中国の若年失業率は8月に18.8%に達し、今年に入って以来、過去最高を記録しました。中国当局は失業問題に対応するために、24項目の雇用対策を発表しました。その中で最も注目されているのは、「大規模な失業リスクを回避することをボトムライン(最低のライン)とする」という表現であり、現在の中国の厳しい雇用環境を浮き彫りにしています。

 9月25日に中国共産党中央委員会と国務院が共同で「雇用を優先し、質の高い十分な雇用を促進する戦略の実施に関する中国共産党中央委員会・国務院の意見」(以下「意見」と称する)を発表しました。その中で「全体要件」のセクションでは、「大規模な失業リスクを回避することをボトムラインとし、労働者の安定した雇用、適正な収入、確実な保障、職業上の安全を実現することを推進する」と言及しました。新華社通信の同日の報道で分かりました。

 《意見》は、就職が困難な人や卒業後2年以内に就職していない大学卒業生がフレキシブルな形で働く場合、規定に基づき一定の社会保険補助を提供することを指摘しています。また、3億人の農民工(出稼ぎ労働者)に対して、農村労働力の雇用機会と収入拡大の余地を広げ、地方振興のニーズに適応する新しい職業をいくつか導入し、出稼ぎ労働者の帰郷や都市部の人材による農村での起業を促進する方針です。

 関連ニュースのコメント欄では大きな反響を引き起こし、多くの人々が「どうやって実行するのか」、「空虚な政策なら誰にでもできる」といったコメントを寄せ、「内容が空虚で抽象的だ」と批判する声や、「民間が強ければ国も強くなる」と指摘する意見も見られました。

中国当局は破綻リスクを回避するのみ?

 時事評論家の鄭旭光(ていきょくこう)氏は、「意見」には「大規模な失業リスクを回避することをボトムラインとする」という比較的新しい表現があり、つまり「大規模な失業リスクがある」という意味だと指摘しました。
鄭氏は例として、2022年末の中共中央経済工作会議でも「不動産の破綻、地方債務と中小金融機関の破綻を防ぐ」と述べたことを挙げました。これらの3つの問題は今も完全に解決されていません。ただ単に、さまざまな方法でいわゆる「緩和」や「解消」を図り、破綻を回避しようとしているに過ぎません。これは金融業務の最低限の基準であり、金融リスクが発生しないようにすることが求められています。

 「大規模な失業は新たなリスクだ。『全体要件』の中で最も重要な内容は、ボトムラインが大規模な失業リスクを発生させないことだ。『24項目の雇用対策』は確かに包括的なものであり、その方向性も良いものだが、(問題は)どうやって実行に移すのか?」

外資系企業が撤退・民間企業が衰退・雇用が崩壊

 中国の経済学者、賀江兵氏は、中国人民銀行が発表した今年上半期の新規融資額は毎月1兆元(約21兆円)以上だったが、7月と8月は1000億元(約2兆円)にまで減少し、融資額は約9割減少したと指摘しました。「7月と8月は地方政府の金融融資が多く見られたが、企業や個人はほとんど融資されておらず、経済が成長しない中、企業には仕事がないので、従業員を必要とする理由もなくなった」と賀氏は述べました。

 賀氏はまた、中国企業が抱える問題について、国内資本企業と外資系企業の2つがあると分析しています。最初にアメリカやフランスの企業、台湾系企業が撤退し、その後、韓国のサードミサイル配備システムをめぐる事件で韓国のロッテやサムスンも撤退しました。続いて反日事件が発生し、日本企業の約3分の2が撤退しました。さらに米国の経済制裁やウクライナ問題に直面する欧州の企業も撤退し、先進国の企業はほぼすべてが中国から撤退し、産業チェーンも一緒に持ち去られました。

 「民間企業は新規雇用の80%以上を占めているが、外資系企業が撤退した後、国内資本企業も閉鎖に追い込まれた。2021年からは不動産業界への圧力が増し、ネット経済やゲーム産業、教育産業も次々と打撃を受けた。外資は撤退し、国内資本も一部は外資に追随して一緒に撤退し、一部は倒産し、企業の移転が進んだことで、雇用問題が深刻化したのだ」と賀氏は指摘しています。

民間企業の安定が雇用の安定だ

 賀氏は企業を安定させることが雇用を安定させる唯一の方法だと述べました。中国当局は国有企業をより大きく、より強くしようとしているが、半導体チップのようなハイエンド産業を優遇し、電気自動車、バッテリー、太陽エネルギー産業のような新しい生産力を推進する傾向があります。しかし、これでどうやって雇用問題を解決できるのでしょうか?「大量の雇用はやはり伝統産業に依存しなければならず、これまで軽視されてきたこれらの産業が今になって注目されるようになったのだ。しかし、もう手遅れだ。今や撤退した企業を中国に呼び戻すしかなく、そのためには対外関係を改善する必要がある」と賀氏が述べました。

中国当局、再び民間企業の安定や外資を呼び戻すと叫ぶ

 9月24日、中国国務院新聞弁公室が記者会見を開きました。鄭旭光氏によると、記者会見に参加した中国人民銀行、国家金融監督管理総局、証券監督管理委員会が発表した零細・小企業が元金を返済せず、利息のみを返済する場合、貸付期間を延長することができるという内容から、いくつかの非常に重要な情報が見て取れると言います。本来ならば、企業が元金を返済できない場合は清算されるべきですが、零細・小企業の存続を支援するために、元金を返済せずに利息のみを返済することで倒産を回避し、今後は中堅企業にもこの方針が拡大される予定です。これが「雇用支援策」として評価されています。

 鄭旭光氏はまた、次のように述べました。「雇用問題の解決は主に中小企業によって担われているため、これらの企業を救済しなければ大きな問題が生じる。また、不動産業の救済も雇用問題の解決に直結している。さらに金利緩和も、消費と投資を刺激するための措置である。「貯金が得策ではないため、企業に投資を促し、消費者には買い物を強いる」

 中国共産党中央政治局も9月26日、現在の経済情勢と経済工作に関する分析会議を開催しました。同会議では、中国の経済運営に新たな状況や問題が生じていることが指摘されました。また、企業が困難を乗り越えるための支援が必要であることや、民間経済を促進するための法律を制定し、非公有制経済の発展に良好な環境を提供する必要性が強調されました。さらに、外資の誘致と安定化を図るため、製造業分野での外資参入などの改革措置を早急に推進し、市場化、法治化、国際化をさらに進め、一流のビジネス環境を提供する方針が示されました。

(翻訳・藍彧)