中国の公式データによると、7月における在校生を除いた16歳から24歳の若者の失業率は17.1%で、今年に入ってからの最高値を記録しました。労働市場の悪化は顕著で、中国経済の先行きが不透明な中、若者の間では「寝そべり(躺平、タンピン)」や「ゴミ時間」が話題となっています。

若者の失業率が今年最高を更新

 中国国家統計局が8月16日に発表したデータによると、7月の全国都市部における在校生を除いた16歳から24歳の若者の失業率は17.1%で、6月の13.2%から大幅に上昇し、今年に入ってから過去最高を記録しました。

 また、7月の全国都市部における在校生を除いた25歳から29歳の労働者の失業率は6.5%で、前月の6.4%よりも上昇しています。全国都市部全体の7月の失業率は5.2%でした。中国国家統計局が発表する失業データは都市部のみを対象としているため、中国全体の雇用状況を完全に反映しているわけではありません。

 中国国家統計局の報道官である劉愛華(りゅう・あいか)氏は、記者会見で失業問題について質問された際、「総雇用に対する圧力は依然として存在しており、雇用の難しさと求人の難しさが共存する構造的な矛盾は依然として顕著であり、一部の業界や重要なグループの雇用は依然として圧力を受けている」と認めました。

 時事アナリストの任重道(にん・じゅうどう)氏は以前、中国の16歳から24歳までの若年層に関する公式統計には、大学卒業生だけでなく、職業教育を受けた後に就職する多くの人々が含まれていることを指摘しました。たとえば、2001年には出生人口が1702万人で、22年後の2023年には大学卒業生が1158万人となり、この22年間で死亡したり移民したりする人の数を除いても、就労年齢に達する者が数百万人存在しています。また、政府が主張する2億人のフレキシブル労働者は失業統計に含まれていません。

雇用状況がますます厳しく

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の8月17日の報道によると、ここ数か月間で中国の全体的な失業率は比較的安定しているものの、英国バークレイズ銀行のエコノミストたちは労働市場の悪化の兆しを見て取っています。彼らはある報告書のなかで、デフレーションと企業の収益力の低下により、家庭や企業はさまざまな支出を先送りしていると指摘しました。「さらに、賃金と物価の間に悪循環が生じていることを示す憂慮すべき兆候も見られ、賃金上昇率の低下と物価指数の下落が同時に発生している」と述べています。

 今回の失業データは、中国当局が他の期待外れの経済データを発表した後に公開されました。今年上半期に工業企業の経営状況が急激に悪化し、赤字企業の数は44%増加しました。今年6月末時点で、中国の工業企業の約30%が赤字状態にあり、この割合はアジア金融危機時の1998年のピークを超えています。

 スイス・ユニオン銀行(UBS)のエコノミストたちはある報告書のなかで、「ここ数か月の経済成長が期待外れであり、不動産市場が継続的に低迷していることを考慮すると、中国政府は2024年の残りの期間中、成長を安定させるために政策支援を強化する必要があるかもしれません」と述べています。彼らは、これらの措置には、不動産業界への政策支援の強化、政府債券発行の加速、利率の引き下げが含まれる可能性があると指摘しています。

 エコノミストたちは政府に対してより大胆な政策の実施を求めていますが、中国当局は大規模な刺激策に対してほとんど関心を示していないようです。

寝そべりからゴミ時間への変遷

 最近、「歴史のゴミ時間」という、明らかに中国当局が好まない話題が、官製メディアを悩ませています。これは数年前に中国の民間から出てきた「寝そべり(タンピン)」と同じように、今も広く議論されています。

 ボイス・オブ・アメリカの記事は、「歴史のゴミ時間」と数年前に現れた「寝そべり」はどちらも中国のネットユーザーから出たものであると報じました。

 「寝そべり」とは、現代の中国において、国民が中国共産党の特権階級によって気まぐれに切られるニラのような存在であり、無理に奮闘して何度も収穫されるよりも、むしろ寝そべることを選び、自らの体力や能力を温存し、中国共産党の特権階級に収穫されることを避けるほうが良いという意味です。

 中国共産党党首の習近平氏が以前、この「寝そべり」という考え方に対する嫌悪感を示していたにもかかわらず、「寝そべり」という考え方は中国の民間で依然として広がり、多くの中国人に実践されています。

 最近、中国のSNSで「歴史上のゴミのような時間」という言葉をよく見かけます。この言葉の意味は、歴史上、ある時期に全国の民衆が、長い間信じていた未来が実現されないと感じ、国が現在直面している問題を解決できないというものです。

 中国国民の中には出口のない状況を感じ取り、自国の現状を「歴史のゴミ時間」と表現する人たちが現れています。

 ゴミ時間」はもともとスポーツ用語で、スポーツの試合で挽回不能な大量リードを許してしまい、プレーヤーがやる気をなくし、観客も早々と帰路に就き、試合終了を待つだけの時間帯のことです。オーストリアの経済学者ルートヴィッヒ・フォン・ミーゼス氏が、「経済規律に反し、個人が状況を変えられず、全体が失敗に向かう時期」を「歴史のゴミ時間」と表現したという説もあります。この言葉を使う人たちは、中国の現体制に愛想を尽かしていると言えるでしょう。
広く流布している中国の民間説によると、「歴史がゴミ時間に突入すると、建物が崩壊し、大船が転覆し、嘘が暴露されるなどのドラマを目にすることになる。賢者は、寝そべって劇を見て、ゴミ時間が過ぎ去るのを待つことだ」とされています。

 ロイター通信で中国経済を担当する記者のジョー・キャッシュ(Joe Cash)氏は7月17日に、「中国経済の低迷がネット上で人々の雇用、収入、機会の改善見通しに対する悲観的な感情を引き起こし、『歴史のゴミのような時間』と呼ばれている」と書いています。

 これは、明らかにスポーツ用語(試合は終盤に差し掛かり、結果が確定した状態)を「メイド・イン・チャイナ」のプロセスに関する議論に注入したもので、その後、中国当局によって厳しく検閲されたネット討論に発展しました。そのテーマは、「中国の労働者と投資家は努力をあきらめるべきかどうか」というものでした。

 アメリカ・スタンフォード大学のスコット・ロゼール教授は、あるアンケート調査で、中国の回答者が20年前よりも悲観的であり、努力しても報われると信じていないことが分かりました。2004年には、「わが国では努力すれば必ず報われる」と考える人が62%でしたが、2023年にはその割合が28%にまで減少しています。

(翻訳・藍彧)