中国の若年層失業率が上昇し続け、記録的な1179万人の大卒者が厳しい就職市場で職を求める中、自分の将来に対して悲観的になっている若者が増えています。彼らは、高学歴でありながら就職に失敗して人生の目標を見失い、親に依存して生きるか、低賃金の仕事を受け入れるか、もしくは「躺平(寝そべり)」状態になるかという難しい選択に直面しています。

 香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」紙は10月5日、深セン市のソフトウェア開発者である李彼得(ピーター・リー、男性)さんが先月、業界をリードする大手インターネット企業かから解雇されたと報じました。理由は、彼が部門の業績目標を達成できなかったためです。これが彼にとって大学卒業後、初めての仕事でした。

 24歳の李さんは、中国の厳しい就職市場でますます増えている失業者の一人です。次の仕事がどこにあるのかわからない彼は、給与やワークライフバランスに対する期待を下げざるを得ないかもしれないと述べました。

 李さんは2022年の夏に卒業しました。「経済状況が本当に悪い。修士号を取得するために勉強を続けている私の同級生は、今、学士号を取得したときよりも仕事を見つけるのが難しいと感じている」と彼は言います。

 中国国家統計局が9月20日に発表したデータによると、8月の16歳から24歳までの若年層(学生を除く)の失業率は18.8%に達し、7月の17.1%や6月の13.2%を上回り、過去最高を更新しました。

中国当局の抑圧で、企業は新規採用を大幅に削減

 厳しい就職状況を生んでいるのは、新卒者数の急増だけではありません。コロナのロックダウンが解除された後、中国経済は長期的な停滞状態に陥っており、新卒者の増加以上に若者の雇用に打撃を与えています。数年前、中国のテクノロジー、インターネット、家庭教師業界は多くの若者を雇っていましたが、中国当局の取り締まりによって、これらの企業は厳しい経営状況に直面し、新規採用を大幅に減らさざるを得なくなっています。
求人サイト「51job.com」の調査によると、昨年と同じ数の新卒者を採用している企業は30%未満です。この現象の主な原因は、多くの企業がコスト削減のために新規採用を減らしていることにあります。

 サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道によると、24歳の白雄(バイ・シュン、男性)さんは雲南省でビデオプロデューサーとして働いていましたが、先月末に会社から解雇されました。「もちろん、現状の経済には不満を感じている。ほぼお金を稼げていないからだ」と彼は言います。

 白雄さんは、上司から25%の減給を受け入れるか解雇されるかの選択肢を突きつけられ、後者を選びました。家族を養うために仕事を探すつもりですが、経済の現況では、多くの企業が業績不振で、新たな社員を採用したがらないため、仕事を見つけることは簡単ではないと彼は言います。

 新卒者にエントリーレベルの職を提供する業界は、特に打撃を受けています。不動産業界はいまだに危機的な状況にあり、デベロッパーが苦境に立たされています。かつては、多くの新卒者が不動産仲介人として活躍し、顧客を連れて1日に複数の物件を案内していました。しかし最近では、不動産市場の低迷により、多くの若い仲介人が生計を立てられず辞職に追い込まれています。

若者の心境:「躺平」「サボる」「親頼り」

 厳しい雇用市場を背景に、職を得た若者もまた苦しんでいます。高失業率の経済環境は雇用主にとって有利な状況を作り出しています。中国では、企業は長時間労働を強いる若者を簡単に解雇し、再雇用することができるからです。

 中国のSNSでは、若者が直面する状況を表す新たな流行語が生まれています。「躺平」のほか、過労を避けるために「サボる(摸魚)」という言葉や、仕事を持たず親に依存する「爛尾娃(ランウェイワー)」など、若者の将来に対する悲観的な心境が反映されています。

 最近では、河南省鄭州市、雲南省大理市、シーサンパンナ、重慶市、安徽省合肥市、浙江省寧波市などの郊外や農村地域で「青年養老院」が次々と出現しています。これらの「青年養老院」は伝統的な意味での老人ホームではなく、若者が「一時的な逃避、リフレッシュ、心身の癒やし」を得る場所として提供されています。

 中国メディアの報道によると、「青年養老院」は実際には心の休息地であり、人々は一緒にお茶を飲んだり、会話をしたり、畑を耕したり、スリッパや部屋着を着て簡単な食事を楽しんだりします。これは、長期にわたって高いストレス状態にある若者にとって心をリラックスさせる場所を提供し、都市の喧騒(けんそう)や緊張から遠ざけるためのものです。

 こうした就職難の中、今、「専業子女」という新しい職業が流行しています。「専業子女」は、一日中家で両親の世話をし、両親から給料をもらう息子や娘のことを指します。

 しかし、親が提供する一見安心に見える生活の裏には、「専業子女」の問題なども多くあります。結局、子供と両親には世代間の溝があり、生活習慣や価値観が異なっているため、意見不一致に遭遇すると、親を頼っている息子や娘が「人は軒下にいるから、頭を下げざるを得ない」、「人に食べさせてもらったり、人から物をもらったりすると、相手に頭が上がらなくなる」ことになります。

 また、SNS上で田舎での「引退生活」を送る様子をシェアする若者もいます。彼らは解雇されたり、辞職したり、そもそも職がない状態です。こうした自称「引退者」である「90後(1990年代生まれ)」や「00後(2000年代生まれ)」の若者たちは、すでに長期休暇を取っていたり、若くして失業してたりしています。

若者の失業率の高さが様々な社会問題を引き起こす可能性

 保銀投資(ピンポイント・アセット・マネジメント)のチーフエコノミスト、張智威氏は、サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に対し、失業率の高さが消費マインドを低迷させる理由は、人々が将来の雇用に対して不安を感じ、より多くの貯金をする必要があると考えているからだと述べました。

 ある政治アナリストは匿名でサウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に応じ、中国における革命や学生運動の勃発、犯罪の増加の主な要因は、歴史が証明している通り、若者の失業であると語りました。

 「若者の失業は、社会経済の発展や将来の見通しを示す重要な指標である。適切に対処しなければ、社会のあらゆる面で問題を引き起こすことになるだろう」と彼は述べています。

 同アナリストは、経済の不況が若年層の考え方に影響を与え、社会に未来がないと感じさせるマイナス的な感情を生み出しており、「一部の学生は、勉強しても意味がないと考え、学ぶ意欲を失っている」と指摘しました。
ミシガン大学の社会学准教授である周雲氏はロイター通信に対し、「多くの中国の大卒者にとって、大学の学位がもたらすはずだったより良い就職先、より大きな社会的な流動性、より明るい将来がますます手の届かないものになっている」と述べています。

(翻訳・藍彧)