陣営に分かれて攻撃し合う状況が続いています。

 たとえば、ショート動画で有名になったブロガー「papi醤」の例では、彼女が結婚し、子供が夫の姓を継いだことで一部のネットユーザーから「結婚すると女性は独立性を失う」と批判され、「婚奴」などの侮辱的な言葉で攻撃されました。彼女はそのため、ネットいじめの標的となりました。

 一部のネットユーザーは、中国のSNSプラットフォームが性別対立を煽っていることが問題の根源だと考えています。ある女性ユーザーによれば、彼女と男性の友人が同じニュース動画を見た際、それぞれのスマートフォンに表示されたコメントが全く異なっていたそうです。男性のスマホには女性を攻撃するコメントが、女性のスマホには男性を攻撃するコメントが溢れていたというのです。このような情報の偏りが、性別間の対立をさらに深めています。

 こうした環境では、若者たちは特に影響を受けやすくなっています。たとえば、大学生の王さんは最近、「結婚する女はバカだ」「男なんてみんなダメだ」「一生結婚なんてしない」といった極端な発言を家族や友人の間で繰り返し、両親は非常に心配しています。彼女のこうした過激な考えは、ネット上の性別対立の過激な言説に影響されたものです。

 これに対し、多くのネットユーザーは「極端な意見が蔓延するネット環境では、自分自身で冷静に考える力を持つことが、性別対立の罠に陥らない最善の方法だ。出来事に対しては、その内容に基づいてコメントすべきで、性別にこだわる必要はない。性別だけで相手を決めつけたり、極端な行動を取るのは間違っている」とコメントしています。

(翻訳・吉原木子)