中国当局の公式宣伝では、「労働者の満足感、幸福感、安全感を絶えず高める」というフレーズが頻繁に使われています。しかし、最近行われた中国人の経済状況に対する見通しを調査したところ、習近平氏が就任した当初と比べて、将来を楽観視する中国人の割合が激減していることが分かりました。

 ラジオ・フリー・アジアの報道によると、英国放送協会(BBC)はハーバード大学のマーティン・キング・ホワイト教授とスタンフォード大学のスコット・ロゼル教授が中国の学術界と協力して行った調査データを引用し、中国人の経済見通しに対する見方が過去20年間でどのように変化したかを調べたところ、習近平氏が就任後、中国人の未来に対する悲観的な見方が増していることが明らかになっています。

 同調査チームは、2004年、2009年、2014年、2023年に、20歳から60歳の中国人3000人から7500人を対象に調査を実施しました。その結果、2004年には回答者の60%近くが家庭の経済状況が5年前より良くなっていると考えており、また5年後の見通しについても楽観的であることが分かりました。

 習近平氏が就任直後の2014年には、生活が良くなったと感じる人の割合は76.5%、将来が良くなると予想する人の割合は73%と、それぞれ最高を記録しました。しかし、2023年のデータでは、経済状況が改善したと感じる人はわずか38.8%、将来がより良くなると予期する人は47%にまで減少し、最高値から26%の大幅な減少となっています。さらに、未来に対して悲観的な人の割合は、2004年の2.3%から2023年には16%に増加しました。

 また、努力が報われると信じる中国人がますます少なくなっていることも明らかにしました。2004年には60%以上の人が努力に報いがあると感じていたのに対し、2023年には28.3%にまで減少しました。多くの回答者は、政府にコネのある人や特権のある人が裕福になれる要因だと考えており、勉強や能力、才能ではないと述べています。

悲観の原因「チャンスが幹部子女に独占されているからだ」

 中国人留学生であるTomさん(男性)も、この調査チームが指摘した中国社会の現象に賛同しています。彼は、近年の競争問題が深刻であり、彼が通っていた中国の名門大学でさえも多くの同級生が仕事を見つけるのに苦労していると述べました。また、中国の社会資源の不平等な分配が、努力しても生活状況を改善することができない原因であり、これが将来に対する悲観的な見方を生んでいると言います。

 Tomさんは次のように語りました。「現在、私の周りには博士号を取得した多くの中国留学生がいるが、彼らも中国に戻って仕事を見つけることができない。しかし、親が政府高官を務めている同級生たちは、この経済低迷の波を利用して資源を独占している。中には、最近オフィスビルを購入した者さえいる。昔、学校の先生は、一生懸命勉強すれば運命を変えられるとよく言っていたが、今や政府内部の推薦プログラムを利用して、彼らは直接良い職場に入ることができ、リーダーの職に就くことさえある。名門大学の博士号を取得しても、コネのある彼らは常にあなたの上にいる。中国で勉強しても運命を変えることは基本的にありえないし、階層を飛躍させるのは非常に難しい」

 Tomさんはまた、中国の経済環境は厳しく、市場が縮小しているため、人脈やコネのない若者は幹部子女との競争に勝つことがますます難しくなっていると指摘しました。そのため、Tomさんのように多くの留学生が中国に戻ることを選ばず、より公平な社会環境を求めて海外で活躍の場を探す傾向が強まっています。

習近平による民間経済への圧力と失業の増加が悲観を加速

 エコノミストである司令氏(男性)は、米国の学者の研究結果は参考になるとし、中国経済の重要な部分である民間経済が「共同富裕」や「国進民退」といった政策の影響を受けていると述べました。その結果、若者の雇用機会が失われ、より高い階層に上がるチャンスをなくしただけでなく、深刻な失業問題を引き起こし、国民が希望を見いだすことが困難になっていると彼は指摘しています。

 司令氏は中国の経済状況を次のように語りました。「中国当局の上層部が経済発展の方向性を劇的に変えているため、ここ数年間で大きな変化を遂げた。最近の5、6年間、中国当局は民間経済を中国経済から排除する動きを加速させており、その結果、民間企業は今や中国で最も圧迫されている経済グループとなっている。民間企業を圧迫することは、数億人の中国人労働者の生活を絶望的な状況に追い込むものであり、中国経済の未来に対する悲観的な感情が社会全体に蔓延する原因となっている」

 2021年、習近平氏は貧富の格差を縮小する名目で、「共同富裕」と呼ばれる政策を実施しました。しかし、それを実施した結果、貧しい人々は豊かにならず、逆に富裕層が貧しくなっただけでした。

 「共同富裕」政策が推進されて以来、多くの資本家や金融投資家が当局による調査を受けました。また、若年投資家は利潤を得やすい投資銀行などの業界を敬遠するようになり、中国の株式市場も下落の一途をたどっています。

 過去3年間で中国の個人資産は大幅に減少し、億万長者の数は35%も減少しました。一方で、中国を離れる富裕層の数は急増し、昨年にはその数が15000人に達しました。国内に残った超富裕層は、当局に目をつけられないよう、慎重に生きているとのことです。

不動産崩壊で負債まみれの中国人が将来を見失う

 米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授は、コロナ後に中国市場と民間経済の蜜月時代が終わったことを強調し、経済成長による富の蓄積がもはや期待できないことを指摘しています。また、不動産バブルの崩壊により、国民の富が急速に縮小し、経済が向上するという幻想は消え去ったと述べました。

 謝田教授は、不動産崩壊がもたらした影響を次のように語りました。「中国当局は国民が約300兆元(約6300兆円)の貯蓄を持っていることに目をつけている。中国当局は不動産を使い、今度は株を使い、国民の財産をさらに巻き上げ、政府の赤字と債務を補填しようとしている。国民は、自分たちが持っている不動産の価値が急落していることに気づくが、その一方で負債は依然として背負わされている。今の問題は共同富裕ではなく、負債が積み重なっていることだ。この状況では、中国国民は中国当局に対する一縷(いちる)の幻想すらも捨て去っている」

 時事評論家の方原氏は、中国の上層部の経済設計が逆効果を招き、社会が動力を失い、経済が後退していると指摘しています。また、急激に変わる政策環境の中では、国民が未来を計画し評価することが困難であるため、将来に対する楽観的な見通しは期待できないとも述べています。方原氏はまた、最新の経済救済政策については楽観視できないとし、数兆元の通貨を投じることで、中国のすべての経済問題を解決できるのなら、世界に経済問題は存在しないだろうと語りました。

(翻訳・藍彧)