中国経済の低迷が続く中、大学生は「卒業即失業」という厳しい状況に直面しています。最近、黄色い配達員の制服を着た男性が、大学の卒業証書を手にした告白動画が、ネットユーザーの涙を誘いました。

 別の動画では、多くの若者がチケット売り場の床に、倒れ込むように横たわっている様子が映されています。撮影者によると、彼らは仕事を見つけられない大学卒業生で、卒業後に月給1万元以上の仕事を、見つけられると思っていたが、現実は普通の仕事さえ見つけるのが、難しいとのことです。

 中国教育部の統計によると、2024年の中国の大学卒業生数は1,179万人に達し、2023年より21万人増加し、過去最高を記録しました。

 中国人的資源・社会保障情報センターが6月に発表した、「2024年大学生就職調査報告」によれば、4月中旬までに内定を受けた新卒者はわずか47.8%で、昨年の50.4%を下回りました。多くの大学生は「卒業即失業」という窮状にあります。

 また、中国国家統計局のデータによると、7月の中国の若者失業率は、6月の13.2%から、17.1%に上昇し、今年に入ってからの最高記録を更新しました。この統計には、在学中の学生や、他の年齢層の失業率は含まれていません。

 昨年6月、若者の失業率が21.3%のピークに達した後、中国当局は失業率のデータの公表を停止しました。今年1月には、失業率の統計方法が変更され、表面上は若者の失業率が、大幅に低下したように見えます。しかし、失業率の上昇は、中国経済の持続的な低迷と、民間企業の縮小に起因しています。

 中国国家統計局の発表によれば、2024年上半期の中国国内総生産(GDP)は、前年比5.0%増加し、61.7兆元に達しましたが、多くの専門家は工場生産、消費、投資が期待を下回っていると考えています。たとえば、8月の工業生産は前年比4.5%増で、予想の4.8%を下回りました。小売額は前年比2.1%増で、予想の2.5%を下回り、固定資産投資も前年比3.4%増で、予想の3.5%を下回っています。また、失業率は5.3%に達しています。

 アメリカ在住の上海出身の企業家である、胡力任氏は、中国の大学生の実際の就職率は、公式発表よりもはるかに低い可能性があると指摘しています。同氏は、「中国の教育システム自体が問題を抱えています。この数十年、中国の高等教育産業は、非常に歪んだ形で発展してきました。1990年代から大学の数が増え、2000年ごろには、教育業界が産業化され、さらに拡大が進みました。これにより、教育が金儲けの手段に変わり、卒業生が企業に採用されなかったり、専攻と仕事が一致しなかったりするケースが増えました。学生が卒業すると、学んだ内容を活かせないことが多く、理系の学生でさえも、最終的にサービス業に従事することが一般的です」と述べました。

 この現象により、知識がほとんど必要ない配達業界でさえも、競争が激化しています。一部のフードデリバリー配達員は、より多くの注文を獲得し、早く配達するために、高速道路を危険な速度で走行しています。

 さらに、悪天候にもかかわらず、配達員や宅配業者は業務を続けています。9月16日、台風13号が上海に上陸しましたが、いくつかの配達員は、台風の中でも配送を続けていました。

 あるネットユーザーが投稿した動画では、台風の影響で無錫市では強風と豪雨が発生し、一人の配達員が風雨に立ち向かいながら配達しようとしています。強風に煽られながら彼は前進できず、配達する商品は風に飛ばされてしまいました。それでも、彼はバイクを支え、商品を拾い上げ、再び風に立ち向かって配達を続けました。この動画が公開されると、多くのネットユーザーが感動し、「生活のためでなければ、誰が台風の中でこれほど命懸けで働くのか」、「彼は誰かの息子であり、夫であり、父親でもある。なぜ中国人の生活はこんなにも厳しいのか」とのコメントが寄せられました。また、「こんな悪天候でも注文する人がいるのはおかしい。配達プラットフォームはどう対処しているのか?もし時間を超過した場合、この配達員は罰金を科されるのだろうか?」と疑問を投げかけるネットユーザーもいます。これに対し、ある現役の配達員は、「台風のような悪天候でも、配達員に与えられる超過免責時間は10分しかない。10分を超えると、やはり罰金を科される」と答えました。

 このように過酷な労働をしても、配達員たちはかろうじて、生活費を賄える程度の収入しか得られません。調査によると、日本のUber Eatsの1件あたりの平均報酬は、598円ですが、中国の主要な配達プラットフォームである美団、百度、饿了么などの平均単価は、6元程度です。さらに、競争が激しく、配達員の数が飽和状態にあるため、各プラットフォームは、コスト削減と競争力向上のために、厳しい配達時間を設定しています。時間を超過すると、配達員は罰金を科されるだけでなく、注文を受け取れなくなるリスクもあります。

 中国の若者は、経済低迷だけでなく、不公平な競争環境にも直面しています。一部のネットユーザーは、現在の若者には「巻(競争)」「躺(躺平)」「潤(脱出)」「献(暴発)」の4つの道しか残されていないと指摘しています。「巻」は同業者や同僚との過酷な競争で、休息時間を犠牲にして必死に働き続けることです。「躺」は躺平で完全に競争せず、仕事探しや働く意欲を失い、親に依存するか、これまでの蓄えを使い果たすことです。「潤」は中国から脱出することです。「献」は社会に対する不満を暴力的に発散し、無関係の人々を傷つけることを指します。