中国全国人民代表大会常務委員会は13日、2025年元旦から法定退職年齢を延長し、現行の退職年齢より3~5年遅らせることを正式に発表しました。男性の退職年齢は63歳に、女性職員は55歳、女性幹部は58歳に延長されます。この調整は今後15年かけて段階的に実施される予定です。

 中国全国人民代表大会常務委員会は13日、「法定退職年齢の段階的な延長に関する決定」を可決しました。これにより、2025年1月1日から段階的に退職年齢が延長されることとなります。公式発表によれば、男性職員の退職年齢は60歳から15年かけて63歳まで延長され、女性職員は従来の50歳(職員)および55歳(幹部)から、それぞれ55歳および58歳に延長されます。

 さらに、同日に承認された「法定退職年齢の段階的延長に関する国務院の施行方法」では、2030年1月1日から職員が年金を月単位で受け取るための最低拠出年数が15年から20年に段階的に引き上げられます。毎年6カ月ずつ拠出年数が増加します。法定退職年齢に達しても最低拠出年数を満たしていない職員は、拠出期間の延長または一時金の支払いによって基準を満たし、その後、年金を月単位で受け取ることができます。

 また、この方法では、最低拠出年数を満たした職員は、最長で3年間の早期退職を選択することができますが、早期退職の年齢は女性50歳、55歳、男性60歳(従来の法定退職年齢)を下回ることはできません。同時に、法定退職年齢に達した職員は、勤務先との協議により最長で3年間の退職延期も選択できます。政府は、退職年齢の延長は中国の人口構造の変化に対応し、人材を十分に活用するためだと説明しています。

 この発表は、瞬く間に大きな反響を呼びました。多くのネットユーザーが不安を表明しており、「今私は50歳で、もう仕事が見つからないのに、この先どうすればいいの?」、「私は41歳で心臓病を抱えているけど、もう働けない。このニュースを見て絶望を感じた」といった声が上がっています。

 退職年齢延長の影響を最も強く受けるのは、45歳以上で、すでに15年間の社会保険料を支払っている人々です。北京市在住の江さん(48歳)は、インターネット業界の従業員です。彼女は取材に対し、退職年齢の延長が発表された同じ日に会社から解雇通告を受けたと語りました。元々はあと1年余りで年金を申請できる予定でしたが、新しい規定ではさらに12カ月待たなければならないといいます。

 中国の労働力不足は、進行する高齢化に起因しており、これも政府が退職年齢の延長を進める主な理由の一つです。中国国家衛生健康委員会高齢者健康司の王海東司長は2年前、2035年までに中国の60歳以上の高齢者人口が4億人を突破し、総人口の30%以上を占めるだろうと述べました。

 さらに、退職年齢の延長は、年金の拠出者数の減少にも関連しています。2021年第7次国勢調査のデータによると、中国の60歳以上の人口は約2.64億人で、全人口の18.7%を占め、2010年と比較して5.44%増加しています。中国社会科学院の予測では、都市部の職員基本年金保険基金は2027年に約6.99兆元でピークに達するものの、退職者の増加に伴い、年金基金の支払能力は徐々に低下するとしています。

 政策が合理的に見えても、人々の納得を得るには不十分です。江さんの例では、仕事を失った後、再び雇用される見込みは薄く、今後は貯蓄に頼らざるを得ない状況です。

 中国のネット上では、2013年に《中国青年報》に掲載された「退職年齢の延長は一世代への背信」というタイトルの評論記事が再び注目を集めています。この記事は、中国の年金制度が二重構造であることを指摘しており、公務員や公共機関の職員は高い年金を受け取る一方、企業の従業員は自分で年金保険料を支払い、退職後に受け取る年金額が公務員よりもはるかに少ないとしています。

 記事では、「官僚や専門家が退職年齢の延長に賛成するのは、彼らの既得権益に影響がなく、逆に利益をもたらすからだ。一般市民が反対するのは、この政策が、彼らが最も反対している年金の二重構造を触れずに進められているからだ」と述べています。

 中国メディア《新京報》によると、年金の代替率を見ると、中国の企業職員は約40%で、55%の国際基準を下回っていますが、公務員や公共機関の職員は80%以上に達しています。つまり、退職前に月収1万元だった企業職員は、退職後に約4千元の年金を受け取るのに対し、公務員は8千元から9千元の年金を受け取ることができます。

 また、新たな規定では、2030年から職員が年金を月単位で受け取るための最低拠出年数が15年から20年に段階的に引き上げられます。最低拠出年数を満たせば、最長で3年早期に退職することが可能です。ただし、女性職員の最低退職年齢は50歳または55歳、男性職員は60歳を下回ることはできません。

 時事評論家の蔡慎坤氏は、この規定が退職年齢延長以上に大きな影響を与える可能性があると指摘しています。なぜなら、中国には多くの「自由職業者」がおり、特に45歳以上の人々が安定した職を見つけるのは難しいため、拠出年数を満たすためには自ら年金保険料を支払わなければならないからです。しかし、月々の保険料はますます高くなっており、多くの人が支払いを断念することも考えられます。

 中国の人口問題専門家である易富賢氏は、退職年齢の延長政策はあまりにも遅すぎたと指摘しています。また、政府は国民の不満を避けるために、段階的に実施されますが、この方法では中国の年金問題の根本的な解決にはならないとしています。

 彼は次のようなデータを示しています。1970年代に退職制度が制定された際、65歳以上の退職者1人に対して、20〜64歳の労働者11人が支えていました。2024年には、この比率は1対4.3にまで低下し、2040年には1対2、2050年には1対1.5になると予測されています。年金は現行の世代間で支払いが行われており、2022年時点では辛うじて収支が均衡していますが、将来的には1.5人の労働者が1人の退職者を支えることは難しいでしょう。

(翻訳・吉原木子)