航空業界のデータによると、外資系航空会社が現在中国市場に対して消極的な姿勢を示しています。これは、中国における旅行需要の低迷、コストの増加、そしてロシア領空を避ける必要があるために飛行時間が延びていることが原因です。
ボイス・オブ・アメリカは8月9日、ロイター通信の報道を引用し、新型コロナウイルスのパンデミックが発生した後、ブリティッシュ・エアウェイズ(英国航空)やカンタス航空(オーストラリア)などの西側の航空会社をはじめとする外資系航空会社が、中国へのフライトを相次いでキャンセルしたり、再開しないことを選んだりしていると伝えました。
カンタス航空は5月中旬に、7月28日から上海行きのフライトを一時運休することを発表しました。カンタス航空は、飛行機の搭乗率が半分しかなく、中国への旅行需要が低迷していると述べました。
英国のヴァージン・アトランティック航空(Virgin Atlantic)は先月、飛行時間が長くなるため、10月末からロンドン・上海間のフライトを無期限で運休すると発表しました。
ブリティッシュ・エアウェイズは8月9日に、商業上の理由から10月末からロンドン・北京間のフライトを1年間停止することを発表しました。また、同社は先月にすでにロンドン・香港間の1日2フライトのうち1フライトをすでに停止していました。
ブリティッシュ・エアウェイズとヴァージン・アトランティックは、ロンドン・ヒースロー空港の貴重な離着陸枠を利用して、より収益性の見込める他の路線を運航することができます。
外資系航空会社の中国市場からの撤退
ロイター通信が分析したCirium(シリウム)のフライト時刻表データによると、中国南方航空、中国東方航空(チャイナ・イースター)、中国国際航空(エア・チャイナ)などを含む中国の航空会社が2024年7月に運航した国際フライトの数は、2019年7月の90%に回復したに対して、外資系航空会社はパンデミック前の60%のフライトしか運航しておらず、これは外資系航空会社が中国市場から撤退していることを示しています。
例えば、メキシコと中国を結ぶ唯一の直行フライトは、中国の航空会社によるもので、メキシコの航空会社アエロメヒコはパンデミック後に路線を再開していません。アエロメヒコはコメントの要請に応じていません。
ルフトハンザドイツ航空(Lufthansa)の最高経営責任者(CEO)であるカーステン・シュポア(Carsten Spohr)氏は先週、同グループがアジアで低迷しているのは、経済的機会の欠如からではなく、「中国の航空会社が過剰なキャパシティを提供しているためだ」と述べました。
アメリカを拠点とするデルタ航空も今年、ロサンゼルス・上海浦東間のフライト再開計画をキャンセルしました。航空券予約システムの情報によると、デルタ航空は2025年3月30日まで再開しない予定です。ユナイテッド航空も、今年3月のフライト計画から中国へのフライトの70%近くにあたる161フライトをキャンセルしました。
経済の不況と中国国内旅行への転換により、中国の国際線の回復速度は他国に比べて遅れています。シリウムのデータによると、7月に中国発のフライトは2019年同期に比べて23%減少しました。
ロシアのウクライナへの侵攻戦争による影響
2022年にロシアのウクライナへの侵攻が勃発して以来、ヨーロッパやアメリカなどその他の国々の航空会社のフライトは、モスクワや自国政府によってロシア領空への進入が禁止されたり、安全上の理由からロシア領空を迂回することを選択したりしています。
フィンランドのフィンエア(Finnair)航空は今年4月、エストニア第2の都市タルトゥへのフライトを1ヶ月以内に停止すると発表しました。そのうちの2便は、全地球測位システム(GPS)の妨害によりタルトゥに着陸できなかったためです。エストニア当局は、ロシアが地元のGPSの動作を妨害していると考えています。
フィンエア航空は、過去2年間でGPSの妨害が大幅に増加しており、「フィンエアのパイロットは、カリーニングラード、黒海、カスピ海、東地中海の空域で深刻な妨害があったと報告している」と述べました。
ロシア領空を避けることで、ヨーロッパやアメリカなどの航空会社の運航コストが大幅に引き上げられています。
一方で、中国の航空会社は、ロシア領空を経由してヨーロッパや北米に飛ぶことができるため、運航コストの面で優位性を持ち、国際市場でより大きなシェアを占めることができるのです。
旅行データ会社OAG(オフィシャル・アビエーション・ガイド)のシニア・アナリストであるジョン・グラント(John Grant)氏は、「通常、中国の航空会社のコストは国際的な競争相手よりも約30%低い。中国の航空会社は大規模な拡張を開始している」と述べました。
政治問題による影響
一部の中国へのフライトは政治的な問題によって妨げられています。
新型コロナウイルスのパンデミック発生後、国境紛争のため、インドと中国間の旅客フライトは全く再開されていません。
2020年に二国間航空サービス協定が停止された後、米中間のフライト数は2019年の約5分の1に減少しました。
シリウムのデータによると、米中間のフライトの認可数は徐々に増えていますが、認可された週50便のうち、アメリカの航空会社は35便しか運航しておらず、中国の航空会社は週49便の運航に増えています。
ユナイテッド航空は7月、中国への旅行需要が「大幅に」減少しているため、運航キャパティを他のアジア太平洋地域に再分配したと述べました。
今年4月、アメリカの主要航空会社と航空組合はアメリカ政府に、中国の航空会社のフライトをこれ以上承認しないよう要請しました。理由は、北京の「反競争的政策」と、アメリカの航空機がロシア領空を通過できない不利な条件です。
中国東方航空が上海・ウィーン線を開設しようと試みましたが、オーストリア当局によって却下されました。オーストリア航空交通管制(ATC)会社の責任者は、「ロシアの現行空域制限と、中国東方航空がオーストリアの国営航空会社であるオーストリア航空に対して競争上の優位性を持つことを考慮すると、その申請を承認することは(自国の)全体的な経済利益に反する」と明言しました。
オーストリア当局が中国東方航空のフライト開設を拒否したことは、中国国内の航空業界に大きな波紋を呼び起こし、ヨーロッパの国々がアメリカに倣い、中国の航空会社を拒否する「最初の一撃」と見なされています。今後、さらに多くのヨーロッパ諸国が追随する可能性があります。
また、情報に詳しい関係者によると、中国東方航空はスイスのチューリッヒとイタリアのミラノへの路線も開設することを計画しており、スイスとイタリアの民間航空当局は、当該路線の申請を受け取った後、航空交通権において互恵的な条件のもとで、自国の航空会社の利益をどのように保護するかを検討しています。
(翻訳・藍彧)