近年、中国の地方政府の債務問題は深刻化しており、多くの地方官僚が業績を誇示するためにインフラ事業に投資しています。その中でも、リスクの少ない路面電車が特に選ばれています。しかし、建設コストが非常に高く、一部の路線では利用者が少ないため、運行停止や撤去に直面する路線が増加しています。

 『星島日報』によると、近年、中国の多くの都市で路面電車のプロジェクトが乗客不足や高額な運営コストのため、運行停止、撤去、もしくは建設中止に追い込まれています。これにより、路面電車は一部の都市で大きな財政負担となっています。

 例えば、広東省仏山市高明区の水素エネルギーを使用した路面電車は、8.38億元(約170億円)を投じて建設されましたが、運行開始から5年も経たないうちに、「システム設備の点検」のため突然運行が停止され、再開時期は未定です。

 業界関係者は、路面電車の点検は通常、夜間に行うことができ、長期間の運行停止は不要であり、実際の原因は乗客数の不足による採算割れだと指摘しています。

 高明市の路面電車は世界初の水素エネルギーを動力とする路面電車として知られていますが、多くの仏山市民からは、この路線が短距離で、駅の数も少なく、他の公共交通機関との連携が不十分だという不満が寄せられています。

 この問題は仏山市だけではありません。今年初め、甘粛省天水市では90億元(1822億円)の借金をして、路面電車を建設し、年間3,800万元(約7.7億円)の赤字を生み出していることが報告され、大きな財政浪費が問題視されています。

 昨年、上海市の張江路面電車1号線や天津開発区導軌電車1号線(てんしんかいはつくどうきでんしゃ1ごうせん)も撤去されました。さらに、青海省、雲南省、重慶市、寧波市、合肥市などの省・市でも路面電車の建設が中止されるか遅れているというニュースが相次いでいます。

 近年、路面電車の建設は審査基準が低く、比較的簡単に進められるため、中国の地方政府はこぞって建設を推進してきました。しかし、これらのプロジェクトは高額な建設コストと低い乗客数とのギャップに直面しており、財政補助は底なしの状態です。昨年末時点で、中国全国で路面電車を運行している都市は23都市ありましたが、中国の国家発展改革委員会が定めた基準「初期の旅客輸送密度は1キロメートルあたり1日1万人以上」に達した都市はわずか27.6%でした。

 業界関係者は、近年中国の多くの都市で路面電車が運行停止、撤去、または建設中止の窮地に立たされていると指摘しています。しかし、これらの高コストで無駄なプロジェクトを開始した官僚が責任を追及されることはなく、地方政府は依然として現実に見合わないインフラ建設を推し進めており、大量の公金が浪費されています。

(翻訳・吉原木子)