中国当局は2024年の国内総生産(GDP)の成長率を5%前後と主張していますが、実態との乖離が指摘されています。飲食店の倒産と相次ぐリストラにより、一般市民の体感はまさに最悪レベルです。スイスのUBSグループのように、中国の2024年と2025年のGDP成長率予想を下方修正する動きも広がっています。

 多くの都市では、閑散とした商店街に「テナント絶賛募集中」の看板が至る所に見られ、活気のなさが一目瞭然です。人々は財布の紐をさらに固く締め、支出を極力抑えています。なぜなら、経済の低迷がいつまで続くか、誰にもわからないのです。

「貧乏人向けメニュー」でも救えない外食産業

 7月15日、中国国家統計局が発表した最新のデータによると、2024年1月から6月までの全国の飲食関連収入は2.6兆元(約53兆円)で、7.9%の増加となりました。しかし、中国料理協会の分析によれば、飲食業界では「収入が増加しても利益が増えない現象が見られている」といいます。

 中国のビジネス情報プラットフォーム「天眼查(てんがんさ)」のデータによると、今年1月から6月にかけて、飲食関連企業の廃業・解散届出件数は105.6万社に達しました。中国工商登記プラットフォーム「企査査(きささ)」によれば、2023年全体では、飲食関連企業の廃業・解散件数は136万件を超え、前年比127.8%増で、2020年以来の最高記録を更新しました。

 このように、中国の飲食業界が生き残るために導入した「貧乏人向けメニュー」も人々の消費意欲を喚起することはできず、むしろ人々が本当にお金がないことを露呈させただけでした。

 アメリカの経済学者、黄大衛(こうだいい)氏は海外メディア『大紀元時報』のインタビューに対し、飲食サービス業は経済の下振れに特に敏感だと分析しています。黄氏によれば、飲食サービス業は生活を改善・向上させる産業であり、必須ではありません。彼は「生活が困難になり、節約しなければならない時には、こうした余分な消費には関心が向かなくなるのだろう」と述べています。

煽りを食らう美容院

 河北省で「麗人侠(れいじんきょう)」というハンドルネームで情報発信を行うセルフメディアの女性は、最近多くの理容店が次々と閉店していることを明らかにしました。

 彼女は、新型コロナウイルスの流行以降、お金を稼ぐことがますます難しくなっていると述べました。一部の人々は現在の状況を打開しようと試み、理容店を開業することが流行りとなりました。老人、子供、男性、女性、誰もが髪を切らなければならないから、儲かるに違いない、というロジックです。また、開業する際の初期投資が比較的安いというのも利点でした。10数平米の一室と基本的な理容器具があれば、1万元(約20万円)程度で開業できるのです。

 しかし、最近では理容店も閉店ラッシュに見舞われています。麗人侠さんによれば、数年前まで理容の料金は一回5元(約100円)で、後に10元(約200円)に引き上げられました。しかし、最近2〜3年で料金は30元(約600円)にまで上昇しました。この価格は高齢者にとって受け入れ難いものであり、節約のために月に1回だった理容を3ヶ月に1回に減らす人が増えているとのことです。これにより、全体的な支出は価格引き上げ前とほとんど変わらなくなりました。また、小規模な理容店が増えたことで競争が激化し、経営難のため閉店に追い込まれる店舗も増えています。

 もう一つの原因として、現在の理容店では美容やスキンケアなど、多くの追加サービスがセットになっていることです。このような理容店に行けば、基本的には100元(約2000円)以上の消費となります。年金暮らしの高齢者にはとても負担できない金額です。顧客あたりの単価が増えたとしても、消費者層が縮小し続けているため、長期的な増収増益は見込めず、結局店を畳むことになるのです。

 麗人侠さんは動画のなかで、友人が経験した理容室の倒産劇を話しました。

 「私の友人は5,000元(約10万円)を支払い、美容美髪店のVIPカードを購入した。だが、まだ1,000元(約2万円)しか使っていないうちに、お店の看板が変わってしまった。聞くところによると、美容店のオーナーが資金を持ち逃げしたそうだ。」

 現在では大型の美容室が相次いで倒産し、小さな理容店もかろうじて経営を維持している状況です。多くの中高年は理容器具をオンラインで購入し、自宅で髪を切るようになっています。

相次ぐ実店舗の倒産

 最近、中国のネットユーザーが撮影した動画では、中小都市のみならず、大都市でも閉鎖された店舗やショッピングモールの様子が映し出されています。同様に、小さな店舗も経済の荒波に耐えきれず、倒産ラッシュに見舞われています。

 安徽省合肥市のブロガー「もち米」さんが最近投稿した動画では、夕方6時半ごろ、立地の良い場所でも多くの店舗がもぬけの殻になっているのがわかります。地元では有名な大型ホテルも、現在は閉鎖されています。

 「もち米」さんは「実店舗が大量に閉鎖されている。店主たちはどうやって生計を立てているのだろうか」と問いかけました。さらに「人々は街を歩かなくなり、大通りにも人影が見当たらない。人々はどこへ行ってしまったか、見当もつかない」と述べました。

 家賃収入で生活していた大家たちも苦しい状況にあるともち米さんは言います。彼らが以前、巨額の資金を投じて購入した好立地の物件も、今では借り手が見つからない状況です。

広がる露店経済

 広州のブロガー安安(あんあん)さんも、実店舗の相次ぐ倒産を目撃しています。彼女は、実店舗は運営コストが高い反面、顧客の流動量が減少し、収入源を確保できなくなっているため、経営が続けられなくなったと話しています。

 安安さんによると、実店舗を閉鎖した人々は家族を養うため、露店を開くようになりました。広州の夜市では何百もの露店が所狭しに並び、料理や衣料品を販売しています。露店経済の拡大に伴い、実店舗を持つより、露店を選ぶ人々が増えています。安安さんによると、消費者もリアル店舗より露店での買い物を好んでいるとのことです。

 時事評論家の李林一(リー・リンイー)氏は、中国経済が不景気に陥っている理由の一つに、中国共産党が意図的に隠している新型コロナウイルスによる大量の人口減少があると指摘しています。李林一氏は「中国共産党は関連するデータを隠蔽している。これは不動産市場を見てもわかることだ。人口が大幅に減少したら、住宅を買う人もいなくなる。同様に、飲食店で消費する人も少なくなるのだ」と述べています。

(翻訳・唐木 衛)