最近、オーストラリア在住の華人、ジェームズ・チェン(James Chen)氏が、大紀元に対し、北京での見聞を明かしました。彼は、当局が北京市民に対して、厳しい統制を行っており、その厳しさに驚愕したと述べています。また、中国共産党が政権の不安定化を恐れている様子がうかがえ、その統制の厳しさが、「信じられないほど」だと感じたそうです。

 幼少期を北京で過ごしたチェン氏は、今回の帰国後、中国の厳しい民生の現状を目の当たりにしました。彼は「北京とその周辺地域では、公務員の給与が削減され、政府による賃金未払いが横行しています。貧しい家庭は子供を大学まで進学させるために、苦労していますが、卒業後も失業状態が続いています。病院の商業化が進み、医療資源の無駄遣いが深刻で、企業と官僚の癒着も横行しています。これらの問題に対して、民間では不満の声が高まっています」と述べました。

 チェン氏は「現在、一般市民の生活は非常に苦しい。例えば、タクシー業界は非常に不振で、普通のタクシー運転手は、1日で200元しか稼げず、300元にも届きません。彼らは毎日10時間近く働いていますが、DiDiやUberのライドシェア運転手も1日の収入が300元程度で、非常に厳しい状況です」と語りました。

 「飲食店は冷え込み、ショッピングモールも人影がほとんど見られません。経済は非常に厳しく、国民は不満を抱いていますが、誰も声を上げることができません。さらに、こうした厳しい状況下で、当局は定年を3年延長する政策を打ち出しました。公務員や一般市民、国営企業の従業員を問わず、皆が政府に対して不満を抱いています。政府は3年間の『ゼロ・コロナ』政策を続け、その負担をすべて国民に押し付けたのです。現在、北京市のすべての公務員が、20%の給与削減を受けており、企業や病院でも同様に給与が削減されています」と述べました。

 また、チェン氏は北京周辺の省や市も訪れ、公務員の状況を調査しました。「昨年の冬に訪れたとき、彼らはまだ前年の給料が支払われていないと話していました。私は東北三省、河南、河北、山東を訪れ、多くの地域で同様の状況が確認されました。政府機関で働く公務員も厳しい状況に置かれています。例えば、水利局や電力局のような政府機関、さらには学校の教師でさえも、給与が未払いのままです」とチェン氏は述べました。

 「多くの人々は、以前は1万5000元の給与を得ていたのに、今では8000元しかもらえません。それでも、医療保険と社会保険がある限り、誰も簡単に辞めようとはしません。若者たちは今、将来に対する希望をまったく持てなくなっています」

 さらに、彼は、政府や事業単位内部での不条理な競争が非常に激化し、内部対立が蔓延していると指摘しました。「今や、事業単位や政府機関では、互いに争い合う状況が非常に激化しており、その対立はますますエスカレートしています」と述べました。

 また、チェン氏は、政府の未払い債務も深刻であると指摘しました。「例えば、河北省の市や県では、政府が事業を行う際、入札を受けた業者が工事を完了しても、政府には支払う資金がなく、20年後に支払うという約束で、政府の印鑑を押すだけの状況です」と述べました。

家族全体が大学生を支えるが、卒業後は失業

 中国の経済が低迷し、企業の倒産や失業率の上昇が続く中で、最も影響を受けているのは若者たちです。公式統計によれば、今年8月、若者の失業率は18.8%に達し、過去最高を更新しました。

 チェン氏は「現在、北京の大学卒業生が仕事を見つけるのは、非常に難しい状況です。今では北京だけでなく、中国全体で35歳以上の人が仕事を見つけるのは、非常に困難です。多くの人が出稼ぎに海外に行っています」と指摘しました。

 また、彼は大学生が直面しているプレッシャーにも言及しました。「政府は、大学生が騒がなければ、彼らの生死に関心を持ちません。大学生同士が激しい競争にさらされ、良い大学に入れなければ将来が閉ざされます。そのため、親たちは貧しくても全財産を子供の大学教育に注ぎ込んでいますが、大学卒業後に待っているのは、希望のない現実です。多くの貧困地域出身の学生たちは、教育を通じて運命を変えようと努力してきましたが、現在、国は就職の保証をしていません。極めて優秀な成績を持つ一部の学生のみが、重要な部署に採用されるという状況です」と述べました。

病院の商業化と資源の無駄遣い

 チェン氏は、中国の病院の現状にも触れ、病院の商業化が進み、医療資源の無駄遣いが深刻であると述べました。「例えば、一般市民が病院で診療を受ける際、ある病院で超音波検査を受けても、別の病院では再度同じ検査が必要になることがあります。異なる病院同士で検査結果が認められないため、結果として多くの重複検査が行われ、医療資源が無駄に使われています」と述べました。

 また、北京の三甲病院(中国で最高レベルの病院)では、毎日多くの患者が訪れ、予約なしで診療を受けることがほぼ不可能な状況であり、駐車場の待ち時間も数時間に及ぶことが一般的だといいます。「特に北京の三甲病院では、毎日長い列ができており、患者は診療の順番を待ち続けています」と彼は語りました。

市民の不満と社会の暴力化

 チェン氏は、出国前と比較して、現在の北京での暴力事件が増加していると感じています。その原因として、貧富の格差の拡大を挙げました。「生活水準が下がり、貧富の差が広がっていく中で、富裕層はほとんどが紅二代(高級幹部子弟)か富二代(お金持ちの子弟)といった背景を持っており、一般市民には発言権がありません。社会の不公正が民衆の怒りを増幅させています」と述べました。

 また、彼は、現在の中国でお金を稼ぐことができるのは、政府との癒着がある者だけだと指摘しました。「普通の人が自分の力でお金を稼ぐのは不可能です。ほぼすべての企業が脱税しており、政府は選択的に取り締まりを行い、企業が政府に従わない場合は、いつでも制裁を加えることができます」と述べました。

無駄な税金の使い方と外国への援助

 彼はさらに、「政府が徴収した税金は無駄に使われ、さらにアフリカへの援助が続けられています。市民は不満を抱いており、北京だけでなく地方でも『また黒人が援助を求めに来た。中国にはそんなにお金があるのか?』という声が上がっています。3年間のパンデミックで中国の財政は空っぽになり、北京郊外ですら資金が枯渇しているのが現状です」と指摘しました。

 最後に、チェン氏はこう結びました。「人民こそが国家の基盤であり、政府はその人民を支えるべき存在ですが、現在の政府は国民を抑圧し、民間の不満が頂点に達しています。」

(翻訳・吉原木子)