今年7月以降、中国の複数の弁護士が「多くの地域の拘置所が満員になっている」とソーシャルメディアで相次いで発信しています。12人しか収容できない部屋に20人が詰め込まれ、その結果、拘留された人は「(人が密集している)雑魚寝状態」とのことです。一部の拘置所では、部屋が不足しているため、拡張工事が進められようとしています。

 中国最高人民検察院(SPP)が8月6日、ウェブサイトに発表した公告によると、今年上半期に検察機関が36万7000人の逮捕を認可し、76万1000人を起訴し、前年同期比でそれぞれ18.5%と6.8%増加しました。また、中国最高裁判所のデータによると、今年上半期だけで各級裁判所で判決を受けた被告人の数は前年同期比8.47%増加しているとのことです。5年以上の重刑を受けた者の数は減少していますが、3年以下の軽罪を受けた者の数は増加し、全体の87.04%を占めています。

判決を受けた理由

 では、これらの人々が逮捕され、判決を受けた理由は何でしょうか?投稿した弁護士たちは、以下の4つを挙げています。
 第一に、経済的な圧力の影響で、新たな経済犯罪が頻発しています。伝統的なビジネスが難しくなる中で、マルチ商法や仮想通貨詐欺など、グレーゾーンや違法な活動に手を染める人が増えています。また、収入が減少した企業の中には、架空の請求書を発行したり、契約詐欺を行ったりする経営者もいます。
 第二に、各地方政府がポルノ、ギャンブル、麻薬および新たな経済犯罪に対する取り締まりを強化しています。
 第三に、本来は犯罪にならない行為が犯罪とみなされるケースが増加しています。例えば、小規模なビジネスを許可なしに行った者が「違法経営罪」として起訴されるなどです。
 第四に、軽罪が重罪として扱われるケースが多くなっています。例えば、マージャンをやることが賭博罪とみなされるようなケースです。

税外収入が急増した重慶市

 上記の第二、第三、第四の理由から、経済が悪化している今、司法機関が罰金や没収金を得るために厳格な取り締まりを行っている可能性が高いと見られます。今年2月には、中国国内のメディアが各省の財政報告をもとに、2023年に16省で罰金や没収金の収入が急増している状況を報じました。

 「なぜ重慶市で罰金収入が最も急増しているのか?」という疑問について、同メディアは、重慶市の公式説明として「裁判所の判決により国庫に納められる罰金収入が増加したため」と報じました。この中には、必ずや不正行為が含まれているはずです。

 例えば、被告から多額の金を徴収するために、まず罪をでっち上げたり、軽犯罪を重罪に扱ったりするのです。拘置所内で支払いを拒否すれば、裁判所はより重い判決を下すことがあります。一度判決が確定すれば、政府は合法的な手続きを通じて、被告の全財産を没収することができるのです。

 興味深いことに、2023年に罰金収入が最も急増した重慶市では、2024年上半期に税外収入の割合が減少しています。その理由として考えられるのは、民間の財産がすでに収奪され尽くし、これ以上搾り取ることができなくなったからでしょう。

 ある地方の財政担当者は、近年税収が減少しているため、政府は「税外収入を増やして支出の不足を補おうとしている」と述べました。しかし、税収が減少している中で、罰金や没収金によって収入を増やすことができるでしょうか?

 国民が仕事を持ち、企業が事業を展開し、消費が盛んで市場が活況を呈している状況でこそ、税収は期待できるものです。しかし、政府が税収不足を補うために税外収入に頼らざるを得なくなった今、企業の倒産やリストラ、失業の深刻さ、影響を受けた経営者や労働者がどれほど困窮しているかは想像できるでしょう。食べることさえままならない人々に対して、強制的な手段で罰金を課して、政府は本当に望むものを手に入れることができるのでしょうか?

中国版『レ・ミゼラブル』

 中国当局の「厳しい取り締まり」は一見効率的に見えますが、パンを盗んで生き延びようとしている人々に適用されると、非常に滑稽です。いまや中国の人々はマルチ商法や詐欺に手を染めざるを得ず、企業もまた大量に偽造を行い、あらゆる手段で詐欺を働き始めています。これらはすべて、飢えに直面したときに、やむを得ず良心を失い、道徳的な規範を捨てざるを得ないという、無力な選択と言えるでしょう。

 フランスの著名な作家ヴィクトル・ユーゴーは、著作『レ・ミゼラブル』を通じて、後世に「パンを盗んだために投獄されたジャン・ヴァルジャンの運命が悲惨だったのは、彼が暮らしていた社会が特権と腐敗が横行する悲惨な世界だったからだ」というメッセージを伝えようとしたのではないでしょうか。つい最近、中国国内でもジャン・ヴァルジャンの物語を見直す人が現れ、「ジャン・ヴァルジャンの悲劇は彼が罪を犯したことではなく、未亡人となった妹と7人の子供たちがなぜ追い詰められたのか?国の福祉機関はなぜ彼らに食べ物を与えなかったのか?これこそが悲惨な世界の核心である」と指摘しました。

 また、1930年代の世界大恐慌時代の米国でも、孫が餓死するのを見かねてパンを盗んだ老婆がいました。法廷で裁判官は、彼女に10ドルの罰金か10日間の拘留かの二者択一を迫りました。この時、傍聴していたニューヨーク市長が突然立ち上がり、その場にいる全員に50セントを出すよう求め、老婆の罰金を支払いました。飢餓のために罪を犯した人は確かに有罪かもしれないが、多くの人々が飢餓に陥ったとき、有罪になるのは飢餓に苦しむ人々によって養われているこの政府なのだ、と彼が述べました。

 その後、彼は(当時の)ルーズベルト大統領に手紙を送り、大統領としての責任を問いかけました。半年後、米政府は福祉制度と慈善救済制度を導入し、ルーズベルトは福祉政策を推進した最初の大統領となったのです。

中国に貧しい人があふれている

 では、現在の中国はどうなっているのでしょうか?2024年8月19日、中国全土を震撼させる事件がインターネットで広まりました。名門大学を卒業した33歳の女性が、長期間にわたって仕事が見つからず、アパートで餓死していたのです。

 現在、中国では男が盗み、女が売春を取り締まっても消えない状況にありますが、これは単にモラルの崩壊によるものではありません。これは中国国民が正当な手段で生活を営む権利を強制的に奪われていることが根本的な問題です。中国国際金融の統計によると、月収1000元(約2万円)以下の中国人は5億4600万人に達し、5000元(約10万円)以上の収入を持つ人口はわずか5%です。

 中国の街には、「パンを盗もう」、または「盗んでいる」といった貧しい人々があふれています。しかし、中国当局は特権階級の腐敗した生活を恥ずかしげもなく維持するために、いまだにあらゆる手を尽くしています。

 最近、中国のある高官の子孫とみられる人物が中国のSNSで「富を誇示」し、20歳の誕生日に祖母から1.8億元(約38億円)の誕生日プレゼントをもらったと強調し、銀行口座に24億元(約2600億円)もの預金があることを晒して、ネットユーザーの間で大きな注目を集めました。

 中国当局の政策は、結果的に政権の持続を脅かす要因となり得ます。ヴィクトル・ユーゴーが描いた悲惨な世界と同様に、中国当局が生み出した現実も、歴史の一過程に過ぎないでしょう。このページがめくられる時、中国当局は自らの行く末に直面することになるかもしれません。

(翻訳・藍彧)