近日、中国の遼寧省、河北省、広東省などの地域で、連日の豪雨による水害が発生しました。遼寧省の葫蘆島市(ころとうし)と朝陽市では、多くの村や農地が水に浸かり、さらに夜中の貯水池からの放水も相まって、多くの住民、家屋、車、家畜が流され、甚大な被害が出ています。災害発生から数日が経過しましたが、被災者は食料も水もない状況に置かれており、中国当局は救援物資を倉庫に大量に貯蔵し、被災者に提供しようとしません。

死亡者数は100人超だが、公式は一切報じず

 遼寧省の葫蘆島市と朝陽市では、連日の豪雨により複数の貯水池が放水を行い、数十の県や村が深刻な洪水に見舞われました。逃げ出した被災者によると、貯水池の放水が続いたため、葫蘆島市の三道溝郷、興城市(こうじょうし)高家嶺郭家村などの数十の村の住民や家屋、車が水に流されました。

 新唐人テレビによると、遼寧省葫蘆島市建昌県(けんしょうけん)の複数の町や村で大洪水が発生し、20日から通信が途絶えています。ある生存者は、洪水が屋根まで達し、現地の住民の救援が遅れ、少なくとも100人以上が死亡したが、公式は一切報じていないと述べました。

 建昌県の住民である王さん(女性)は新唐人に対し、次のように語りました。「貯水池が放水されたとき、水は大波のようで、すでに帰る家がない。貯水池の管理は個人に委託されており、なぜ最初から放水しなかったのか?貯水池の魚が損失するのを恐れて、水位が上がってから放水せざるを得なかったのだ。私は怯えながら裸足で逃げ出した。本当に怖かった。家、牛や羊、車が流されるのを見るのはとてもつらかった。私たちの村は特に深刻な被害を受け、ネットも電気も断たれ、道路も破壊され、逃げ出すのも大変だった。水もなく、何日もお風呂に入っていない。農業ハウスがすべて倒れ、土地が平らになり、家も建て直さなければならない。救援物資は届かず、現地住民は徒歩で鎮内にある2つのスーパーに買い物に行くしかないが、ネットがないし、現金も持っていないため何も買えなかった。スーパーにも商品が届かず、ほぼ1週間も空っぽな状態だ。別の村の住民によると、すべての家が被災し、自力で食事や寝る場所を確保しなければならない状況とのこと。高台にある地元の住宅は、今では避難する被災者でいっぱいとなっている」

 民間の救援隊員は、多くの人々が洪水で流され、川沿いで行方不明者を捜索していると明かしました。

 民間救援隊員の陳さん(男性)は、「韓屯(かんとん)方向へ向かっているが、楊樹湾の橋から包営村(ほうえいむら)まで渡ることができず、ネットも電波もまったくない。今、川の両岸で遭難者を捜している。食べ物はなく、すべて流された」と述べました。

 葫蘆島市綏中県(すいちゅうけん)の住民、李原(仮名)さんは、降雨量が建昌県と綏中県の境界に集中し、貯水池の放水が被害をさらに深刻にさせ、現地の住民は甚大な損失を被り、一部の人々は流されたり、溺死したりしていると語りました。

 洪水に見舞われた李原さんは次のように語りました。「家の屋根の上に立っていたが、下はすべて水で、絶望感と恐怖感が込み上げてきた。しかも夜だった。村の惨状は目を覆いたくなるもので、家は倒れ、すべてが平地と化し、何も残っていなかった。羊、豚、牛が至る所に漂っている。物心ついてからこんな大きな洪水を見たことはない。綏中県でも死傷者が出ている」

 村民の郭さん(女性)は、「川の堤防はすべて決壊し、道路は断たれ、村は水浸しで泥だらけ。家の玄関門が流されたり、家の中に水が入ったりしたことは、まだましなほうだ。たくさんの家が流されて、何も残っていない。トウモロコシ畑はすべて冠水した」と述べました。

 建昌県西山根村の村幹部は、遼寧省の官製ラジオ「北斗融媒」に対し、村は壊滅的な被害を受け、橋が流され、多くの家が破壊され、農地や財産の損失は数千万元(約数億円程度)を超えると述べました。

 西山根村の住民は、洪水に見舞われた瞬間をこう語りました。「8月20日の深夜4時頃、洪水が押し寄せ、20年以上もこんな大きな洪水は発生していなかった。10頭の牛と3台の車がすべて流され、私の車も300メートル以上流された。もし逃げるのが遅ければ、人も流されていただろう」

 8月21日、建昌県の住民はネット上で行方不明者の捜索を呼びかけ、村民の董さんが暴風雨の中で洪水に流され、その後、連絡が途絶えたとの投稿がありました。

 8月22日、別の住民が情報を発信し、同村に住む67歳の宮翠蘭さん(女性)と13歳の少女石子萱さんが8月20日に洪水に流され、今も行方不明であると投稿されました。

 8月20日、朝陽市の複数の村が浸水しました。朝陽市民は、ここ数日で市内の約100台の車が浸水し、大凌河とその支流沿岸で深刻な被害が発生したと明かしました。

中国当局は救援物資を備蓄するが、被災者に提供せず

 現在、複数の村が通信途絶状態にあり、逃げ延びた被災者や民間の救援隊員は、被災者が救援物資を得られず、食べ物も住むところも困っており、死傷者が多く出ているが、政府は積極的に救援活動を行わず、災害の実態を隠して報じていないと明かしました。

 被災地に物資を届けに行ったボランティアは、寄付された物資はすべて政府の手に渡り、配ってはならないと言われ、多くの被災者が物資を手に入れることができないと明かしました。

 遼寧省からのボランティア、張さん(女性)は、「物資はたくさんあるが、村民の手には渡らない。私が連絡を取った地方政府の幹部は、すべての物資を直接政府に届けるよう求められ、村民に配ってはいけないと言われた。すでにいくつかの村と連絡を取ったが、現地に行くには高速道路で70~80キロを走らなければならず、その先はすべて山道だ。いくつかの村の被害が特に深刻であり、ネットも全くつながらない状況だ」と述べました。

 民間の救援隊員の陳さんは、「現在、食べる物もなく、電気も水もなく、住むところもなく、あらゆる物資が不足している。政府は物資を倉庫に保管しており、配布する気配がない。昨日、5000個のインスタントラーメン、5000本のミネラルウォーター、100箱の防風ジャケット、5000個の蒸しパンが送られてきた。しかし、それらもすべて政府の倉庫に運ばれ、まだ配布されていない」と語りました。

 綏中県の住民、華さん(男性)は、次のように語りました。「今の状況はとても悲惨で、家はすべて流され、飼料やトウモロコシは水に浸かり、収穫物はすべてなくなってしまった。家の中は泥だらけで、飼っていた牛もすべて流されてしまった。損害はあまりにも大きい。救助が必要だという情報を発信することもできない。水もない、電気もない、食べ物もない、住むところもない。本当に惨めな状況だ。人的被害も出ている。死傷者の情報について、公式にはまったく報じようとしない」

(翻訳・藍彧)