セイヨウイラクサの若葉(No machine-readable author provided. Pokrajac assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 6月中旬、アメリカ・カリフォルニア州のシェラネバダ山脈でスリリングな救出事件が起きました。ある女性登山者が登山中に突然両足の感覚を失ったことにより、緊急救助活動が行われました。

 ニューヨーク・ポスト紙によれば、カリフォルニア州インヨ郡捜索救助隊から入ったニュースでは、6月12日午後6時30分頃、この女性登山者はタブーズ峠の小道脇の渓流で取水していた時、突然刺すような痛みを感じたそうです。最初はクモに噛まれたかと思いましたが、その後すぐに自分の両足の感覚がまったくないことに気づき、これ以上、下山することができないと思いました。

 そのような危機的状況の中で、彼女は充電の少ない携帯電話を使って救助を呼び、携帯電話のバッテリーが完全に切れる前に自分の現在地の位置座標を伝えることに成功しました。

 インヨ郡の捜索救助隊は直ちに救助活動を開始しました。彼らは険しい山道を車輪付きの担架を押して1.75マイル(約2.8キロ)にわたって進みましたが、その負傷者のところから0.25マイル(約400メートル)離れたところで、道があまりにも危険な急勾配だったため担架を使い続けることができなくなりました。救助隊は担架をいったん脇に置き、負傷者を見つけるために徒歩で前進しなければなりませんでした。

 最終的に、救助隊は動けなくなったその女性を発見しました。彼らは慎重にロープを使って女性の安全を確保し、危険な区間をゆっくりと誘導しました。すべての救出作業は5時間にも及んで続けられました。

 その後の医学的な検査で予想外の事実が発覚しました。女性登山者の両足が麻痺したのはクモに噛まれたからではなく、一般的によく見られる植物である「セイヨウイラクサ」によるものだったのです。

 なんと、その女性はマーサーパスの積雪を避けるために、うっかりタブーズパスの小道のセイヨウイラクサの茂みに足を踏み入れてしまったのです。この人跡まれな小道はふだん、ほとんど整備されていないため、通常はジープでしか通行できません。

 セイヨウイラクサはアメリカの大部分の地区に生息しています。セイヨウイラクサはキャットミントなどのハーブ植物に似ており、緑がかった白い花などを咲かせます。データが示すように、セイヨウイラクサの葉と柔らかい茎は刺激性物質を含む細い毛で覆われています。人の皮膚に接触すると、これらの細い毛からカルボン酸を含む刺激物質が放出され、灼熱感、刺痛とかゆみを伴う発疹を引き起こします。

セイヨウイラクサの模式図(Otto Wilhelm Thomé, 1885)(パブリック・ドメイン)

 幸い、これらの症状は通常24時間以内に消失します。警察当局の事後調査報告書には、その女性登山者は現在順調に回復していると記されています。この事件はアウトドア愛好者たちに、同様の予想外の事故の発生を避けるために、野外活動に対する警戒心を高め、周囲の植生を識別するよう注意を与えました。

 今回救援活動にあたったインヨ郡捜索救助隊は、インヨ郡治安管理事務所に協力するNPOのボランティア組織です。彼らはフェイスブック上で救助活動の結果を投稿し、注意喚起をしました。救助隊がこれまでに受けた救助要請の半数が、携帯電話のバッテリーが切れそうになっていた人たちからのものでした。ですから、登山の際には必ず携帯電話の予備電源を用意すること、さらに携帯電話のバッテリーを消耗させるいかなるものも使用しないようにと言っています。また、もし可能であれば衛星通信デバイスを持って山に入ることが望ましいとのことでした。

(翻訳・夜香木)