中国経済は引き続き低迷しており、9月末に当局が一連の刺激策を発表したものの、これらの政策の多くは株式市場を活性化させ、不動産市場の崩壊を防ぐことに重点を置いており、実体経済への効果はほとんど見られていません。10月初めの大型連休中には、工場が次々と倒産するという報道が相次ぎ、各地の市場も一様に不景気な様子を呈しています。
10月4日、大型連休が半ばに差し掛かった頃、中国のネット上には多数の動画が出回り、広東省東莞市や浙江省杭州市などの製造業が盛んな地域で、工場経営者が連休を利用して、こっそり機械設備を売却し、資金を持って逃亡する様子が映し出されました。動画では、工場の設備がすべて撤去され、経営者が行方不明になっているという状況が伝えられています。従業員は賠償金を受け取れないだけでなく、未払いの給与も貰えなくなっています。
さらに、連休中の市場の不景気を伝える動画も各地から上がっています。多くの私営企業の経営者は、連休中に大きな利益を上げることを期待していましたが、現実は予想を裏切るものでした。福建省厦門市、広東省東莞市、海南省三亜市、上海市などの大型商業施設や商店街、観光地は閑散としており、甘粛省隴南市のある県の中心部では、営業している店が数えるほどしかなく、残りの店舗はすでに閉鎖されています。
しかし一方で、連休中に観光地が観光客で賑わっている様子を映した動画も数多く見られます。中国交通運輸部は、連休中の全国の跨区域移動量が19.4億人回に達し、日平均2.77億人回、前年同期比0.7%増加すると予測しています。中国旅游研究院の戴斌院長は、国民の旅行意欲や予約指数、各地の旅行準備状況を踏まえ、2024年の国慶節の旅行者数は再び過去最高を更新すると予測しています。
この現象に対して、「お金がないと言われているのに、なぜこんなにも多くの人が旅行に行くのか?」という疑問を抱くかもしれません。実際、これは現在の中国で進行している消費の低迷を反映しています。
経済学でいう「リップスティック効果」は、景気が低迷している時に、比較的安価な贅沢品である口紅の売上が逆に増加するという現象を示しています。つまり、消費者は、経済危機に直面すると、高価なバッグや毛皮のコートよりも、手頃な贅沢品を選んで消費欲を満たす傾向があるのです。
現在の中国はまさに経済不況の時期にあり、多くの人が失業や給料の減額のプレッシャーに直面しています。このような社会背景の中で、人々はお金を使うことに慎重になり、あるいは使う余裕がなくなっています。車や住宅などの高価なものを買う余裕はないが、少しでも消費欲を満たしたいという思いから、比較的安価な旅行を選ぶ人が増えています。それでも、多くの人はできる限り節約しながら「貧乏旅行」をする傾向が強く、無駄な出費は避け、買い物を控えることが多いです。そのため、多くの人が旅行に行っている一方で、商業施設が閑散としているという現象が起きているのです。
ロイター通信によると、北京の会社員である王さんは、連休中に家族と車で揚州に行く予定だと言います。彼女は、「連休中は高速道路の通行料金が無料なので、電車ではなく車で行きます。この経済状況では、不必要な出費は避けるべきです。今はまさに消費のダウングレードです。パンデミック前の連休では、家族と一緒に東南アジアやアメリカに行くことが多かったです。」と話しています。
また、ネット上では「パンデミック前には今住んでいる家を売って、少しお金を足してもっと大きな家に引っ越そうと考えていたが、今ではその考えがすっかり変わってしまった。数十万のローンを背負うよりも、家族を連れて旅行に行き、外の世界を見た方がいい」というコメントも見られます。
また、「本当のお金持ちは、連休中に旅行に行くことはしません。連休中は人が多く、交通渋滞もひどいです。本当にお金に余裕のある人は、いつでも好きな時に旅行ができるのです。私たちのような普通の人々は、やっとの思いで手に入れた休暇に、何千万人もの人々と高速道路や地下鉄、観光地で押し合いへし合いするしかありません。」とコメントしたネットユーザーもいます。
(翻訳・吉原木子)