東京地方裁判所は10月25日、中国人の法輪功学習者を難民認定すべきとの判決を下した。写真は東京地方裁判所が入る合同庁舎の看板(写真撮影・唐木 衛)

 伝統的な気功修煉法である「法輪功」を習い、中国共産党による迫害を受ける恐れがあるとして難民認定を申請した中国人男性(72)が、申請を退けた国の処分取り消しを求めた裁判で、東京地裁は25日、不認定処分を取り消し、国に難民認定するよう命じました。

 男性は1998年頃から法輪功の修煉を始めました。当時、中国本土には7000万人から1億人の法輪功学習者がいたと推定されていますが、中国共産党は1999年から弾圧を始めました。

 中国共産党による誹謗中傷が国営メディアから流れるなか、男性は真実を伝えるため法輪功に関するチラシを配布しました。しかし、その過程で男性は不当な身柄の拘束や家宅捜索を何度も受けました。男性は2011年9月に来日し、2012年以降、3回にわたって難民申請をしました。

 産経新聞の報道によると、篠田賢治裁判長は、男性が不当な身柄の拘束を受けたことなどを踏まえて、男性は中国共産党によって長い間監視の対象になっていたと指摘しました。そして、来日後もチラシの配布や法輪功のパレードに参加してきたことから、「中国政府による迫害の恐れという恐怖を抱く客観的事情がある」とし、難民認定すべきだと結論付けました。

 難民の定義については「難民条約」で定められています。条約の第1条によれば、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するなどの理由で、迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々を指すとのことです。

 日本の法務省は今までに少なくとも2人の中国人法輪功学習者を難民認定しています。

 海外メディア「大紀元」の報道によると、日本政府によって初めて難民認定されたのは中国東北部出身の朴さん(仮名)で、2021年4月のことです。朴さんは日本企業で働きながら、休日を使って法輪功迫害の真相を伝える活動を行っています。

 2人目は中国南部出身の祝さん(仮名)です。10数年前、年末年始の休暇を利用して来日しましたが、滞在期間中に中国の自宅が強制捜査を受け、帰国できずにいました。祝さんの家族によると、中国の警察は祝さんの自宅のドアを破壊して侵入し、法輪功に関する資料を探す際に室内を乱暴に荒らしました。

 中国共産党による法輪功学習者への迫害は1999年から始まりました。法輪功の修煉を放棄させるために拷問や虐待が日常的に行われているほか、生きた法輪功学習者から臓器を強制摘出する「臓器狩り」も行われていることが調査で明らかになっています。

 中国共産党は外交機関や国営メディアを通じて、法輪功に対する誹謗中傷を全世界に拡散してきました。さらに、海外でも弾圧や嫌がらせを行うため、秘密警察署を各国に設置しています。

 これに対し、国際社会は中国共産党による法輪功迫害を厳しく非難し、法輪功学習者を支援してきました。米国下院では6月25日に「法輪功保護法案(Falun Gong Protection Act)」が全会一致で可決しました。法案には中国共産党の「臓器狩り」に加担した者に制裁を科す内容も盛り込まれました。同様の法案はマルコ・ルビオ上院議員らによって上院でも提出されました。

外部リンク:米国下院の「法輪功保護法案(Falun Gong Protection Act)」

 また、欧州議会では今年1月18日、中国共産党による法輪功学習者への迫害を非難する決議が採択されました。これには日本の議員も声を挙げ、「人類史上最悪のジェノサイドに見て見ぬふりをしてはならない」と訴えました。

 被害者家族も積極的に声を上げています。10月12日には、中国共産党によって不当に拘束された法輪功学習者の劉聡(りゅう・そう)さん、王乖彦(おう・かいげん)さん、鐘芳瓊(しょう・ほうけい)さんの家族が、東京の中国大使館前で横断幕を掲げ、親族の即刻釈放を求めました。

(唐木 衛)